うつくしい人 / 西 加奈子|読書感想文
カフェでゆっくり本を読みたくて、渋谷にある「森の図書室」に行ってきた。
いざ、席に座ると目の前が本棚になっていて、様々なジャンルの本がたくさん並んでいた。
事前にTSUTAYAで文庫本を1冊調達してから行ったが、惹かれて本棚から手に取ったのが『うつくしい人』だった。
主人公は、周りからどう見られているかを常に気にしながら生きている女性。会社を辞めたことをきっかけに思い切って海が綺麗なリゾートホテルに旅に出て、旅先で出会う人々と触れ合って考え方が少しずつほぐれていくという物語(私的解釈)。
頭の中で情景を描くことができる物語が好きなので、この本はすらすらと楽しく読むことができた。登場人物たちも個性的だけど突拍子もなさすぎず、現実世界で隣にいそうな感じで好きだ。
私が考えたいのは「うつくしい人」というタイトルについて。
「美しい」ではなく「うつくしい」。
主人公の頭の中や私の頭の中で凝り固まっている女性はこうあるべきという「美しさ」ではなく、女性だけではなく人として全員が持っている個性的な魅力の「うつくしさ」。
はたまた、人だけではなくて海や地下の図書館など場所の持つ「うつくしさ」。
主人公だけでなく読んだ人も、そういったものに目を向けることができるようになる物語だった。
私は「こうあるべき」という考えが人一倍強い性格だと思う。
女性なんだから「こうあるべき」。
社会人なんだから「こうあるべき」。
一人っ子なんだから「こうあるべき」。
彼女なんだから「こうあるべき」。
たまにぜーんぶぜんぶ捨てたくなる時がある。
部屋に1人で籠ってずっと本を読んでいたいなと思う時がある。
でも、何とか踏ん張っているのは、その考えも自分のものだと受け止めてうまく付き合っているからなのかな?
怖いのは他人に自分の「こうあるべき」を押し付けそうになること。
後から気づいて後悔するときもあるし、思いとどまれることもある。
他人は自分じゃないので、押し付けるのはだめですね。
同じ言葉でも漢字、ひらがな、カタカナ、アルファベットなど様々な種類で表現できる日本語はすごいなと改めて感じた。感じ方がまるで違ってきて個性的。
美しい、うつくしい、ウツクシイ、utsukushii
考え方や暮らし方が変わっているであろう5年後くらいに読み返してみたい物語でした。
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