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【女帝】尾身茂分科会会長をシカトした小池都政のコロナ対策【暴走】

 昨日も書いたばかりだが、やはり小池知事は政府が求めるレベルを超えた対策を都民に求めてきた。都民は、自分が選んだ知事だから言ってみれば自己責任である。それに巻き込まれる周辺県はたまったものではない。迷惑千万である。

ステイホームを巡る国と都の相反したメッセージ

 オミクロン株の感染拡大に伴う「まん延防止等重点措置」を巡り、真っ向から矛盾した二つのメッセージがメディアから流れている。一つは、政府の分科会終了後に行われた尾身茂会長の囲み取材を報じている記事である。

 専門家らは昨年の「第5波」の際には、人流抑制を主張していた。この日、尾身氏は「今までやってきた対策を踏襲するのではなく、オミクロン株の特徴にあったメリハリのついた効果的な対策が重要だ」と主張。「『人流抑制』ではなく、『人数制限』が一つのキーワードになる」との考えを示した。「今回は何でもやめるという、ステイホームなんて必要ないと思う。リスクの高いところに集中して、みんなで気をつけるということだ」とも語った。

朝日新聞2022年1月19日配信

 尾身会長は「人流抑制ではなく、人数制限が一つのキーワードになる」と述べて、「ステイホームなんて必要ない」と述べている。これはデルタ株以前とは異なった評価だと言える。

 一方、東京都の小池百合子知事は「まん延防止等重点措置」の適用で開催した臨時記者会見で、都民に対して外出自粛を呼びかけた。

小池百合子知事は19日、「誰もが感染するリスクがある。都民、事業者、行政が一体となって危機感を共有し感染を抑え込む」と述べ、不要不急の外出や都道府県をまたぐ移動を自粛するよう呼びかけた。措置は多摩地域や島しょ部を含めて都内全域に適用される。

毎日新聞2022年1月19日配信

 つまり、東京都は都民に対してステイホームしろと言っている。

 これはあまりにも両者の言い分が食い違っていて、都民からすれば意味が分からないだろう。どちらかが間違ったメッセージを発している。もしくは説明が足りないのだ。

オミクロンに白旗を振りつつ基本に立ち返る

 政府の基本的対処方針分科会は、都道府県の一挙手一投足を縛っているわけではない。酒類提供など、細かい取り組みは知事が決める。とはいえ、分科会でまとまった基本的なコンセンサスを無視した行き過ぎた私権制限を事業者や住民に強いることは、リーダーシップではなく、ただの暴走ではないか。

 19日午前の分科会終了後、尾身茂分科会会長はマスコミの囲み取材を受けている(実質的には会見だが…)。その模様をテレビ東京だけがノーカットで映像に残していた。

 全体は30分以上あるので、冒頭の発言のみ書き起こしてみたい。

 今回は、今までやってきたことをそのまま踏襲することではなくて、オミクロン株の特徴にふさわしい効果的、メリハリのついた対策を打つ必要があるのではないのか。これがコンセンサスです。じゃあ、メリハリのついた効果的な対策とは一言でいえば、いわゆる「人流抑制」ではなく「人数制限」というのが一つのキーワードとなると思います。
 なぜそうかというと、今回のオミクロン株が急激に増えたものをいろいろ疫学調査で分析すると、ほとんどのケースが、大きな声を出したパーティーとか会食、これはいろんな場面で、家でも起こるし、いろんな場所で起きている。これが感染のほとんどの部分を示している。こうした大声を出すパーティー、それはお酒を飲むかもしれないし、マスクを外すかもしれないし、換気も悪いかもしれない。リスクが非常に高いことがほぼ分かっている。
 我々は、ゼロリスク、ゼロコロナにしたいわけではなくて、感染(拡大)のピークをなるべく早い時期に下げること。例外的に起きたことを一例一例潰すというよりも、数の多い、大きなところでクラスターが起きてますから、そういう数が起きないようにすることが非常に重要なんで、そうした人数の制限というところを、特に感染リスクが高いと分かっている場面での人数制限というのを、みんな、人々、市民が工夫して努力していくことも求められるんではないか。そういうことです。

