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小池百合子東京都知事が衆院東京15区補選に出る可能性なんて20000%ない

 いったいだれがそんな無責任な観測を広げているのだろうか。小池閣下がそんな下劣な衆院補選などに立候補するわけがない。彼女がなぜ「女帝」とまで言われているのか、まったく理解していないのではないか。

 衆院東京15区は、2021年衆院選でにわか自民党の柿沢未途くんが、自民党主流派の候補を破って当選した選挙区だ。民主党であろうが、無所属であろうが、野党共闘であろうが、彼は小選挙区で勝ち続けてきた。言ってみれば、柿沢家の御料地であり、そこで未途くんを相手にたたかいを挑むのではあれば、これはまさしくジャンヌダルクにふさわしい。言うことを聞かない柿沢帝国をねじふせる女帝として、自ら立つこともあろう。

 しかし、今回は違う。その未途くんが逮捕され、辞職に伴う補選なのである。

 相手は維新だの、野党共闘だの、小池閣下にとっては敵ではない。選挙に勝つ価値がない。

 仮に御自身が出馬あそばされ、ぶっちぎりで当選したとして、国会では465分の1でしかない。どこの会派に入るつもりか知らないが、質問の機会などめったに訪れないであろう。黙って本会議場に座っていられるのだろか。小池閣下の器とは思えない。

 衆院東京15区で勝っても、総理の座は近づかない。一部の有権者がスカッとするだけで、岸田文雄首相は涼しい顔で総裁選を乗り切るのではないか。

東京での支配力強める小池閣下

 この間、小池都知事は都内の区長選、市長選で、自分の部下を擁立して、都内の支配力を強めていた。こういう支配の仕方は、〝都議会のドン〟こと内田茂さんと同じである。彼もまた、東京における自民党の支配力を強めるために、各地の首長選に都議や都庁幹部を擁立してきた。たまたま都議が立候補して当選したのではなく、戦略的に都議を立てたのである。

 これによって、23区長で構成する特別区長会は、東京都に刃向かわない従順な団体に変貌してしまった。

 小池知事も同じことをしているのである。

 最近なら、未途くん逮捕へのきっかけとなった江東区長選や、萩生田都連会長の地元である八王子市長選である。どちらも共通するのは、小池閣下自身が応援に入り、結果も出したという点で、自民党にとっては大きな助け船になっていることだ。どちらも判断を一歩間違えれば、立民、共産の野党共闘候補に負けていただろう。

 これがたまたまではないことは明らかだ。首長選で配下の子分を擁立し、自民党と一緒に推すことで、7月の都知事選での協力関係を築いているのである。

女性初の総理大臣への道

 都知事選の投票日は7月7日、七夕である。あと5カ月を切った。それまでに衆院解散があるとも思えない。小池閣下がこのまま3選出馬するとの観測が最も現実的であることはだれにでもわかる。都政通でなくてもわかることだ。

 では、次の政局に小池閣下は絡まないのであろうか。

 まず前提として、小池閣下が総理になれないシナリオなどあり得ない。その究極のゴールが見えない限り、閣下が国政に出ることはない。

 そのうえで、小池閣下が絡む次の政局をシミュレーションしてみたい。

①政権交代は視野に入らなくていい

 非自民・非共産の枠組みによる「希望の党」型の政権交代はほぼあり得ない。国民民主党は、玉木と前原で袂を分かち、前原が連携を模索しているのは維新である。維新はそもそも〝政権交代〟を望んでいない。あくまでも自民党の補完勢力であり、それ以上でもそれ以下でもない。立憲民主党の大半はそもそも、小池百合子によって〝排除〟された人たちの集まりであり、小池閣下が旗を振っても動かない。

