雑感34:空飛ぶタイヤ

走行中のトレーラーから外れたタイヤは凶器と化し、通りがかりの母子を襲った。タイヤが飛んだ原因は「整備不良」なのか、それとも…。自動車会社、銀行、警察、記者、被害者の家族ら、事故に関わった人たちの思惑と苦悩。「容疑者」と目された運送会社の社長が、家族・仲間とともに事故の真相に迫る。圧倒的感動を呼ぶエンターテインメント巨編!

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池井戸潤の作品はドラマの半沢直樹は1も2も見たけど、小説を読んだのは初めてでした。

約800ページの巨編なんだけどあっという間に読めてしまう。
中小の運送業者の二代目若社長が、ホープ自動車(半沢でいう帝国重工みたいな財閥系?大企業)とタイヤが外れた原因を巡りあれこれと戦う作品。

主人公達を取り巻くサブストーリーも面白い。社長は小学校でPTAの会長もやってるんだけど、学校で盗難事件が発生し、これも変な高飛車で高慢ちきなPTAのおばさんのせいで息子のせいにされてしまったり、この作品にはホープ銀行っていう金融機関も出てくるのだが、ホープ自動車への融資を巡る社内のいざこざは半沢直樹のそれを思い出させます。

脱輪を自分たちのせいにされ、ホントに失意のどん底まで落とされても、最後は「正義は必ず勝つ」とか、「努力は報われる」的な、ある意味で少年ジャンプ的な熱さを感じさせるこの作品。
その中に大企業・ホープ自動車の、「全社ではなく部門の利益を優先させる風土」とか、「自分の夢は会社では実現できない」みたいな諦念というか腐敗というか、なんかそんな要素も散りばめれているところがこれがまた妙にリアルな感じがして、サラーリマンには読んでて楽しい作品でしょう。情熱的で情緒的な中小企業・赤松運送(主人公の会社)との対照が非常に鮮明だった。

池井戸潤の小説ってどれもこんな感じなのだろうか。いやあ、読みやすくて面白かった。

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