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【自治トピックス】No.60

 1月21日、「まん延防止等重点措置」が東京都に適用された。その日の午後、時事通信が「東京・浅草 にぎわい消える」という記事を配信していた。記者はこの日の午前中の浅草を取材したらしい。それを見て、私は「?」と思った。いくら浅草でも、平日の午前中である。仲見世通りの商店街がさほど混雑しているとは思えない。

 新型コロナウイルスの新規感染者が連日にわたって過去最多を更新する中、まん延防止等重点措置が21日、新たに13都県に適用された。東京有数の観光名所がある浅草もかつてのにぎわいとは程遠い。昨年末や正月三が日などは大勢の参拝客らが訪れただけに、「一気に暗転」「いつ終わるのか」と落胆の声が相次いだ。

時事通信2022年1月21日配信

 翌22日の土曜日に同じ雷門前を訪れてみた。

重点措置適用から初の週末(2022年1月22日午後3時51分頃)

 確かにあまり混雑はしていないようだ。ただ、引っ切り無しに人の往来があり、門前では絶え間なく記念撮影を行う人たちがいた。雷門名物の赤い提灯の向こうにはぞろぞろと歩く群衆があった。

仲見世通りのにぎわい(2022年1月22日午後3時52分)

 この光景を見たら、時事通信の記者は「にぎわい消える」と書いただろうか。

 私は普段の浅草をあまり知らないから、この光景が普段よりにぎわっているのか、そうでないのか分からない。ただ、今回の「まん延防止等重点措置」の適用で伝えるべきメッセージは、浅草のにぎわいが消えたことなのだろうか。それは東京の実態を象徴しているのだろうか。

 時事通信の記者に限ったことではないが、記者の脳内がアップデートできていないと感じる。2年前そのまま、緊急事態宣言で浅草から人が消えた光景がそのまま、今も繰り返されているような思い込みがある。

 確かに浅草のにぎわいは表層的な光景で、街を丁寧に歩けば、重点措置の適用で休業した酒場があちらこちらに見られる。昨年、一昨年に閉館したホテルがいまだに雨風にさらされたままだ。切り取る場面が安易だから滑稽に見えるが、たまたま仕事で入った記者よりも、生ホッピー目当てに毎週やってくる酔っ払いや、場外馬券目当てのおじさんたちの方がそういう現実をよく知っているのかもしれない。

 結論としては、金曜日午前中の浅草はいつも通りににぎわっていなかったが、週末はそこそこにぎわっていたということだ。

 東京都の小池百合子知事は28日の定例記者会見で、新型コロナウイルスの緊急事態宣言について、変異株「オミクロン株」の特性を踏まえた発出基準や対策内容に見直すよう政府に要望したことを明らかにした。小池氏は「医療提供体制や社会活動の継続などに関する全般的な対応方針を明らかにしてほしい」と述べた。

時事通信2022年1月28日配信

 尾身茂分科会会長がオミクロン株の特性を踏まえて対策を見直すべきと言ったら、猛反発した小池知事が、なぜか今になってオミクロン株の特性を踏まえて見直せと言い出した。尾身会長は、「人流抑制」よりも「人数制限」だと、19日に指摘している。それを自分から蹴って、相変わらず従来通りの酒場いじめで重点措置を乗り切ろうとし、マスメディアによる〝尾身叩き〟を扇動した。それが緊急事態宣言要請の基準として都が自ら掲げていた病床使用率50%超に迫ると、今度は国に基準を出せと言い出した。全くもって矛盾としか言いようがない。

小池知事は、重点措置の適用後、繁華街での深夜帯の滞留人口は約24%減少していることから「繁華街の夜の滞留人口は蔓延防止の効果もあって、皆さんの協力もあって抑制されている。よくみていきたい」と指摘。都基準によるこの日の重症者の発表は23人となっており、「病床も重症中等症など中身もある。かねてから『感染を止める、社会は止めない』と申し上げている。これらを総合的に検討する」と語った。

東京新聞2022年1月30日配信

 せっかく「病床使用率50%」という国に要請する基準を持っていたのに、いざ発令する段階に近づくと、「総合的に検討する」と宣う。「総合的に検討」とは要するに、政治家のお手盛りということだ。

 公的な権力の行使は、自治体のリーダーにとってこれ以上ない快感である。それがポピュリズムに立脚した強いリーダーであるならば、なおさら欲しているだろう。最後には「ワタクチのリーダーシップのおかげで感染が収束しました」と言わねばならぬ。緊急事態宣言を巡る国や専門家との丁々発止は、そういう小池劇場の一つの素材に過ぎない。

