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リズム曲線のない絵の残念さ / 古典に学ぶ人物デッサン

どんなデジタルイラストレーションであっても、うまく・よく描くには、技法をわざわざ自分の体と頭に焼き付ける必要があるのだ。この現実を受け入れながら、私は空き時間を見つけてはせっせと練習を行っている。

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自分がペンツールで作ったイラストがなんだか変!に見えるのは、リズム曲線を意識していないからかもしれない

Illustratorの話でいうと、何も考えずにペンツールで絵を描いたときに「なにか惜しいストローク」が最初にできてしまう。

ざっくりとペンツールを使って描かれたものは、リズム曲線の存在を無視してしまったゆえに、不自然な見た目となってしまう、とも解釈できる。

たとえば下記に示してみる。これは私個人で作成した鳥のイラストである。

Before: ざっくり描いたもの

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鉛筆の下絵をトレースしたものだが、丁寧にトレースしたはずなのに、下絵時点で計画していた訴求ポイントが全く訴求できておらず、ぬいぐるみの型紙をトレースしたような残念な落書きとなってしまった。

After: 調整したもの

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時間をかなりかけて修正したものが上となる。最初に描いたものと比べ、輪郭線が少ないにもかかわらず、安定感のあるものができたと思っている。

この努力が多少報われた理由を、この本にかかれていたキーワードであえて言ってみる。私は「ぬいぐるみのように足には胴体とは違う別の布地が継がれている」事実を受け入れ、対象の躍動的・魅力的な部分(=リズム曲線)はどこかを再解釈し、その模索に殆どの時間をつぎ込む手段をとったのだ。

存在感のある肉体を描くには、リズム曲線を意識したアウトプットを行うこと。

輪郭線は体のリズムを最終的に受け止める線であり、輪郭線とリズムの間にはS曲線というものが介在する。あなたのギチギチにものが詰め込まれたトートバッグを最終的に受け止めるS字フックの対応力を想像してほしい。Sの字というのはどんな衝撃をも吸収し緩和してくれる強いリズムなのだ。

人の体や動物の体に置き換えても、最も衝撃に強いカーブを描く場所に、そのものらしさが宿る傾向がある。そして存在感のある対象というものは、安定したリズム曲線を自らに有し、何もしなくても相手に気づかせることができるのだ。

デジタルをやろうがアナログで落書きしようが、大事なのは相手のリズム曲線を丁寧にみつけ、丁寧に反映してあげることだ。iPadでなんでもかんたんにトレースすることができるようにはなったが、対象のもっとも重要なリズム曲線はかんたんにトレースできない。うまく・よく描くということは、自分の観察と解釈なしには達成されないゴールなのだ。

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