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金継ぎが直してくれるのは

一昨年の地震で取っ手が取れてしまったマグカップとやちむんの平皿を、金継ぎしてもらった。

3階の古いアパート。震度6弱の揺れで冷蔵庫の上に載せていた電子レンジはふるい落とされ、冷蔵庫はドアが開いて中身が飛び出てきた。本棚の本も軒並み落ちる大惨事に。

それでも壊れてしまった食器はこのマグカップだけ。たっぷり注ぐことができて、私の星座の模様があしらわれていて、とても気に入ってただけに泣きそうなぐらい悲しかった。

作家さんに連絡したら「何かの代わりになってくれたのかもね」と。

だとしたらやっぱりこのままにはしたくない。
金継ぎができる方を探していたところ、見つけたのが「金継ぎ主婦」として活動する吉田さんのインスタアカウントでした。

七ツ池にある「ライフタイム」で開かれた相談会で、落として割ってしまったやちむんの平皿と一緒に修繕を依頼することに。

作業工程を説明してもらったうえで、ネイルチップに載せた金、銀、さまざまな色味の金属粉や漆から希望の色を選んだ。



約半年後の先月。修繕を終えた器を受け取ると、思わず笑みがこぼれた。

直してもらったというよりは、彩ってもらえたような素晴らしい仕上がり。使い慣れて見慣れた器のはずなのに、まったく違う器にも思える。

大切な物を壊してしまった悲しい記憶が、静かに癒されていくのを感じた。

長くお世話になっていて、作陶への思いを知っている作家さんのマグカップを、新しく出会った地元の信頼できる方に直してもらう。

何も知らない人から見れば一つのモノであっても、私にしかわからない愛着や思いが宿った大切な器。そこにまた一つ、思いが加わった。

やちむんの平皿も、お店でずらり並ぶ中でなんとか厳選した大切な一枚。うっかり手を滑らせて割ってしまい、しばらく落ち込んだもの。真鍮でバージョンアップして戻ってきた。

いずれも使うたび、手に取るたびに心がやわらかくなる。
ああ、やっぱりいい器だなと日々感じる。

人はなくしてからその大切さに気づくというけど、一度壊れてしまったものを使い続けられるということは、心の片隅で安心感を与えてくれていると思う。

大人になっても、大切にしている器をうっかり割ってしまうといつも涙が出てしまう。「壊れても、きっと大丈夫」と知れたことは大きい。

大切なもの、より一層大切にしていきたいなぁ。
そして手元緩いの、どうにかしたいなぁ。

そして先月から吉田さんの金継ぎ教室に参加しています。
これまた欠けてしまったやちむんを。
どんな仕上がりになるのでしょうか。

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