mRNAワクチンもレプリコンも根元は同じ

AKIRAです。
私は何度も科学的常識を繰り返します。


mRNAではタンパク発現量をコントロールできない

もう何度も同じことを記事にして繰り返していますが、この話がなぜmRNAワクチンおよびレプリコンワクチンの議論において主題とならないのか全く分かりません。結局、問題とされるポイントはなぜかシェディングやそれに伴う他個体伝播のことのみ。

いや、それよりももっと明らかな問題はあったでしょ。
何なら、その問題はmRNAワクチンのときから既に存在している懸念であり、mRNAワクチンの利用から現在に至るまでそのコンセプト上のリスクヘッジをしないままここまで来てしまっています。
基礎を踏んでいる人間ならば誰もが思いつく部分であるのにもかかわらず、その話が表に出ないのは、明らかな思考誘導、もしくはミスリードを行っていると言わざるを得ません。どこの何某がやってるのか知りませんが。

レプリコンの設計上、導入されるRNAはともかく、そこから複製されるRNAは天然由来のものであり、タンパク発現量を確保しながらもクリアランスができるという代物ですが、そもそも導入されるRNAが修飾塩基である以上、従来のmRNAワクチンとコンセプトはほぼ変わりません。

よって依然、タンパク発現のコントロールが効かないのは従来のままです。

mRNA

mRNAが細胞内で速やかに代謝されるのは、あくまでもそのmRNAが発現する遺伝子がヒトのゲノム上に存在する遺伝子だからです。
その制御様式がmiRNAなどを用いたRNAの分解シグナル経路であり、そのmiRNAをコードしているのは人間のゲノム、つまりDNAです。

スパイクタンパクは本来、ヒトのゲノム上には存在しない遺伝子配列であり、ウイルスの感染によって入ってくるウイルスのゲノムは、スパイク以外の配列を含んでいるため、転写開始領域であるプロモーター直下にスパイクの配列はありません。
よってウイルス由来のゲノムではスパイクの発現をコントロールすることは実質不可能です。
つまり、ヒトの細胞では、スパイクの情報が載ったRNAの翻訳を止めることができないわけです。

mRNAのクリアランス

さて。ここで問題になるのが、「ヒトの細胞はスパイクタンパクをコードするmodRNAを細胞のシステムを利用して除去できるのか」ということです。

細胞のシステム、と記述した理由は、そもそもRNAの寿命を期待して消失させるというコンセプトがナンセンスだからです。あくまでもmodRNAを取り込んだ細胞が主体的に自らmodRNAを代謝する機構を前提とするシステムを要求するべきでしょう。実際の医薬品はそういうシステムが備わっています。
病院で処方されるお薬は、肝臓のCYPという酵素で代謝されて、分解されます。既存の薬錠であればこのように通常であれば体の分解機構によってしっかりと代謝されるように設計されています。読者の皆様も自分が持っている病院で処方された薬をネットで調べてみてください。どのくらいの時間で代謝されるかの情報がいっぱい書いてあります。
例えば、

こちら、抗生物質の一種ですが、このページの「16. 薬物動態」の部分、「薬物動態パラメータ」と書かれた表の中に「T1/2(hr)」の欄があると思います。これは、半減期というもので、薬剤が半分代謝されて無くなるまでの時間のことです。この例で言えば、6.66±0.6なので、6-7時間程度で半分の量になるということですね。

この例でも示しました通り、基本投薬製剤にはこのように薬物動態パラメータがしっかりと残っており、当然ながらどの程度の時間で代謝しきるか、というデータを開示しているのが普通です。
しかし、mRNAワクチンの有効成分は酵素などの反応で分解するわけでもなく(細胞が合成する天然のmRNAは最終的に酵素反応を経て分解されます。miRNAの反応の下流で起こります)、その寿命で以て消滅を促すのでそのmRNAが存在する間、翻訳機能が生きており、本来必要な抗原の量を超えてオーバードーズのような状態になっている可能性があるのです。
だからこそ、どの程度で分解されるのかというクリアランスの情報をmRNAワクチンにも徹底して調べるべきなのですが、明示している資料はない。むしろ長期間(この場合は通常の薬剤の半減期と比較しているので数日間以上であれば長期間と考えます)残存するデータも存在するくらいです。

やろうと思えば、in vitro(試験管内、つまり培養細胞を使う)の軽い検証でも微小組織に対する影響くらいは検討できると思います。
つまり何が言いたいかというと、mRNAワクチン開発上のとっているべきデータが開示されていないという事実があるということです。

基礎研究との感覚のズレ

本記事を、生命科学研究をしている学部生も見ている可能性を考えて、この話をします。

そもそも我々研究者もしくは技術員が普段からやっている遺伝子発現を強制的に細胞内で起こさせるような実験系は、その細胞の宿主(ヒト細胞であればヒトのタンパクといったような感じ)と発現させるタンパクの免疫種を合わせることがほとんどです。理由は単純で、免疫原性やコドン配列の観点から宿主との免疫種があっていない場合、ちゃんと細胞内で正常な反応が行われている保証がなくなるためです。

一方で、GFPやRFPなどの本来ヒトゲノム上には存在しないマーカータンパクは、遺伝子発現の途中で何らかの遺伝子制御がかかることで発現が落ちてしまうと蛍光が消失してしまい困ったことになりますが、実際にはGFPを発現するベクターのプロモーターに問題がなければほぼ半永久的に光ると思います。これは、単純にGFPがそもそもヒトゲノム上に存在する遺伝子ではないので、制御配列によるRNAレベルの発現が抑制されることがないためです。

もちろん、GFPもタンパクなので例えばパラホルムアルデヒド固定などで変性してしまうと蛍光が落ちます。逆に言うとそれだけのストレスを細胞外からかけない限り、このようなタンパク発現は維持され続けるのが共通認識であると言えるでしょう。

さて。長々と語りましたが、言いたいことは「GFPは外因性の遺伝子発現であるため、サイレンシングを受けない」ということです。
もちろん、発現ベクターのプロモーター配列上流もしくは下流に、負の制御配列が存在している場合は話は別ですが、基本的にGFPのCDS上流のプロモーターにそういうものはつけません。意味がないので。(Tet onプロモーターのような発現のon/offができる例は除く)

同じ理由でスパイクもサイレンシングがかからないことは容易に想像がつく。そして、抗原が大量に生成されるため、それに対する免疫応答も激しくなる。さらにレプリコンでRNAの残存に拍車がかかるため、当たり前ですが免疫応答に対するフィードバックがかからず、いつまでも免疫は励起されたまま。
自己免疫疾患まっしぐら、というストーリーです。

当然、今のは基礎免疫学的な視点で見た場合の話ですので、細胞内代謝に関する疾患のリスクもありますね?mRNA製剤は血管に乗っかる可能性もあるので循環器疾患もあり得ますか?・・・あるいは、合成されたスパイクが何らかの原因で核内移行すれば、もっといろんな疾患につながる可能性もありますよね?

そういうことです。
一過性発現の研究モデルが基礎の分野では報告がいっぱいありますが、それで細胞に無事発現出来て細胞が死なないからといって、臨床で何の問題もないわけではないのです。

特に今、学部生で基礎研究に取り組もうとしている大学生にはしっかりと理解してもらいたい。「基礎で当たり前に使われているからといって安全とは限らない」のです。
このことは、強く強調しておきます。

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