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でき太くん三澤のひとりごと その160

◇  Rくん その2


今回の「ひとりごと」は、前回の続きとなります。

前回の「ひとりごと」では、小学4年生の「面積」の授業をしっかり理解できるようにRくん用のカリキュラムを組んだこと。そしてお母さまには、Rくんに対するイメージを変える取り組みをするようお願いしました。

約1年間で、1年生の計算領域から4年生前半の計算領域までを消化するのは、Rくんにとっても、お母さまにとっても大変なことが多々ありました。
途中で学習を投げ出しそうになったり、思うようにできなくて癇癪を起こしたり、本当に色々なことがありました。
ですがRくんは、学校で面積の授業が始まる前までには、でき太でしっかりと面積の学習を終えることができました。本当によくがんばったと思います。

さてここで、Rくんとお母さん以外の人たちが、どのようにRくんを見ていたか。Rくんをどんなふうにイメージしていたのかについてふれてみたいと思います。

まず学校の先生については、Rくんは学習障害の疑いがあるとずっと思っていました。
ですから、当然「勉強ができない子」というイメージであったと思います。

また、Rくんのまわりにいるクラスメイトたちも「勉強ができない子」というイメージを持っていたと思います。

毎日通う学校で、そういうイメージを持っている人に囲まれていると、たいていの人はそのイメージの影響を受けます。
そして、そのイメージ通りの「セルフイメージ」を形成していってしまいます。

この頃のRくんは、でき太の学習を1年間継続してきたことで、少しずつ算数に対する苦手意識がなくなってきていました。
とは言え、まだまだ算数に対する得意意識や、自分に対する自信を持つことはできていませんでした。心のどこかで、まだ自分を否定していたのです。

自宅学習で「できた!わかった!」という成功体験をしても、学校に行けば「勉強ができない子」という目で多くの人に見られているのですから、それも当然のことと言えます。

私が学校での成功体験を目標設定としたのには、ここに大きな理由があります。

まわりの人の目を変えるためです。
まわりの人のRくんのイメージを「ガラッ」と変えるためです。

もしまわりの人たちのイメージを変えることできたら、Rくんは1日の大半を過ごす学校で「勉強ができる子だ!」というイメージでずっと見られる環境を作ることができます。Rくんの環境は、これまでとは真逆のものとなるのです。
そうすると、必然的にRくんのセルフイメージに変化が起きてくるのです。

私はでき太の学習材でRくんが「面積」の学習を終えたあとに、いくつかお願いをしました。

もし学校の授業で「これわかる人?」と先生に質問をされたら、積極的に手をあげるように言いました。

最初は「そんなの恥ずかしい」といっていましたが、わかる問題であれば積極的に手をあげて、これまで自分が学習してきた成果を発表するように話をしました。

Rくんと私の間には、その頃には深い信頼関係がありましたので、Rくんは私が話したことをしっかり実践してくれました。
学校で面積の授業が始まったときには、積極的に手をあげてくれました。(お母さんの後日談です)

そして、多くの子が頭を悩ますような複雑な面積計算でも、Rくんは手をあげたそうです。

これに一番驚いたのは学校の先生でしょう。

学習障害を疑っていた子が、面積の授業になってから急に手をあげるようになっただけでなく、クラスでも数名程度しかできない問題でも手をあげている。おそらくこのとき先生は、Rくんがその場のノリのようなもので手をあげたと思っていたのではないかと思います。「まさか」と思っていたことでしょう。

その後、どのような経緯でそうなったのかはわかりませんが、その複雑な面積の問題をRくんがクラス全員の前で、黒板で解答を書くということになったようです。

Rくんは、黒板にひとつ一つ丁寧に式を書いたそうです。これまでいつも雑な字を書いていたRくんがです。
そして解答まで書き終えると、面積に補助線を引き、どうしてこのような式となったのかを解説したそうです。

すると学校の先生は、「Rくん、すごい!よくわかったね!この問題ができるのは、本当にすごいことですよ!」といって、褒めてくれたそうです。Rくんの頭を撫でながら「すごいね、Rくん!」といって、褒めてくれたそうです。

この光景を見ていたクラスメイトは、「Rくん、すごーーい!」と拍手が沸いたそうです。

Rくんは、これまで経験したことのないような成功体験をすることができました。

ここで、先生のRくんに対するイメージ、クラスメイトのRくんのイメージは一気に変わりました。

「Rくんは、勉強ができる子なのかもしれない」というイメージに変わってきたのです。

私は、面積の次に学校で学習する内容、さらにそのつぎに学習する内容もでき太で履修できるようにプログラムしていましたので、その後もRくんの成功体験は続きます。

「面積」だけでなく、その次の単元でもRくんは授業で積極的に手をあげて発表し、そのつぎの単元でも手をあげ、正解を発表する。

こうなると、さすがに学校の先生もクラスメイトも「まぐれ」とは思わなくなります。

「勉強ができる子だからできるんだ」と思うようになってきます。

すると、先生とクラスメイトのRくんへの目線、イメージは完全に変わります。

面積のあと、2単元ほど授業が終わったころには、クラスメイトが授業でわからなかったことを、休み時間にRくんに聞きにくるようになったそうです。

もうここまでくると、Rくんのセルフイメージは完全に変わっています。

「ぼくは算数ができる!勉強ができる!」というイメージに変わっています。

そこからのRくんは、まるで人が変わったように、主体的にでき太の学習に取り組めるようになり、算数の成績はどんどん向上していきました。それと並行して、他の教科もどんどんできるようになっていきました。

当初は学習障害であるかのように思われていたRくんが、セルフイメージの変化によってここまで成長するのです。

私がこの「ひとりごと」でお伝えしたいことは、でき太の学習材が優れているとか、私のカリキュラムや目標設定がすごいということを言いたいのではありません。

子どもは、セルフイメージの影響が大きい存在であるということです。

わが子をお母さん、お父さんがどのようにイメージしているか。
先生やクラスメイトがどのようにわが子をイメージしているか。
その影響が非常に大きいのです。

でき太の会員のみなさんは、きっとわが子には「算数を得意科目にしてほしい」、「算数ができるようになってほしい!」と願っていると思います。

この願望を達成するには、日々でき太の学習をコツコツと続けるだけでなく、現状はどうであれ、わが子を肯定し続ける意識で見守っていくことが必要です。

「あなたなら大丈夫!必ずできるようになっていくから大丈夫!」という意識で見守り続けていくことが必要なのです。
この肯定的な眼差しが、肯定的なセルフイメージにつながっていきます。

私たち人間は、どうしても過去のイメージで、人を決めつけてしまう傾向があります。
ですから、Rくんのお母さまには、過去ではなく、いつも未来を信じてRくんに対して肯定的なイメージを持ち続けるようにアドバイスさせていただきました。

こういうお母さまのサポートと、学校での成功体験が重なり、Rくんは飛躍的な成長をとげることができました。
これはRくんに限った特殊なケースではなく、だれもが体験できることだと私は思っています。

ただ算数、数学ができるようになる子を育てるだけでなく、セルフイメージが肯定的で、希望に満ち溢れたものへと広がっていくようなサポートを、私はしていきたいと考えています。

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