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滅ぶにはまだ早い

2023/08/02(水)

 朝から暑い。カラッと晴れた夏日だ。蒸し蒸ししていないのはよい。
 白い光にじりじりと灼かれながら、警察署に向かう。面倒だけど仕方がない。免許の更新はしなければ。
 昨日の日記で書きましたが、健康診断で視力検査が思うようにいかなかったので、不安がある。新しい眼鏡のフィッティングがよくないのだろうと結論づけて、以前から家で掛けている眼鏡を持っていき、検査の前にそっちを着用する。
 “C”の向きを一個まちがって血の気が引いた。
 さいわい検査には合格し、無事に新しい免許をもらえましたが、やっぱり急激に落ちたのかな、視力……。
 原稿の書きすぎが原因なら「目を大事にしてください」といたわってもらえるかもしれない。しかし、パソコンには日々向かっているんだけど、ぜんぜん、まったく、これっぽっちも、書きすぎてはいない。一太郎の画面がほとんど空白のまま、ただ目が疲れただけの人がうなだれて座っているだけ。厳しい光景である。
 次に眼鏡のレンズを買うときは、お店で視力を計り直してもらおう。もう一本くらいほしいんだよね。

 ところで、中央警察署は大通公園のすぐ北側にある。
 免許更新を終えて署を出たのは12時ごろ。ビアガーデンが始まる時間である。信号をふたつくらい渡ると、すぐにサントリーのブースが視界に入ってくる。広瀬すずと大泉洋の大きな看板が建っている。

 寄るのかよ……
 15分だけなのでゆるしてください。マスターズドリームと、山わさびソースを掛けたザンギ、大変おいしゅうございました。

 集中して作業していると(おっ、この日記では珍しい言葉っ)たちまち夕方になってしまった。窓の外の景色が水色っぽくなっていく。なんでしょうね、日中と変わらずまだ明るいんだけど、確かに翳りがじょじょに増している、あの感じ。
 けっこうがんばったんだけど、やりとげたことの少なさに愕然として(おっ、いつも通りで安心するっ)暗くなる。いや、そこで暗くなるのではなく、それが自分の作業量であることを把握した上で、今後も現実的かつ確実なスケジュールの遂行をですね……秋永さん、わかってますか、おい真琴! 聞けよ! 話を! と脳内の上司が言ってくる。
 俳優やミュージシャンが面白エッセイを書くと、町田康さんか、初期の川上未映子さんっぽくなる傾向があると思っている話を唐突にします。とくに町田先生。あの、ぼやきと妄想が膨らみ続けて話題がずるずると脱線するスタイルって、人が「よし、愉快な文章を書くぞ」と思ったときに真似したくなる……できる気がするのだと思う。
 しかし、日本を代表する両文豪がどちらもミュージシャン出身というのは面白い。あの「町田町蔵」と「未映子」が……。川上先生がシンガーソングライターだったのは、もう知らない人のほうがずっと多いか。いまも楽曲はAmazonなどで配信されています。

 家事をしたり、編集者のかたにメールを送ったり、この日記を書いたりして、気温が下がらない夜を過ごす。
 今夏は世界的に12万年ぶり(は?)の猛暑だという記事を数日前にネットで見た。12万年前って、ネアンデルタール人がマンモスを狩っていたころでは? 比喩でなく、人類が経験したことのない暑さであるし、今年だけが異様で来年以降はずっと普通ということはないだろう。
「日傘をさすのをもっと当たり前のことにしよう」なんて声が上がったりしている。確かに、これまでの常識を人類の側が更新しなければいけないのだろう。高校野球を秋に実施するとか、そのくらい社会の側がドラスティックに変化しなければ、みんな夏に滅んでしまう。

 わたしたち正しく進化し損ねて夏が終われば滅ぶでしょうね

『野性時代』2020年1月号「野性歌壇」

 以前、文芸誌の短歌コーナーに投稿して採用された一首です。短歌としてはエモいかもしれないけど滅ぶにはまだ早い。
 進化していこう、わたしたち。

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