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私にあの子は救えたのだろうか-対人支援に関わる人へ-

虐待をした保護者も、ナタを振り下ろした人も、どこかで止められたのか?そのために私になにができたのか?をずっと考えている。遠い話ではない。ものすごく近い話。あまりにもいたたまれない事件で、ニュースで見るたびに打ちのめされる。そしてもっと自分にできることをやらねば、と思う。

対人支援を仕事としている端くれとして、常にできる最大限のサポートをしていたい、と思う。最大限にサポートをしたところでも防げないなにかがあるのかもしれないけれど、でも今の時点でできる最大限をしていたい。

そして、私と同じような対人援助に関わっている方々、特に管理者の方々に伝えたい。虐待も、支援そのものも、一人で対応するには限界がある。組織として体制や仕組みをつくっておくことがとても大切。特に放課後等デイ・児童発達支援などの事業所、保育園・幼稚園などは参考にしてもらいたい。

まずはもちろん、いちはやく189へ通報。通報後どうなるの?本当に通報して良いの?と気になる方は、こちらの記事をご覧ください。とても分かりやすい。こちらの記事によると、通告されたケースは8割以上が「虐待あり」とのこと。

その他、私がこれまでの経験の中で学んだ、個人ができることと組織としてできることを以下に書く。

【対人支援をしている個人ができること】

・明らかな虐待ではなくても違和感があったら一人で抱えずに相談する。
特に一対一の担当制の方は、一人で抱え込まないことが超重要。自組織の誰かに必ず相談する。

・もし自組織への相談が難しい場合、対象利用者のほかの関係機関に相談する(医師、相談支援機関、他の支援機関) のも良い(個人情報の取り扱いについて利用者とどのような取り交わしを利用開始時にしているか確認しておく)。

【対人支援をしている組織ができること】

・家族支援の充実
家族の形は多様。どんなご家庭でも、しんどい状況はあり得る。ご家族がしんどい、と思った時に相談できるような関係性づくりや相談しやすい仕組みづくりをしておく(例:連絡ノートなどの活用)。子どもへの関わり方や家族同士のコミュニケーションに関するオープンな講座、子育てについてざっくばらんに保護者同士が話せたり、テーマ別に話せる座談会などを定期的に開催する。それでもハードルが高い人用には、おすすめの本やウェブサイトの記事などを掲示したり配布するのもよいかもしれない。そのご家族のペースやご家族の状況に合った支援や情報が選択できるよう、選択肢をたくさん用意しておく。

・職員同士、「相談することが良いことである」という文化づくり

その組織において、だれかが相談をしたときに「それは相談すべきでない」「自分で考えろ」などのフィードバックを得たら、たちまちその組織は相談がしづらい文化になってしまう。「良い支援者=自分ですべて解決ができる支援者、完璧な支援者」といった式がいつのまにか出来上がっていないだろうか。スーパーバイズする側や管理者自身が自分に「完璧」を求めていないだろうか。相談をし、チームで考えることがむしろ評価される文化、そして管理者やスーパーバイズをする人自身が、自分が相談している姿を積極的にみんなに見せることも大切。

・職員が判断するのが困難な時や困った時に対応チームを設けておく 

特に虐待のケースについて、直接支援をしている支援者一人のみで判断をしていくのはとても難しい。児童相談所をはじめとした関係機関と連携するのはもちろん、組織の中でも、そういった事例を専門的に扱う部署やチームがあると良い。すると、その中でノウハウが蓄積されていく。このチームでワーストケースシナリオを考えながら、現場の支援者をバックアップし、一緒にケースマネジメントをやる。

・アドバイザーやスーパーバイザーからアドバイスを受ける

組織の中にいると、判断や支援がパターン化してしまう。これはどの組織にいてもそう。「本当にそれでよいのか?」を常に疑うためにも、定期的にアドバイザーやスーパーバイザーにケース相談をし、自分たちの体制や支援の仕方を疑う。より良い仕組みづくりやより良い支援のために何ができるか?を考える時間を意図的に定期的に作る。

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はじめはちょっとした「違和感」や「気付き」なのかもしれない。そしてその「ちょっとした」が誰かを救うのかもしれない。

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ひとを増やしたり、資源を増やしたり、仕組み化するのはもちろん、していかなければならないと思う。同時に、孤立している誰かがいたら、誰かが踏み込まないと難しかったりするのかもしれない、とも今回思った。無理やり踏み込むのはよくないけれど、ある種の「おせっかい」「心配性」が命を救う時があるのかもしれない。一人で踏み込んで距離をつめるのではなく、みんなで距離を縮めていく。そういう風にありたい、と改めて思う。熊谷晋一郎氏のこの記事を思い出す。

「距離を空けていたままで回復するわけがない。全力で向き合いなさい。相手がびっくりするほど距離を詰めなさい。ただし、みんなでね」と、そう教わったんです。

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被害にあわれた方のご冥福を心よりお祈り申し上げます。

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※記事は個人の意見です。

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