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強い言葉を遣うなよ

2023/10/01(日)

 小樽文学館で行われる山田正紀先生の講演会を聴いてきた。
 小樽に行くのは久しぶりだ。快速電車で30分ちょっとなので、関東などに住んでいる人だと「私の通勤・通学時間より短いじゃん」となるかもしれない。でも、心理的には遠いんですよね。
 
 講演会は約1時間。戦前の小樽を舞台にした『人喰いの時代』という小説のお話が中心だった。
 愛読者ならわかると思うけど、山田先生はキャリア50年(!)、著作は200作近いのではないか? 日本SF大賞や日本推理作家協会賞を受賞し、直木賞候補にもなったことがあり、現在も絶えず新作を発表しておられる、「大」をいくつつけても足りない大作家なのに、おそろしく謙虚なお方です。
 初の本格ミステリである『人喰いの時代』を雑誌連載したときも「ミステリ界の新参者としてお邪魔にならないように、手がかりがきちんと示されて論理的に謎が解ける端正なミステリを書くことを心がけました」みたいなことをおっしゃっていました。謙虚すぎる。
 あと「ミステリは民主主義の上に成立する文学」ということを繰り返しおっしゃっていたのも印象的でした。「学園もののミステリ、大学サークルもののミステリが常に書かれ、人気なのは、学校は実社会よりは民主主義が生きている世界だからだろう」とも。
 私の解釈は浅いかもしれないけど、バレないようなトリックをしかけて犯罪をするというのは、犯罪が「悪いこと」という認識があるから隠蔽しようとするのだし、それを論理的に解決するというのも「なんとなくこいつが悪いから裁こうぜ、証拠はいらない」という殺伐世界だと必然性が薄いということかな……。世界がデタラメすぎると、知的遊戯は成立しない。
 社会や政治が不安定で、民主主義が脅かされているような気配がある昨今、ミステリは違う角度から読まれる価値があるし、エンタテイメント小説だからこそ物事の本質を突けるということがある……
「だからみなさん、これからも小説を読んでほしい」というのが講演の結びでした。

 せっかく小樽に行ったので、短い時間だけど、講演会の前後に散策した。いずれ小説の舞台として書く予定があるので、実際に街を観ておきたいと思っていたので、いい機会だった。

小樽駅から外に出たときの風景
小樽運河
廃線になった線路がそのまま遊歩道になったもの
祇園や太宰府など、限られた観光地にしかないらしい


2023/10/02(月)

 夕方まで用事。
 この下半期から微妙に環境が変わったので緊張する。


2023/10/03(火)

 終日、用事。
 それほど忙しくはなかったけど慣れないので疲れる。
 
 自分の善意が、期待する通りに万人に受け容れられ、喜ばれるとは限らない。そうなると頭から信じ込んでしまえば偽善のはじまり。
 どんなに正しいことを言っても一定の反発はかならずあるし、もちろん程度問題だけど、批判を受け流すのは「何を言われても耐えなきゃいけないのか」とか「スルーすることは悪を是認すること」という大げさな話ではない。届けたい人たちの何割かに善意が届ければそれでよしとして、あとは泰然と構えていればいいのに「不当な攻撃をされた!」と騒げば、それがまた反発を生むのだ……。
 そんなことを思う。


2023/10/04(水)

 あんなに暑かったのが嘘のように、10月に入ってスーッと気温が下がった。最高気温が20℃を下回る日もある。
 エルフの里ですね。
 私は夏から秋の季節の変わり目には毎年、涼しくなったのが嬉しくていつまでも薄着でいてしまうほうなんだけど、さすがに朝晩は長袖のカーディガンを羽織ったりするようになった。

 人に小説の相談をしてヒントをもらった。ありがたい。
 急いで書き進めなければ。


2023/10/05(木)

 Perfumeのあ~ちゃんがますます痩せて美しくなったというのが今年はよく話題に上がってくる。でも私には心配な痩せ方に見える。
 メンバーで一番明るく元気な反面、陰ではいちばん思い詰めるタイプじゃないかと、ゆるいファンのひとりとしては勝手に思っています。ストレスでご飯を食べられていないんじゃないか……。体力は大丈夫なんだろうか、心はつらくないだろうか……。もちろんファンは、華奢な彼女たちがビッシビシ踊るのを観たがってしまうわけで、その期待がいちばんの圧であるのだから、こんな心配も偽善かもしれないけど。

 消費とか、搾取とか、そういう言葉で、誰かに期待して応援を寄せることを強く警戒するようになったのは何年前からだろう。ジャニーズのことで現在も乱れ飛んでいる言葉だ。消費。搾取。
 言葉の強さに溺れず、丁寧に考えていきたい。私たちは消費しているのか。搾取されているのか。それはどの程度なら許されるのか。丁寧に考えているあなたは許されるけど、他人の「推し活」は暴力なのか。

「強い言葉を遣うなよ」という『BLEACH』の名台詞はすごいな。

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