2022年1月19日分科会終了後の尾身茂会長囲み取材

 非常に明快なコメントだと思う。オミクロン株は、これまでの変異株と違って、潜伏期間が短い、世代時間が短い、感染力が強いといった特徴がある。そういう特徴とは別に、これまでの新型コロナウイルスと同じ特徴も残っている。
 オミクロン株は急激に感染が広がるから、コントロールが不可能だと思われるかもしれない。一方で、これまでの新型コロナウイルスと同様、〝3密〟を避けることでリスクを低下させることもできる。だから、改めてコロナ対策の基本に立ち返って、基本的な感染防止対策の徹底を行いながら感染拡大のピークをゆるやかにして、下降傾向に持っていこう。尾身会長はそういうことを言いたいのだと思う。

 尾身会長は、こんなことも言っている。

店を閉める必要は私はないと思います。

今回は、なんでもぜんぶやめるということは、ステイホームは必要ないと思います。リスクの高いところに集中して、みんなで気をつける。

オミクロン株では、ステイホームや外出自粛とか、なんとかの店をぜんぶ閉めるという必要はない。

 尾身会長は慎重に言葉を選んでいましたが、私がそれを荒っぽく整理するとすれば、こういうことだと思う。

 感染力が格段に強いオミクロン株は、少々強い私権制限を行ったところで個々の感染は避けられない。だから、社会全体で医療資源のひっ迫を避けるためにも、一人ひとりがリスクの高い行動や環境を避けて、経済を回しながらできる限り感染者数を減らしていこう。

 私は専門家じゃないから、これで正しいかどうか分からないけれど、翻訳するとこんな捉え方で間違っていないと思う。

 これはつまり、オミクロン株の感染力の強さに白旗を上げつつも、改めて新型コロナウイルスの基本的な感染防止対策に立ち返って、一人ひとりがリスクを低減させていこうということだ。多大なる犠牲を払って、ウイルスを封じ込めようという従来の方針からは転換している。

尾身会長をシカトして私権制限を強化

 では、東京都は尾身会長のコメントを聞いた上で、午後に方針を発表している。言ってみれば、わざと尾身会長をシカトしたのだ。

 いきなり都民に対して、外出自粛と都道府県間の移動自粛を求めている。要するに、ステイホームしろと言っている。都庁の官僚がどういう経過でこの方針をまとめたのか分からないが、非常に不可解である。これでは都民はどっちを信用したらいいのか分からない。とりあえず、地元自治体の首長の言うことを聞いたとして、政府の分科会会長がしなくてもいいと言っているステイホームをしている気持ちはいかがなものなのだろうか。

 尾身会長は、「メリハリのある効果的な対策を行え」と言っていた。事業者向けの要請を見て、これにメリハリを感じただろうか。私には相変わらず1年前と同様、同じことをルーティンで繰り返しているようにしか見えない。せいぜい、事業者に選択肢を与えたことくらいに変化があるが、そういうあいまいさは、〝自粛警察〟に対して石を投げる余白を与えているようなものではないか。

 尾身会長は、店を閉めるという対策はしなくていいから、お客さん一人ひとりがリスクが高まる行動を避けようと言っている。だから、「4人以内」という制限には矛盾はない。だが、時間短縮には根拠がない。昼間であろうが、真夜中であろうが、感染リスクの高い行動を取れば感染するし、深夜にバーのカウンターで一人で静かにグラスを傾けても、感染などしない。一律に店を閉めないで、メリハリのある対策を取ろう。そういう趣旨は、尾身会長のコメントで十分伝わっているはずだ。

 小池知事はおそらく、わざと尾身会長をシカトしたのである。また悪い癖が出たのだ。

 国がしっかりしないから、私のおかげでオミクロンを収束させた。後でそう誇りたい。それには、国が示した方針より厳しい取り組みを都民や事業者に示さなければならない。科学的な知見より、パフォーマンスや見てくれを優先したのだ。

 何度も言わせてもらうが、都民はそれでいい。自分たちが勝手に選んだ知事である。困ったのは、東京都がやれば必然的に周辺県も追随せざるを得ないということだ。

 黒岩祐治知事は取材に「重点措置を出したくなかったが、踏み切らざるを得なかった」と県民に理解を求めた。

東京新聞2022年1月20日配信

 困ったことに、周辺3県のおじさん知事は、緑のたぬきに頭が上がらない。弱みでも握られているのだろうか。首都圏が厳しい私権制限に踏み込めば、全国の大都市も引きずられることになる。尾身会長が何のためにああいうメッセージを発したのか、意味がなくなってしまう。3人のおじさんには、しっかりしていただきたいものだ。


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