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"データ=人=男"構造の歪みに気づくには

最近、口を開けばおススメしている本『存在しない女たち: 男性優位の世界にひそむ見せかけのファクトを暴く(Invisible Women)』について書きたい。

新しい年が始まったばかりであるが、間違いなく、2021年一番おススメの本である。各社様の文庫に推薦して回りたい。

本書の帯にはこんなコメントが書かれている。

男のために設計された社会で「男も大変」とか言っちゃう傲慢さを知る
──武田砂鉄

ぐっ。

しかし、本書を読み終えると、感想は変わる。

あれ、私も同じではないか。

男のために設計された社会の仕組みの中で、「男女フラットに働いてきた」とか言っちゃってたんじゃん。

あー、最悪だ。全然知らずに30年以上も生きてきちゃったのか。

自分の無知さにショックを受けた。この社会の前提にまったく肌感を持てていなかった。ただただ知らなかった、ということが虚しかった。足元が抜けるほどの衝撃だった。まるでブラックホール。

拙いアウトプットではあるが、所感を書いてみたい。

データ=人=男

本書は、物語の登場人物、トイレ、交通機関の時刻表にはじまり、いつものあたり前の風景が、男性がつくった世界であり、いかにもう半分の女性を見落とした世界であるかということが、これでもかというくらい示されている。

ほかにも、例えば、医療においては、治験者に男性が多く、同じ医薬を女性に投与すると過剰摂取になってしまっているケースがあるとか。治験の時点で女性が認識されていないから、女性特有の(というか人間の半分の)ホルモンバランスが考慮されていないとか。

データの時点で認識されていないのだ。

女性が認識されていないデータをもとに事業活動がなされ、そして稟議先はほぼ男性だ。

おう。

最初は、言い過ぎじゃないかと懐疑的に読んでいた部分もあったのだが、本書が訴える「データ=人=男性」の構図があっという間に落ちてくる。

構造の歪みに気づくには

データという点では、顔認証も、白人男性に比べて有色人種に対する顔認識技術の認識率が低く、人種差別や性差別を助長しているのではないかとするニュースをたびたび目にする。

構造の歪みに気づけるひとつの仕組みとして、個人情報の取り扱いやAI倫理ガイドラインの策定など、欧州の動きに合わせて日本でも論点になっていくだろう。

そしてもうひとつ。私は、ライフテーマとして、意思決定層のジェンダーギャップに取り組みたいとアクションを考えているのだが、専門性の多様化は良いとして、改めて、女性の割合が増えるだけでは足りないことを思う。

意思決定層のジェンダーギャップについて、男性経営者の皆さまと議論すると、「経営層に女性がいたほうがいいと思う。そこは大賛成。はっきりと理由はプレゼンできないが、経営層に女性がいないことで、何かを見落としているのではないかという漠然とした不安がある」という話になることがある。

これは、「そもそも、男性が設計した社会であることを認識できていない自分が不安」と解釈できるのではないか。

なにも男性だけではない。私も同じだ。そもそもそれを認識できていない女性の私が経営層にいたところで、多様性としてのカウントにはならない。言い切っておこう。歪んだ構造の上で、求められるように踊っているようじゃ、それこそ数合わせである。

構造の歪みに気づける人が必要なのだ。性別関係なく。そして、やっぱり、意思決定層に女性が当たり前にいる未来のほうが、歪みに気づける可能性が高いのではないか。

* * *

『Zero to One』の最後は、こんな一節で締めくくられている。

よりよい未来を創ること-つまりゼロから1を生み出すことだ。そのための第一歩は、自分の頭で考えることだ。古代人が初めて世界を見た時のような新鮮さと違和感を持って、あらためて世界を見ることで、僕たちは世界を創り直し、未来にそれを残すことができる。

古代人と聞いて連想するのは、古代では、集団に所属する全員が協力して子育てをしていたという話だ。『サピエンス全史』によると、古代は、一夫一妻の関係も持たず、各男性には父権さえない原始共同体で暮らしていたという。どれが我が子が断できないから、どの子供も同等に気遣ったのだと。

今日にいたるまで、様々なラベリングがなされながら構造化されてきた。結果として生まれた様々な歪みが社会課題として認知され、2030年をターゲットにSDGsの大号令がかかっている。

この歪みきった世界を、新鮮さと違和感を持ってあらためて見直すことが求められている。事業活動を通じて、少しでも貢献していきたい。そのために、私は、目を澄ましていきたい。

このタイミングで本書に出会えたことに、感謝しかない。


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