 「体温は何度ですか。熱以外に症状はありますか」
 25日午後、江戸川区内の旧区立小学校の廃校舎の教室で、職員たちが自宅療養者に電話をかけ続けていた。手には連絡先がぎっしり書き込まれたリスト。他の教室では、システムへの新規感染者の情報入力や、感染経路や濃厚接触者を調べる疫学調査などに職員たちは追われていた。
 廃校舎は、区が17日に急きょ開設した保健所の分室「サテライトオフィス」だ。土木や保育部門などからの応援職員ら約200人が、11の教室に分かれて業務にあたる。

東京新聞2022年1月26日配信

 東京23区の江戸川区のケース。「保健所」というから、てっきり保健所で仕事をしているかと思いきや、実は廃校舎の教室。これが基礎的自治体の実態なのだ。あまりに膨大な感染急増で、こうした疫学調査が追い付かなくなっているが、こういう感染履歴の追跡によって濃厚接触者を割り出せるし、クラスターの発生にも対応できる。後々の感染防止対策にもつながっている。飲食店いじめばかり焦点が当たって、こういう地道な作業は意外にあっけなく、追いつかないからと切り捨てられることには危惧を覚える。

 新型コロナウイルス感染が急拡大するなか、各保健所が担う県システムへの新規感染者の情報入力が追いつかず、「未処理」となるケースが急増している。読売新聞の取材では、25日時点で、未処理は2200件超に上る。神奈川県内では連日、4000人、5000人の新規感染が発表されているが、実際の感染者はさらに多いことになる。各保健所は登録項目の簡略化や担当職員の増員を図っている。

 システムへの入力についても、横浜市が先週から一部を民間企業に外部委託。川崎、相模原、藤沢、横須賀市なども、別部署から最大100人ほどの応援職員を投入する「人海戦術」でしのいでいる。県は、県庁近くの民間ビルに専用の部屋を確保。約60人態勢で保健所から回ってくる発生届を交代で入力しているが、それでも職員らが未明まで残業せざるを得ない状況が続いているという。

読売新聞2022年1月26日配信

 こちらは神奈川県の事例。連日、県からは何千という新規陽性者数が発表されているが、それでもまだ未処理の案件が2千以上も残っている。毎日の報道発表に振り回されていても、実態が分からないことの証左だ。

 これらの業務は、新型コロナの区分を2類から5類にすれば解決するかもしれないが、間違えてはならないのは、現場の職員が楽になっても、感染者が減るわけではないということ。

 同町の本庁舎には職員80人が勤務するが、クラスター発生を受け、25日現在で20人しか出勤できていない。窓口業務の受け付けは庁舎ロビーで行われ、9課では電話対応のみという状況だ。
 同町の役場では19日に最初の感染者が確認され、その後、久保町長、加藤友幸教育長らの感染も確認された。25日現在で25人のクラスターとなっている。感染者はいずれも無症状か軽症という。

朝日新聞2022年1月25日配信

 北海道小清水町。オホーツク海沿岸の小さな町と比較しても仕方ないが、パンデミックの行きつく先は、こうやって一般の行政事務すら破綻するという地獄絵図だ。それでも町役場は閉鎖するわけにはいかない。日々、そこに暮らしている人たちがいる。

 同会議に先立ち、全国知事会長を務める平井伸治・鳥取県知事は記者会見で、計34都道府県で適用されている「まん延防止等重点措置」について「飲食店だけの今の対策は間違い。本当の感染現場は学校や保育所だ。政府や専門家は十分認識していない」と批判した。

読売新聞2022年1月29日配信

 それは小池知事におっしゃってはいかがか。尾身会長が「オミクロン株の特徴を踏まえて対策を見直せ」と言ったのに、それに反発して、相変わらず従来通りの対策しかしなかったのは、あなたがた知事ではないか。

 厚生労働省は31日、新型コロナウイルスの影響で全面休園している保育所や認定こども園が27日時点で37都道府県644カ所に上ったと明らかにした。前週20日時点の327カ所からほぼ倍増。変異株「オミクロン株」の拡大に伴い、園児や職員にコロナ感染者が相次いでおり、2週連続で過去最多を更新した。

時事通信2022年1月31日配信

 これも、飲食店いじめだけではどうにもならない現実を表している。

 東京都議選期間中などに無免許運転を繰り返したとして、道交法違反の罪で在宅起訴され、議員辞職した元都議木下富美子被告(55)は25日、東京地裁(平出喜一裁判官)の初公判で起訴内容を認めた。検察側は「日常的に繰り返し、情状酌量の余地はない」として懲役10月を求刑。弁護側は寛大な処分を求め結審した。判決は2月15日。

