アウターつながり
入院棟の男性看護師Oさんは
俺と同世代かちょっと下かといったところ
物腰が柔らかく、患者受けがいい
別の病棟の仲の良い看護師の
同期だったらしく
その縁もあって、Oさんとは時々話をする仲だ
彼は、夏はサーフィン
冬はバックカントリーをこよなく愛する
大自然大愛好家だ
同じ匂いがする友人がいるので
年中日焼けしている顔と
孤高の目つきを見れば、だいたい察しがつく
ランタンの灯りで
天気図を見ながら酒飲んでる感じが
ビシバシ伝わってくるのだ
昨年の今頃
俺は冬に着るための
ダウンジャケットの情報を得るため
Oさんに、おススメがないか聞いてみた
Oさん:
今は、何着ているんですか?
山ちゃん:
今は、マムートとミレーです
Oさん:
え、冬山、好きなんスか?
なぜじゃ
山ちゃん:
いえいえ、むしろ苦手です
普段着ですよ
Oさん:
、、、俺はナンガです
あったかいですよ
デサントの水沢ダウンも
めちゃくちゃいいみたいです
山ちゃん:
ほぉ、ナンガと水沢ダウンですね
Oさん:
で、山行くんスか?
山ちゃん:
行かないです
大自然大愛好家の人たちって
大自然に触れることが前提で生きてるから
そんな装備するくらいだから
冬山行く人でしょ
って思いこんじゃうんでしょうか
あれから何回も修正したんですが
糠に釘で途中であきらめたのでした
Oさん:
波にのってる感覚と
雪山降りる感覚、似てるんスよね
山ちゃん:
なるほどねぇ
Oさん:
山小屋まであともう少しってところで
ヒグマがうろついていて
残念だけど下山しました
山ちゃん:
そうなりますよねぇ
Oさん:
秀岳荘に知り合いいますから
今度一緒に行ってみませんか
山ちゃん:
どうしましょうかねぇ
彼はいつも無骨な表現なのに
好きなことを話し出すと
どことなく詩的になるのを感じて
自然を愛してるんだなぁと
心底、感じるんです
そのぼんやり感、というか
ケセラセラ感、友人にソックリだ
沼みたい人だな
そんな彼が先日
珍しく話しかけてきてくれました
Oさん:
山ちゃんさん
アウター、けっきょく何買ったんスか
え、覚えてたんだ
山ちゃん:
悩んだんですが、買ってないんですよ
どれも高くて
Oさん:
はあ、、、普段着ですもんね?
お、最初の反応、すっごく変だけど
分かってくれてる
山ちゃん:
ええ、普段着でね
Oさん:
今度、近くの冬山なら行きたいっていう
初心者の友人がいて
山ちゃんさんもどうですか?
沼だ、沼にぬかってしまった
山ちゃん:
行けるかどうか分からないけれど
具体的に決まったら、声かけてください
必殺!
大人のたしなみ、行かないくせに
当たり障りなくサラっと流す戦法
どや!
Oさん:
分かりました、連絡するので
LINE交換しましょう
山ちゃん:
え?
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?