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でき太くん三澤のひとりごと その120

◇ 子どもをしっかりイメージする


今から20年くらい前に、私はAくんという中学3年生のお子さんの学習サポートをしていました。

中学3年生4月の段階で数学が大の苦手。

5段階評価では、「1」

直近の定期テストでは「0点」

内向的で口数が少ない。

あなたがもしAくんの担当になったとき、まずどこから学習をスタートされますか。
そして、これから何をサポートしていくべきでしょうか。

経験がないと悩みますよね。
私も最初のころは悩んだものです。

まず学習をサポートするにあたっては、Aくんの算数、数学の状況を把握する必要があります。

Aくんは、どこからわからなくなったのか。

そこをしっかり把握することが必要です。

中学3年生となると、チェックする範囲がかなり広くなりますが、3年生時点で「1」ということ、定期テストで0点ということを考えると、中学の内容はすべてわからないはずですので、この範囲はチェックする必要はありません。

原因は必ず小学校にあります。

Aくんの小学校算数の理解、定着度をチェックしていくと、Aくんは、小学1年生で学習する「くり上がりのあるたし算」から、完璧ではありませんでした。

計算方法はわかってはいたのですが、ちょっと計算が遅いのです。
そして、たまに間違えます。

当然、「くり下りのあるひき算」も同じような状況で、こちらのほうがさらに計算が遅くなります。

中学3年生の段階で、20問解くのに4〜5分かかります。

そして、私に見えないように机の下で時折指も使っています。

ここまでのAくんの状況を踏まえて、これからどのようなサポートをしていくか。

当然、学習カリキュラムとしては、完璧ではない「くり上がり、くり下り」の演算から取り組んでいくべきですが、それだけではAくんは変わりません。

完璧でないところから学習し、今よりも「くり上がり、くり下り」がスラスラとできるようになるだけでは、Aくんは変わらないのです。

ここで必要となってくるのが、「子どもをしっかりイメージする」ということです。

自分がAくんになったつもりで、小学1年生、2年生と進級し、そこで授業を受け、どのように感じ、どのような価値観を身につけ、どのような自己像を描くようになったのか。

これを、Aくんになったつもりで、しっかりイメージします。
そうすると、自然にAくんに必要な学習以外に必要なサポートが浮かんでくるものです。

その当時の私がイメージしたことは、

Aくんは自分のことを能力が低いダメな人間だと思っている。

「わからない」と言うと、余計にバカだと思われるからそのことを隠す。

わかったふりをよくする。

わからないことを「わからない」と、率直に質問できなくなっている。

物事の受け止め方の多くが悲観的。
(どうせぼくなんかがやっても変わらないとか)

負けグセがついている。

疲れること、大変なことはできればしたくないし、がんばっても変わらない。

「わからない、できない」ということばかりを体験させられる学校なんか大嫌いだ。

学校の先生もきっと自分のことをバカだと思っている。
だから授業中に自分を指したりは絶対にしない。

こんな自分を変えたいと思うけど、きっと無理だ。

というようなことでした。

このひとつ一つに、しっかりと「メス」を入れていく。
そうすると、Aくんは必ず変わっていきます。

その当時の私は、まずAくんは能力が低いダメな人間ではないということを、会うたびに伝えていました。
そして、くり上がりやくり下りができるようになったときも、そこから小学2年、3年の内容ができるようになったときも、徹底してそのことを伝えていきました。

そうすると、次第にAくんの表情が豊かになってきました。
笑顔も増え、少しずつ自分のことを話すようになってきました。

内向的で、親ともあまり話しをしないAくんがです。

「子どもをしっかりイメージする」

これは私にとっては学習サポートの原点であり、永遠に磨き続けていかなければいけないことだと思っています。

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