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いにしえずむ。


茅葺き屋根が好きです。ぼてっとしたフォルム。特有の丸みがあって柔らかな印象がほっこりさせてくれます。

初めて茅葺き屋根を見たのは小学生の時に家族旅行で訪れた夏の白川郷。突然現れた日本昔話の世界に興奮しました。建物の中へ入れると聞いてまた興奮。急傾斜の屋根の小屋組みに真っ黒な竹が使われていて、組み合わせは紐で結びつけてあってびっくり。こんなんでこの大きな屋根ができているのかと驚嘆しました。日本の原風景にある民家の屋根と言ったら間違いなく茅葺き屋根だと思います。

この出会い以来、茅葺き屋根好きを自称してきたのですが、茅葺き屋根と一口に言っても、神社の屋根できちっとしたもの。民家ゆえの必要に足るもの、なにやら美的意識の高いものと結構様々あって面白いです。

今は少ないかもしれませんが民家は集落の共同作業として葺き替えが行われていて、茅の穂先を下にした「逆葺き」が多いそうです(どちらかと言うと簡単なんだそうです)一方で職人による仕事は穂先を上にした「本葺き」と葺き方が違うそうで、見た目の密度で違いが判りますし、軒先の切りそろえたラインは本葺きの方がシャープな気がします。密度が高い方が輪郭線がしっかりとしてメリハリがあってより美しい。曲線がここまで美しい屋根材は他にはなくて茅葺きだけがもつものです。

地域性と習慣・伝統、そして何より美しさを、一本一本を見れば細い茅の集積物がもたらしてくれるのは考えてみると凄いことだと思います。

画像の茅葺きは、小技の効いた美意識の高さが窺えます。美しいです。こういった造形を見ていると建築の造形性は昔の方が優れているんじゃないかと思わせてくれます。モダニズムが手放した面白さがこういうところにありますね。面白いです。職人さんの遊び心を感じられます。

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