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「ほんとはかわいくないフィンランド」を読んで

 芹澤桂著「ほんとはかわいくないフィンランド」を読んだ。著者の「やっぱりかわいくないフィンランド」も、「それでもしあわせフィンランド」も読んだ。「意地でも旅するフィンランド」は見つからず、まだ読んでない。

 『フィンランドを知りたい』という好奇心もあるけれど、著者の書きぶりが軽快で心地良い。

 著者は、フィンランドに住んでいて、身近な出来事をまとめている。気に入ってる事もあるし、ヘンなところもある、と率直に書き綴っていて等身大。なるほどねぇ、と納得出来て、つまり、とっても上手い書き手なのだ。

防空壕付き住宅

 読んでいて驚いた事のひとつが、「一定以上の大きさの建物には、避難用のシェルターの設置義務がある」こと。調べてみると、公共のシェルターも各地に整備されている。
 1917年に独立宣言したフィンランドは、まだ100年余。その前の100年ほどはロシア、そして、さらに600年ほどはスウェーデンに支配されてきた歴史を持つ。未だロシアに割譲された地域も残っている。
 フィンランドは、ロシアとの間に、1,300kmにも及ぶ国境がある。
ネットニュースによると、ウクライナ戦争が始まった事により、国境警備が一層強化され、2023年11月にはロシア国境にある検問所8か所のうち4か所を閉鎖し、同12月にはEUの欧州沿岸国境警備機関から50名ほどの警備隊が配置されたとか。

 ともかくも、サンタクロースやムーミンのふるさとには、防空壕付きの住宅がある。

地域を支えるネウボラさん

 フィンランドの子育て支援をする人達が、ネウボラさん。
ネウボラとは、フィンランド語で「助言の場」という意味らしい。未就学児の子供たちの何でも相談室のようなもので、子供が生まれると、地元のネウボラさん相談するんだとか。いや、本書では、妊娠したかも知れないという時点から、地元のネウボラさんに相談しているって、書いてあった。

 Webで調べようとしたら、「広島版ネウボラ」とか、「大阪版ネウボラ」なんていうのが出てきて、どうやら、日本でも真似してるらしい。
 特に第一子の妊娠は、初めてのことばかりで不安が増幅し易く、精神衛生上よろしくない。ネウボラさんのような何でも相談室があることは、とても有意義だな、と思う。

 そう言えば、ベイビー・ボックス制度もフィンランド発で、これも日本のいくつかの自治体が真似している。
イイことは、どんどん真似して欲しい。
けど、フィンランドの人口は520万人で、日本は1億2,500万人。フィンランドと同じようにはいかない。
日本版ネウボラもベイビー・ボックス制度も、2014年頃から自治体が自主的にやってる。 国(厚労省?)はどうかと言えば、2016年度頃から、「妊娠・出産包括支援モデル事業」などを行い、日本の道を模索している。

子供の人権

 二冊目の「やっぱりかわいくないフィンランド」に書いてあったけど、保育園の先生との面談時のアンケートに、「子供は保育園の先生や友達のことをどう思っているか。子供が保育園に対して求めていることは」等々が問われていたそう。

 日本なら、二歳児にそんな事を聞こうなんて思わないし、親への質問で終始し、「子供」が主語にならないだろう。
フィンランドだって、二歳でまともな言葉が話せると思っているわけじゃない。けど、「子供ファーストの心」が浸透しているところがイイ。お母さん、お父さん、あんたたちが主役じゃない。子供自身がどうしたいか、どう扱って欲しいか、それを考えようという姿勢が見える。

 子供のことだけじゃない。人に優しく寄り添ってくれる。それがフィンランドという国。
本書を読んでると、そんな気持ちになってくる。

                                  (敬称略)

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