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逃げないで、伝えていく

今日、とても残念なことがあった。
……と、普通の人なら思うかもしれない小さな事件があった。

だけど僕は僕らしくあるために、いつもなら言わない余計な言葉を代表の方に話してみた。

今までのように〝伝える努力〟を最初から放棄して、無難な対応に逃げたりせず……思い切って〝本気の本音〟を話してみたのだ。

その結果どうなったかというと……

最初の呼び止めの時には、戸惑ったような、なにかを恐れるようや表情をされた。
きっと〝なんだなんだ?!〟〝うわー、クレーマーかも…〟とか思われたのかもしれない。

だけど僕は精一杯の笑顔とともに、変に思われるかもしれない恐れを隠し、頑張って最後まで話した。





始まりは今朝の出来事だった。
僕は前の日に買い忘れた朝パン(朝食用のパン)を求めて最寄りのコンビニに買いに走った。車で1分の距離である。すぐ着いた。

そして会計の時に、入店した時に思ったことを伝えてみたのだ。


「さっき、店に入った時、とても元気で大きな声で〝いらっしゃいませ!〟って挨拶してくれましたよね。素敵だと思います。朝から元気もらいましました。お仕事 頑張ってください」

それを最後まで聞いてくれたコンビニの店員さんは、弾けるような笑顔になって……

「ありがとうございます!! 頑張りまッす!」

そう返事してくれた。

時間にしてほんの数秒の出来事だった。
だけど僕は、頑張って口にして良かったと思った。


そんな事があった今朝だったから……
いつもだったら思っていても絶対に言わないような余計なことを、今日ぼくは初めて口にした。

最寄りのハンバーガーショップで夕飯を買い物した帰り、テイクアウトした商品の中に買ったはずのバーガー二点が入っていなかったのだ。
レシートを見れば、代金はちゃんと支払っている。たかが数百円のバーガーとはいえ、長女がすごく楽しみにしていたこともあり、僕はすぐに電話して、もう一度その店に受け取りに向かったのだ。

そして、対応して謝罪してくれたマネージャーさんをつかまえて、長々とこんなことを話してしまった。
朝の一件がなければ、ここまで長く伝えようとはしなかっただろう。
僕は知らず知らずのうちに、あの弾けるような彼の笑顔に勇気をもらっていたのだ。

内容はこうだ。

「あの、入れ忘れてしまった店員さんはいますか?」

マネージャーさんはどきりと焦ったような表情になった。そして「あー……あそこにいる彼です」と控えめに差し示した。
そこにいたのは細身の若い男性で、いかにもアルバイトの人だった。
だから僕は慌てて、やや早口で続きを告げた。

「彼はその、失敗して落ち込んだりしていませんか? 大丈夫ですか?」
「え? いや、実はすぐに気付いて探したんですけど、居なかったと戻ってきましたね……」
「そうですか……」

それを聞いてなんとなく彼の性格を把握した僕は、マネージャーさんに長々と説教?をした。

「あの、あんまり責めないであげてくださいね。失敗なんて、誰でもあることですし……なによりさっきはすごく混雑してましたし、スタッフ募集の告知を見る限り、人手不足なんですよね? 」
「僕が言うのもなんですけど、若い時ほどああいう時には焦って一杯一杯になりがちだと思うんです。でも、そういうのは経験を重ねれば自然に慣れてくるものですし……失敗したって次に生かせば良いんですよ。今はこんな時代ですし、将来に対する不安も大きいと思います。だからこそ、こんなことで若い芽を潰して欲しくないんです。なるべく優しく、大丈夫だよって導いてあげてください。なかには忙しくて疲れてて、ちょっとのことで怒って怒鳴りつけてくるお客さんもいると思うんです……でも、それとこれとは別問題ですから。彼が自分を責める必要はないんです。教師でもない僕が何を言うかと思われるかもしれませんが、僕も一応これで三人も子供がいるんで……頑張って生き抜いて欲しいなって思うんです。だからその……つまり僕は全然気にしてないんで。むしろ隣の店で買おうかどうか迷って買わないまま帰って後悔した物を〝やっぱり買えってことなんだ。行く機会ができてラッキー!〟って思ったくらいですから(笑)」

そんな感じで、長々と喋ってしまったのだった。
忙しい閉店間際の時間だっつーのに( ̄▽ ̄;)



だけど、それを最後まで聞いてくれたマネージャーさんは……
やはり笑顔で、ありがとうございますと嬉しそうに言ってくれた。しかも「こんなこと言ってもらえたのは初めてです……」とも。

どうやら悪いふうに受け取られずに済んだようで、僕はその笑顔を見て〝本音を言って良かった〟〝伝えられて良かった〟と、しみじみと思った。

最初はとても怖かった。
迷惑になるんじゃないかと不安だった。

だけどいつか自分の息子があれくらいになって、失敗しては落ち込んで「やっぱり僕には無理なんだ、もう辞める!」とかってふうに思って欲しくない。簡単に投げ出してほしくない。

僕はただ、その一心で……

今を生きる若い世代の人々に、大変だし苦しい時もあるけどさ、生きるってそんなに悪くないよ。
悩んだり、傷付いたりした分だけ、美しいものや人の優しさが、より輝いて見えるんだよ。
だから生きること、幸せであろうと努力したり、何かをやり続けることを、簡単に諦めないで……

無理のない範囲で頑張って欲しい。

僕は、そういうことを伝えたかったんだ。

うまく全てが伝わったとは思わないけれど、失敗してしまった彼の気持ちが少しでも軽くなるといいな。

#実話 #エッセイ #今日の出来事 #伝える勇気

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