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【小説】海上の少年 ニ巻

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 「海上の少年 二巻」    屑屋 晶


 少年はその日、早く眼が覚めた。というのも、枕元にある窓から差し込む朝日が、とても強かったからだ。

 時刻は午前六時。鶏がコッココッコと鳴いている。パジャマ姿の少年は、部屋の床を銀色のちりとりと藁でできたホウキを手に取ってサッと掃いた。

 カンカンカンと、短い階段を降りた少年・グローヴは、よく冷えたミルクを一気飲みした後、今日は目いっぱいの菓子を作ろう、と決めた。

 グローヴの一日のスケジュールというのは、特別な事情がない限り、その日の朝に決まる。


お菓子作りは、グローヴの数ある趣味の内の一つだ。砂糖とバターをこれでもか、というくらいたっぷり用いた彼の手作りお菓子は、町の人からも評判だ。


甘すぎると言う人もいるが・・・グローヴはそんなことはお構いなしであった。
それよりも、振る舞うお菓子を心から喜んでくれる人の方がずっと大事だった。


ボウルに卵をみっつ、コンコンと割入れる。卵をみっつ同時に割るのは、彼の特技だ。
そこに小麦粉、バター、牛乳をどっさりと混ぜ入れていく。
泡だて器を動かすごとに、小麦粉が宙に舞う。

どうも、ちょっとばかし、ボウルが小さかったみたいだ。それでも、なんとか全ての材料をかき混ぜてゆく。

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