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「文藝春秋と政権構想」を読んで

 鈴木洋嗣著「文藝春秋と政権構想」(発行所:㈱講談社)を読んだ。

 著者は週刊文春時代に政治関連の記者となり、その中で懇意になった安倍晋三、菅義偉、梶山静六、細川護熙の4人の政治家の知遇を得、本書を仕上げている。

文藝春秋って、そうだったんだ

 本書に「文藝春秋」と書名にあるのに、「講談社」から出版したんだ、と思った。
 古巣への遠慮なくのか、圧力があったのか。事情は知らないけど、政治家にはズケズケ言うのに、自分事にはあまり触れないんだな。

 それにしても、文藝春秋って、文藝に関する情報発信の老舗と思ってたけど、政治モノも多いと、と改めて思った。
その昔、「田中角栄研究~その金脈と人脈」が文藝春秋に掲載され、田中角栄時代の終りが始まったのは知っていた。けど、当時は、何で新聞じゃないんだろう、と思った程度。 本書を読んでいたら、田中角栄研究を著した立花隆氏も元文藝春秋社員で、週刊文春の記者だったことがある。

 株式会社文藝春秋社は、月刊誌の文藝春秋の創刊を機に、1923年(大正12年)に創設された会社。文豪菊池寛が出資して創業した。創業100年の文学界の老舗のひとつ。 文藝春秋の「藝」の字が旧仮名遣いなので、何となく、歴史と伝統に彩られたお堅い文芸誌のような趣がある。けど、創刊期の頃から、保守系的な立ち位置で、政治的な記事も多かったみたいだ。株式は公開していないが、2024年はトーハンや日販グループホールディングが大株主。文藝春秋社もこれらの会社の株を持っているので持合いのようだ。昨年までは㈱東京楽天地が筆頭株主だったみたいだけど、今は売ってしまったらしい。非上場会社なので、会社情報はよくわからない。


梶山静六氏の話

 本書で一番気になったのは、梶山静六氏が著者に「政策秘書になってくれ」と要望したところ。メディア出身なので、広報担当ならわかるのだけど、政策秘書なのか、と。
 梶山氏は、本書でも紹介されているように筋の通った経済政策を盾に突き進む国士の印象。1998年の自民党総裁選の際に、田中真紀子氏が、「小泉純一郎氏(変人)、梶山静六(軍人)、「変人」は自民党小渕恵三氏(凡人)、」と言ったのは有名で、その影響かも。

 政治家は個人だけど、たった一人で出来ることは限られている。だから、株式会社やNPOのように組織化し、その頂点に立つ政治家が多い。立候補したところに本店を置き、東京に支店を、会計担当、後方担当、経営企画に相当する政策担当等々を設置する。後援会は社外取締役のようなものか。
こうして、組織力を高めてみるものの、それでも当の政治家が歳衰えてしまえばおしまい。後継者は世襲と言われてしまう。選挙で落選したら只の人。
 それに比して、官僚組織の何と強いこと。
 官僚組織は、人じゃなく器。人は次々入れ替わるけど、器は磨かれていく。時として、優秀じゃない幹部が生まれたとしても、いずれ入れ替わって輝きを取り戻せる。何より、選挙の洗礼なんてない。唯一社会的洗礼を受けるのは、入庁時の公務員試験だけ。

 そんな組織に政治は、対抗出来るのだろうか。
 政治は、官僚組織をリード出来るのだろうか。
そんなことを考えると暗澹とする。

 30年の長い低迷から、DXやGXを核とした経済振興に乗り出しそうとしている日本。 大成するかどうかは、リーダー舵取りひとつ。
そんな時、この国をリードする政党(自由民主党)の党首改選がある。

  今、誰が、この国のリーダーに相応しいんだろう。

 誰が首相になっても、赤字国債依存体質からの脱却は容易ではないし、少子化対策も時間がかかる。国防も福祉も教育も難問山積。
何より、経済の明るい見通しがない。

 でも、オリンピックやパラリンピックを見ていて、日本のスポーツは、世界に冠たるものになってきたな、ということ。体格というのか、骨格的に優れた人種でもないのに、こんなに活躍できるのは、スポーツ界をリードする人材(政治家?)がいて、お金と人材を投入してきた証。
 いや、スポーツで輝けるなら、経済だって、福祉だって、やろうと思えば出来る。での再興も可能ではないか。
                          (敬称略)

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