でき太くん三澤のひとりごと その107
◇ Sくんのこと
私がはじめてSくんの学習をサポートさせていただいたのは、もうかれこれ10年近く前になるでしょうか。
Sくんができ太に入会したのは、彼が小学5年のときでした。
Sくんの算数の状況を確認してみると、4年生で学習するわり算や面積計算などを取りこぼしており、算数に対してはかなり自信をなくしている状態でした。
ただ、私はもっと取りこぼしがあるお子さんを担当することが多いので、Sくんくらいの取りこぼしであれば、比較的短期間で算数への自信を回復できると考えておりました。
Sくんはご父兄の協力もあり、早い時期にでき太の学習習慣と、学習姿勢を身につけることができ、小学6年生の夏休みには、取りこぼしていた単元をしっかり習得できただけでなく、小学6年生までの算数体系をすべて終了することができておりました。
夏休み明けからの学校の授業は、すべてでき太で学習したことの復習ですから、「できる!わかる!」という成功体験をSくんはたくさん経験することができました。
授業でも積極的に手をあげられるようにもなったようですし、算数に対してもかなり自信が持てるようになっておりました。
他のコラムでも紹介させていただいておりますが、でき太が算数以外の教科を扱わないのは、1教科、胸を張って「得意です!」といえるような絶対的な得意意識のある教科を作れば、他の教科も自然と成績があがっていくからです。
学習の仕方は、本来どの教科も同じです。
わからないことを「わかる!」ようにして、わかったことはしっかり定着させていく。
覚えるべきことをしっかり覚えて、しっかり定着させていく。
これはどの教科も同じ。
1教科得意科目ができたということは、それと同じ方法で他の教科も学習すれば、自然とできるようになっていくのです。
Sくんは、夏休み以降は中学数学をでき太で先取りしていましたので、まさにノリノリの状態でした。
そして次第に、算数だけでなく、国語も、社会も、理科もどんどんできるようになっていく。
「ぼくは、ダメな子じゃないんだ」
と、Sくんは心から思えるようになってきたのです。
きっと、Sくんのまわりにいた学校の子も驚いたのではないかと思います。
5年生くらいまでは、算数も国語も、社会も理科もよくできない自信のない子が、どんどんできるようになっていくのですから。
ただ、そんなSくんにある事件が起きました。
それは中学1年生最初の定期テストのときでした。
数学、英語、社会、理科のうち、理科だけがSくんの思うような点数がとれませんでした。
ちょっとしたミスが重なり、平均点ギリギリのような内容。
それを見た小学校のときのクラスメイトが、
「なんだ、S、おまえ理科だけダメじゃん。小学校のときはできたのに」
この「ダメ」という言葉。
おそらく小学校のクラスメイトは、本当にそう思っては言っていないと思います。その子からすると、ちょっとからかうくらいの意識だったのかもしれません。
でもSくんにとっては、そのクラスメイトの「ダメ」という言葉が、私たちが想像する以上に深く突き刺さったのです。
できるようになるために、あれだけ毎日がんばってきた自分は、やっぱりダメなのか。。。
いくらできるようになっても、クラスメイトには「ダメ」なやつとしか思われていないのか。。。
いったい毎日学習してきた自分はなんだったんだ。。。
ようやく6年生のときに評価されたのに、その自分は、やっぱり「ダメ」なのか。。。
Sくんはそんなふうに感じていたのかもしれません。
それからというもの、Sくんは勉強に対してやる気をなくしてしまい、どんどん成績は下がっていきました。
その当時の私は、クラスメイトの「ダメ」の一言で、ここまで変わってしまうのか。。。と、やりきれない気持ちでいっぱいでしたが、後々、親御さんとお電話で色々と話をしていく中で、なぜSくんが「ダメ」という一言に、これほどまでに反応しているのかが、わかったような気がしました。
なぜ、Sくんはそこまで反応するのか。
それは、一番身近でサポートしてきたお母さまが、Sくん自身を心から認めてはいなかったのです。
98点をとってきても、98点もとれるようになったことを褒めるのではなく、2点がどうしても気になる。
以前は60点台だったような国語が、85点になっても、残りの15点がなぜ取れなかったのかと言ってしまう。
Sくんは、どんどんできるようになってきているのに、さらに上、もっと上を要求してしまう。
そういう意識で常に見られていたSくん。
がんばって結果が出ても、なかなか認めてもらえないSくん。
そういう状況にいて、本当は心が苦しくてたまらないときに言われた「ダメじゃん」という一言。
Sくんにとっては、本当に辛い言葉だったのです。
それからSくんは、でき太の学習も滞るようになってしまい、最終的には退会されてしまいました。
Sくんが本当の意味で「再生」できるところまでサポートできなかった。。。
どうしているかな、Sくん。。。
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