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パンと生き物 ルヴァン種を起こしながら感じること

最近ルヴァンでパンを焼く事が多い。うっかり上級のレッスンに入れたから、なるべく簡単に、そしてなるべくルヴァンだけでパンが作れるように色々試行錯誤しているわけだ。

レーズンや果物や甘酒やヨーグルトで種を起こすのは、それこそパン屋を始める前からやっているから、20年以上酵母を培養して増殖させて育ててるってことになる。

パン屋の時に、果実酵母のレッスンとして、毎回違う果物使ってレッスンしてたら、みんなのキッチンが瓶だらけになり、ちょっと拷問ぽかったので、しばらくやってない。でも、レーズン酵母だけでパンを数種焼いていくみたいなの、おうち時間がふえたから、またそれは、また始めても良いかな〜と思ったりしてる。

話が飛んでしまったけど、ルヴァンとかサワー種とかを育てていると、色んなことを感じる。梅が咲くと元気になるな〜とか。この小麦は農薬そーとーかかってんなーとか、意外と雑菌残ってて元気だなーーとか、ライ麦もそうだけど、国産の方が元気に起きるね。とか。

途中で腐った匂いになるのは雑菌君が元気になってんなーとか、そろそろ乳酸菌がふえたから、静かになっちゃった…とか。菌同士の闘いが垣間見えるようだ。温度このくらいにして、乳酸菌頑張れーとか、酸素吸入させて酵母がんばれーとか。環境を整えながら、あやしながら育てていく感じ。気温がよくてもどんなに頑張っても安定するのに6ー8日はかかる。その間にいろんな菌が領土争いをしながら、菌数を増やしていくわけだ。それをサポートするのが私たちの役目。無理やり増やしたり減らしたりはできない。環境を少しだけ整えたりするだけ。

だけど、何十年やってても、うまくいかない時もあるし、元気ない時もある。どうにかして、それを手懐けようとしてきたけど、それは無理なんだなーと最近改めて思ってきた。。というより、手懐け無い方が面白いじゃん。と。思ってきた。これが、はい、何度に何分して、はい出来上がり。ってなったら、全然面白く無いね。

糠味噌とおんなじだよなーと思う。手でかき混ぜて手の菌が入ることで、それぞれの家庭の味になる。自家製の種もおんなじ。菌が空気中にウヨウヨしてるから、それぞれの家庭の菌の状況で同じ材料でも変わってくる。だから瓶煮沸消毒しても意味ないよ。

野菜も、お酒も豚さんも、みんな生き物だから、その時その時で出来が違う。昨日のトマトは甘いけど、今日のトマトは酸っぱいとか。だから、楽しい。どこどこシャトーの何年の何ワインは、こんな風味だ。それが何年経ったらこんな風味になった。みたいなね。
そういうのが楽しいし、価値があるように思う。

工業製品みたいに、おんなじ味になったら、ちっとも面白く無いよね。そして、おんなじ様に作ろうとしたら、色々無理をさせるから、いろんな添加物とかを入れることになってしまう。そしたらもっと美味しくなくなっちゃうし、身体もきっと嬉しく無い。

コントロールして、効率的に画一化された製品をバンバン作って販売する。って言う構造に、無理があるんだと思う。だけどそうせざるを得ない人たちもいてそれはそれで仕方ないと思う。私たちは生き物で、私たちが命を長らえるために食べてるものは、全てもともとは生き物なのだ。

だから、うまく作ろうとか、人間の都合に合わせて、コントロールするのをやめにしたい。そうしたら、きっと、美味しいパンが焼き上がる。家庭で焼くパンは色んなことから自由で時間もいっぱい使えるから、わざわざ無理するパン作りを真似する必要はないんじゃ無いかなと思う。

パンは発酵食品だから、本来なら数日かけて作るものなんだ。

だけど、私たちの都合で、数時間、短時間でイーストバンバン入れて、発酵ちゃんとさせないで、炭酸ガスだけ発生させて、ガスを保持出来るようにタンパク質量の高い粉をつかって、バンバンこねて酸化させてふわふわと焼き上げるたりするんだよなぁ。ちゃんと分解されてないから風味も少なくて、

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分解されてないから、消化にも悪いんだろうな。

みんなもっと菌をリスペクトしたらいいんだよね。
と、ルヴァン君と一緒に暮らしてて感じること。

パンは生き物。ペットを育てるのと同じだ。

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