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デザイン思考のリサーチ手法「フォトジャーナル」を簡単に試してみた

こんにちは、Sun*デザイナーのあきおです。

Sun*ではサービスデザインの伴走支援を行なっていますが、その中で用いているのがデザイン思考というプロセスです。
デザイン思考ではユーザーに共感し課題を発見するためのリサーチとして、ターゲットとなりうる人物へのインタビューを行います。

インタビューの設問設計や課題の掘り下げには技術とコミュニケーション能力が必要であり、インタビューの質によって得られるインサイトの質も大きく変わるわけですが、コミュ障な私はこう思うわけです。

コミュ障でもインタビューの質を高めるような
画期的な工夫ができないだろうか…

そしてネットの海を彷徨っていると「フォトジャーナル」という手法を発見しました。

IDEO社が対面でのインタビュー以上に有効だと語るのが、フォトジャーナルです。ユーザーには事前に準備期間を設けて、開発中のプロダクトのテーマに沿って、日常の中にあるプロダクトに関連する写真を撮影してもらいます。
〜 中略 〜
また、ヒアリングの際には、それらの写真の内容についてユーザーがどのような感情を持っているかや、撮影する際に除外したものがあればその理由を尋ねながら、課題やニーズを深掘りしていく形です。

https://seleck.cc/design-thinking

これは気になる!詳しく知りたい!と思ってネットの海をしばらく彷徨ったものの、探し方が悪いのか手順などの詳しい情報は見つかりませんでした…。(IDEO社が公開していたとしても英語だったら読めない)

わからないのは試してみたらいい!ということで身近な人に協力してもらってトライしたので、気づいたことをシェアしたいと思います!

実験の流れ

  1. テーマと被験者を決める

  2. 被験者に撮影を依頼する

  3. もらった写真を見ながら設問設計

  4. インタビュー実施・インサイト抽出

1.テーマと被験者を決める

リサーチするにあたって解決したい課題とリサーチの目標を設定します。

課題:在宅勤務中に集中できていない。メリハリある働き方をしたい
目標:在宅勤務で集中できない状況とその要因を発見する

被験者は中学からの友人であり、在宅ワーカーのゆきちに協力をお願いしました。

2.被験者に撮影を依頼する

実施側としては、どんな些細なことでも関連するなら写真を撮って貰いたいですよね。
ということで、依頼の内容に撮影の具体的な例と目標枚数を盛り込みました。

依頼内容

今日1日、在宅ワークを阻害する要因や阻害されている状況、それらと関連するものを撮影してください。
例)
・途中で家事をしたら、家事をしている様子
・集中し直すためにいれたコーヒー
・息抜きに見たスマホ画面のキャプチャ など
目標枚数20枚

3.もらった写真を見ながらインタビュー設計

送られてきた写真たち

もらった写真は10枚。(1日で20枚はキツかった模様)
仕事風景や猫の写真が6枚、残りはスマホ画面のキャプチャでした。

ネコチャンかわいいねぇ〜

気になったのがこの2枚。在宅ワークとの関連が見えてこない…(ていうか君んちの猫牡蠣食ってんの…!?)

この2枚は1つの事柄を表していそう。
写真同士の因果関係を明らかにし、1つの事象として捉えられた方が良さそうなのでインタビューの流れは以下のようにしました。

  1. 写真の因果関係を明らかにする

  2. 時系列順で並べなおす

  3. 1枚1枚気になる点を質問

インタビューはmiroを利用して、画像を動かしながら行います。

インタビュー実施・インサイト抽出

インタビュー時のmiroの様子

上の画像はmiroの画面キャプチャですが、左が関連するものをグループ化したもので、右が時系列順に並べたものになります。
いくつか面白い話を聞けたので紹介します。

まずこちらのTikTokとインスタの画面。

TikTokとインスタの画面

仕事中につい見てしまうとのことでしたが、TikTokの閲覧時間が最大30分であるのに対してインスタは10分程度ということでした。
どうしてこういう開きができるのか聞いたところ、

TikTokは延々見ちゃうけど、インスタは巡回ルートが決まっててフォロワーの投稿を見終わったら閉じるから

とのこと。

対面のインタビューだったとしたら2つのSNSを比較して質問することはなかったかもなので、この気づきに関してはフォトジャーナルが良い働きをしていそうです。

つづいて最初からきになっていたこちらの写真。

撮影の意図を聞いたところ、

インスタで愛猫のアカウントを運営しておりPRを依頼された猫缶の撮影をしていた。
自然光を利用したいため、昼休みの時間を使って撮影した。

というのが事の真相でした。
昼休みに時間をかけて撮影したため、食事は仕事しながら済ますような形だったとのこと。(猫は優雅に牡蠣食べてるのに)

他の写真からも、「自分の部屋が散らかってたりすると片付けたくなるから、母親のデスクで仕事してる」といった"家にいることによってついやってしまう余計なこと"が多く発見されました。

フォトジャーナルの良かったところ

今回フォトジャーナルを実施してみて良かったところは以下です。

  • 写真を見ながら設問を調整できるため、より質の良いインタビューができる

  • テーマ設定さえきちんとしていれば、撮影依頼して待っている間に共通して聞きたい設問を準備できそう。時間を無駄にしなくて済む

  • ユーザーのリアルな視点が見れるので臨場感があり、共感しやすい

  • 視覚化されることでちょっとした事に気付きやすい

気づいた点

ある程度まとまった撮影期間がないと枚数が揃わなそうです。
かといって期間が長すぎても被験者の負担になるし、撮影自体を忘れてしまいそうなので期間中のフォローなどは必要だと感じました。

また、課題となっているものだけを撮るのではなく、課題となっているものを含めた風景までやや引きで撮ってもらうような依頼をすると、より多くのことが発見できそうです。
でも情報量ありすぎてもノイズになるのかな…このへんのコントロールが難しそう。

まとめ

デザイン思考は画期的なアイデアを生み出すこともありますが、
遠回りなプロセスを踏んだ挙句、凡庸なアイデアに説得力を持たせるだけにとどまってしまった…といったケースもよくある事だと感じます。

そうならないためにも、リサーチの段階で有益なインサイトを掴みたいですよね。
フォトジャーナルはうまく実施すればインタビューの質を上げてくれる良い手法だと感じました。
ぜひお試しあれ!

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