でき太くん三澤のひとりごと その109
◇ 教えない学習
先日、会員の方からうれしい報告をいただきました。
その会員のお子さんは、身体的に少し障害があり、通常級には通うことができないお子さんです。
性格的にも、ちょっと内向的で、はじめてのことや、ちょっと苦手なこと、すぐに思い通りにできないことについては、過度に反応し、癇癪を起こしたりしてしまいます。
今は小学1年生で、たし算については問題なく取り組むことができるのですが、ひき算が、このお子さんにとっては大きなストレスでした。
そこで私は、1日1問でもかまわないので、「でき太くん」と一緒に毎日学習できるように親御さんにお願いいたしました。
すると、翌日からはきっちり1問ずつ。
やれない日もありましたら、コツコツとあゆみはじめました。
ちょっと調子が良いときは「でき太くん」のひき算の問題を5問解いてきたりしたこともありました。
少しずつでも、苦手なことに向き合う時間がもてるようになってきました。
このようなペースですので、「5までの数のひき算」の学習を終了するのに、2ヶ月近くかかりました。
終了したときの、そのお子さんのひき算の処理能力は、まだつぎの段階に入れるレベルではありませんでしたので、私は再度別の構成で「5までの数のひき算」を構成しました。
このときも、たいてい1問ずつのペースでしたが、次第に1枚のプリント半分は仕上げてくるようになりました。
1日半分。
これが少しずつ定着してきました。
そこからしばらくすると、毎日1枚ペースで進められるようになってきました。
だいぶ「ひき算」にもストレスを感じなくなってきたようです。
学習材後半になると、1日2枚くらいのペースで学習できるようになってきました。
この再構成した学習材終了後に、ひき算のテストを実施してみると、まずまずの処理能力です。
ついにこのお子さんは、最初は癇癪を起こしていたひき算で、合格といえるレベルの処理能力を身につけることができました。
とまあ、ここまでは普通の成功例ですが、うれしいのはこのあとのお母さまからのご報告です。
「うちの子、勉強以外の苦手なことや、はじめてのこと、ちょっとこわいこと、すぐにできないことでも、チャレンジできるようになってきたんです!」
なぜこのお子さんは、苦手なことにも癇癪を起こさずにチャレンジできるようになったのでしょうか。
すぐ思いつく理由は、苦手だったひき算ができるようになったから。
そうですね、確かにそれもひとつの理由だと思います。
でも私は、もうひとつ大切な理由があると思っています。
それは、このお子さんが「自分のちから」で、ひき算を学習し、「自分のちから」でできるようになったという経験をしたことです。でき太の「教わらずに自分のちからでできる!」という特徴をしっかり活かした学習ができたことが大きかったと思います。
もしこのお子さんが、手取り足取り教わったり、援助したりしてもらって、ひき算の学習を終えても、ひき算はある程度できるようになるかもしれませんが、「自分のちからでできたんだ!」という成功体験はできません。
これだと、なかなか「自信」は育ちません
でも、このお子さんのように、最初は1問ずつで時間がかかっても、できるだけ教えたりしないで、自分のちからで考えて、自分でイヤなことと向き合って、「自分でできた!」という体験をすると、「自信」が得られるのです。
この「自信」が、他の苦手なことなどにも挑戦する原動力となります。
きっと今回ご報告をいただいたお子さんは、つぎのステップとなる「9までの数のひき算」については、前向きに、「できるはず!」という意識で取り組んでいくことができるものと思います。
このような小さな自信を積み重ねていくことで、きっとこのお子さんは自分の障害のことも乗り越えていけるだろうと思います。
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