 政権交代を前提とする限り、小池閣下は連携相手が詰んでいる。しかし、悩むことはない。総理にさえなれば、政党の組み合わせなどどうでもいい。

②自民党は対決する相手ではない

 小池閣下は、最初の都知事選で「自民党都連のブラックボックス」を批判して当選した。「都議会のドン」が都政を牛耳っていると批判したのだ。しかし、当時とは状況がすっかり変わっている。

 「都議会のドン」こと内田茂さんは2022年12月に亡くなった。その後、都連幹事長だった髙島直樹都議会議員も2023年10月に亡くなった。萩生田光一都連会長は、統一協会問題や、政治資金パーティーの裏金事件で、ほぼほぼ失脚したも同然である。言ってみれば、主だった政敵が政治の舞台からいなくなったのである。

 すでに「自民党都連のブラックボックス」など存在していない、と言ってもいいのではないか。

 一方で、公明党は初当選以来の「小池与党」であり、小池閣下が動くとなれば、支持母体の創価学会も黙って見ているわけにはいかないだろう。公明党は、小池閣下の忠実な連携相手となる。

③小池都知事が3選しても任期を全うする必要はない

 かつて石原慎太郎は、国を憂慮して都知事選4選出馬を表明し、国を憂慮して4期半ばに国政に転身した。

 ポピュリズム政治の賞味期限は3期持たない。せいぜい10年である。石原閣下が国政転身のタイミングを見誤って、都政に残した負の遺産に、新銀行東京の破綻や、尖閣諸島購入基金がある。いずれも3~4期目のことである。

 さっさと都庁を脱け出した方が、小池閣下にとってはお得なのである。

 後継者は、娘のように可愛がっている彼女でいいではないか。それなら公明党は喜んで推すだろう。自民党と公明党は、小池閣下の懇願を受け、江東区長選や八王子市長選での恩を返すに違いない。

④小池都知事が自民党に復党する選択肢もある

 総理になって復党するのか。復党して総理になるのか。順番はどちらでもいい。解散総選挙で、自民、公明、都民ファ、国民民主の推薦で無所属で出馬し、国政復帰。自民党ではもうタマがいないので、かつて自民党が社民党の党首を総理に選んだのと同様、小池閣下を総理に選ぶのである。

 この逆パターンもあろう。小池閣下がまず自民党に復党し、ほぼほぼ失脚状態の萩生田都連会長の後任として、都連会長に就任。小池閣下をトップとする〝政策集団〟を結成し、総裁選に挑む。自民党の国会議員の皆さんは、岸田か、小池かという究極の選択肢を突き付けられれば、いくらなんでも小池を選ぶだろう。派閥を解散するのだから、だれに入れようが勝手のはずだ。

 小泉純一郎を思い出してほしい。森喜朗内閣が風前のともしびで、次の総選挙では自民党のボロ負けが確定していたが、小泉が「自民党をぶっ壊す」とぶち上げて、総裁選を勝ち抜いた。自民党は一気に息を吹き返した。

 あの役目を、次は小池閣下が担うのだ。

 〝都議会のドン〟〝自民党都連のブラックボックス〟とたたかった小池百合子が、こんどは「自民党の再生」に立ち上がる。

 いかにも日本人が熱狂しそうなシナリオだ。

 その先の悪夢は、いまはここには書くまい。

〝石原的都政〟を終わらせよう

 多くの人たちにとって、これはにわかに信じられないシナリオなのではいか。

 クスッと笑って終わりの方がほとんどだろう。

 しかし、石原慎太郎の4選、その後の国政転身をどれくらいのジャーナリストや都政人が想像していただろうか。

 仮に7月7日投票の都知事選に小池閣下が出ないとして、こんどこそは〝石原的都政〟を終わらせなければならない。

 目指すべきは、ポピュリズムではない都政。自治体として当たり前の都政。首都であることをことさらに強調しない、広域自治体としてふさわしい都政。東京から日本を変えなくていい都政。

 そして、石原4選以来の〝失われた都政〟を取り戻す。

 ここに尽きる。


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