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大学院のこと(11) (留学・進学体験談)

香港大学大学院で過ごした日々は、入学前に期待していたものとは違っていた。留学全般にかかった費用や労力、また進学によって失ったものについて考えると、それなりに後悔はある。

ただ一方で私は、香港という地で大学院に在籍したことを全くの無駄だったと思っているわけではない。ここまでの十話では「期待はずれだったこと」について書いてきたが、ここからは「それでも行って良かったこと」を書き進んでいきたいと思う。

大学院では卒業に必要な単位として10科目を履修した。そのうちの3科目が詐欺的に酷かった件は既に書いたが、残りの7科目については、先生が授業に来て課題を与え採点するという、言わば最低限の学びの場は提供されていた。あまり面白くはなかったし、時代遅れなものも多かったけれど、授業の体は成していた。そんな中、一つだけ予想外に面白く、それなりに為になったと感じた授業があった。

『Documentary Film Appreciation(ドキュメンタリー映画鑑賞)』

この授業を履修した理由は、受けたかった授業がことごとくキャンセルになり、少ない選択肢の中で比較的マシに見えたから、という消極的なものだった。

他の授業は、相変わらず私のキャリアや興味関心からはかけ離れたスキルセット系(例えば、テレビのニュース番組を読む練習をするクラス、経済や時事ものなどのハードニュースを扱うクラス)ばかりで、流石にうんざりだったことから、この授業が目に止まった。

映画を観るのは全般的に好きだったし、ドキュメンタリー映画はもっと好きで、大学院に進むまではよく独立系映画館にも足を運んでいた。ただ、映画を鑑賞することは単なる趣味であり、高い授業料を払ってまで大学院でやるようなことには思えなかったが、ともかく、アナウンサーの練習などといった無駄なことに時間と金を費やすのだけは勘弁して欲しかったのだ。




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