秋ノ月げんのライトノベル書けるかな(Idol Side)8.ニナコさん

  8. ニナコさん

 住む所さえ決まったら、あたしの行動は早い。ちゃちゃっと荷造りを終わらせ、その週の木曜日には発送、金曜日には、あたし自身が本格的に“亀有コーポ”に乗り込んだ。
 “亀有コーポ”前の駐車スペースに、日曜日に賢さんの家で見かけた黄色いスポーツカーが停まっていた。もしかして、ニナコさんの車だったのかな。
 荷物は大して多くもなかったので、一人でも二時間程度で開梱を終わらせると、さっそくお隣の二〇二号室、ニナコさんの部屋を訪ねた。
「あら、たしか桜お嬢様……でしたね。」
 ニナコさんは自宅だというのにメイド服だった。といっても日曜日に着ていたキャミソールタイプではなく、袖のある、ピンクを基調としたノーマルなメイド服だ。ニナコさんの場合こっちのが断然かわいい。
「こんばんは、今日こっちに越して来たので、ごあいさつに来ました。」
「まあそれはご丁寧に、どうぞお上がり下さいな。」
 ニナコさんの部屋に入って驚いたのは、ハンガーラックにかかっている服が全部メイド服だった事だ。ピンクを基調にしたものが多かったが、黒いの、白いの、茶色、緑、日曜日に来ていたキャミソールタイプもあった。
「紅茶とコーヒー、どちらがよろしいですか?」
「いえ、おかまいなく。」
「わたくしが万丈目様に叱られます。どうぞご遠慮なさらずに。」
「じゃ、コーヒーを……あっ! ブラックでいいです。」
「まあ、ずいぶんと大人びていらっしゃいますね。
 そういえば、そのお歳で大学に入られるそうですね。優秀でうらやましいです。」
「そんな、あたしなんかから見たら、ニナコさんの方がよっぽど品があって、あたしもニナコさんみたいな女性になりたいです。憧れます!」
「まあ! ほら、立ってらっしゃらないでお座り下さいな。」
 ベッドの脇に小さなガラスのテーブルがあり、ニナコさんはその横に籐で円形に編まれた座布団を置いてあたしに勧めた。
 ベッド、テーブル、ハンガーラック、あとは白い小さな鏡台と、その横にノートパソコンのVAIOが置いてある。

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