東京新聞2022年1月25日配信

 そういえば、長期欠席の議員の処遇って、どうなったんだろうか。

 大阪府と大阪市が誘致を目指すカジノを含む統合型リゾート施設(IR)をめぐり、自民党大阪市議団が2月開会の市議会定例会に計画の是非を問う住民投票を実施するための条例案の提出を検討している。候補地の整備費として市が決定した新たな巨額負担など、IRに関する「負の側面」を知ってもらう思惑だが、会派としての賛否は示していない。

産経新聞2022年1月27日配信

 住民投票はおやりになればいいと思う。ただ、急に住民投票という手段が降ってわいた理由が分からない。しかも、公明党は賛成する気がないらしい。狙いが分からない。

 政権党がこういう直接民主制に興味を持つことは大変結構なことだ。ぜひ万博開催や総合区の導入でも、住民投票を活用していただきたい(しないと思うが)。

 和歌山市の臨時市議会は27日、IR(カジノを含む統合型リゾート)誘致の賛否を問う住民投票条例案を本会議で否決した。住民投票をもとめてきた直接請求代表者は強く反発した。
 議長をのぞく37人の市議のうち28人が反対して条例案を否決した。
 反対したのは、自民(8人)のうち議長をのぞく7人▽公明(8人)▽政和クラブ(6人)▽和歌山興志クラブ・日本維新の会(5人)▽民主クラブ(5人)のうちの2人――の計28人。
 賛成したのは、共産(6人)▽民主クラブのうちの3人――の計9人。

朝日新聞2022年1月28日配信

 和歌山市議会の自民党は、住民投票条例案に反対している。

 横浜市の山中竹春市長は28日の会見で、2022年度当初予算案を「暮らしを守り、未来を拓く予算」と名付けた。選挙公約に掲げた三つのゼロや中学校給食は予算化しなかったものの、庁内に検討体制を整えるとし、「選挙での市民との約束。任期中に実現、あるいは実現に向けた道筋を示す取り組みを進めていきたい」と意欲を示した。
 山中市長は、市の推計人口が戦後初めて前年同期比でマイナスに転じ、将来的な収支差拡大が見込まれる現状を踏まえ、「将来に負担を先送りしないため、臨時財源に依存した財政運営から脱却する」と強調。22年度を「歳出改革元年」と位置づけた。

神奈川新聞2022年1月29日配信

 コロナ禍で景気が冷え込んでいる真っただ中に、「歳出改革元年」とか言い出す気が知れない。要するに、行財政改革で歳出をぶった切ると言っているのと同じではないか。こういうときこそ、臨時財源を活用して、市民の暮らしを支えないでどうするのだ。

総務省が住民基本台帳に基づいてまとめた外国人を含む東京都の人口の動きは、去年1年間で転入者数が42万167人、転出者数が41万4734人となり、転入が転出を5433人上回る「転入超過」となりました。「転入超過」の人数は前の年より2万5692人減り、現在の方法で統計を取り始めた2014年以降、最も少なくなりました。
さらに東京23区でみると、転出者数が転入者数を1万4828人上回り初めて「転出超過」となりました。

最も多かったのは神奈川で9万6446人。次いで埼玉が7万8433人、千葉が5万8485人、大阪が1万8801人、愛知が1万3254人などとなっています。

市町村別で最も多かったのは横浜市で3万5736人でした。次いで川崎市が2万9318人、さいたま市が1万5597人、埼玉県川口市が1万838人、大阪市が9246人などとなっています。

NHK2022年1月28日配信

 コロナ禍で、東京23区民の神奈川県への移民が続いている。最も人数が多いのは、横浜市。つまり、横浜市は今、チャンスを迎えている。その首長が就任1年目からいきなり行革の旗を振りまくるのだから、まるでバブル経済崩壊の時期に逆戻りしたかのようだ。

 私の地元・藤沢市も人口が増えていて、近所にもまたもや大型マンションが建とうとしている。住民はまた通りのビル風が強くなると呆れているが、それでも夢を抱いて移住してきた人たちの期待は裏切りたくはない。

 お世辞にも神奈川県のコロナ対策が合格点とは言えない。黒岩知事はいつも緑のタヌキに脅されたばかり。移住する人たちはそんな実態を知る由もない。

 神奈川県の思わぬ追い風、ひと時のブームに終わらせたくないものだ。


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