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【受験】せっかく猛勉強するんだから。こんな受験問題はどう?とおばさんは考えた。

ここ数年は中学受験ブームだ、という話をよく耳にする。

小6娘の周囲にも「お受験組」が何人かいて、
「部屋に監視カメラがついている」とか
「遊んでいたら、スマホにお父さんから着信があって、『帰ったら勉強するんだよ』って言われた」とか、
まるで漫画のような話に「それホント?」と突っ込んでしまうことがしばしばあった。

嬉しいことに、私と娘が把握している「お受験組」は、全員が無事に合格したとのこと!
よかったねえ、本当によかった! と娘と喜んだ。
娘は、本当に涙ぐんでいた。(ちょっと驚いた)
「だってね、4年生の時から勉強頑張っていたからね…」
お友達から色々な話を聞いて、子ども心にも大変さを痛感していたんだろう。

次の日。
新聞を開いたら、受験問題と解答が掲載されていた。
関西では屈指の名門校、灘中学の算数の問題である。

わー、意味わかんない。と49歳の老婆は思った。
と同時に、娘と同じ年齢の子が、この問題に取り組んで正解を出していることに驚くし、心からの拍手を送りたくなる。
夫曰く「受験はトレーニング」とのことだけど、どれだけたくさんのトレーニングを積んだら、こんな難解な問題を時間内に解けるのだろう。想像がつかない。

だがしかし。
これらの問題が解けるのはものすごく素晴らしいことだし、子どもの大きな成長につながることは理解するが、果たして社会に出て役立つのだろうか。

例えば、1問だけでいい、こんな問題はどうだろう。
「あなたが登校中、自転車で走行していたおばあさんが転倒しました。あなたはどういう行動に出ますか?」

* * * * *

というのも、先日遭遇したちょっとした出来事に、考えさせられてしまったからです。

朝の散歩をしていた時のこと。数人の人たちが倒れ込んでいる女性を囲んで、ワイワイしているのを見かけた。
全身を支えてもらっていたその高齢女性は、自転車から転倒し頭を強打したらしい。ご本人に意識はあり、会話もできているが、なんとなく心ここに在らず状態。

「救急車、呼ぶか?」
「頭打ってるし、病院に行った方がええで」
「大丈夫か?」
口々に皆さんが声を掛ける。

私はもちろん、そのまま通り過ぎることもできた。
できたけど、ただ散歩をしているだけの暇人が、素通りしていいのだろうか。
とりあえず出番がないか、しばらく静観することにした。

「電話をしても、タクシーが捕まらない」
「救急車は呼びたくないんですね?」
「かかりつけの病院があるんですね」
そんな会話が聞こえてきたので、
「駅前のタクシーに声をかけてきましょうか?」と恐る恐る手を挙げてみたら、「頼むわ」ということ。
介抱していた女性が、「私も一緒に行きます!」と同行してくださった。

現場から駅までは、走って3分ほど。
駅の西側のロータリーには残念ながら流しのタクシーはおらず、東側に回ったらタクシーが1台停止していた。
猛ダッシュしてタクシーを捕まえ、2人で乗車して運転手に事情を説明、現場まで向かった。

同行してくださった女性はスマートだった。
そっと運転手に千円札を差し出すと、「お釣りは病院までのタクシー代に当ててください」と告げた。
私ときたら、散歩だからってスマホしか持っておらず、ただの同乗者になってしまった。ああ…。

「私は散歩していただけなので大丈夫なんですけど…。ご予定はなかったんですか?」と尋ねたら、
「ええ、まあ…。大丈夫です」という回答。用事があったに違いない。

そうして無事に現場に到着、頭を強打した女性は一緒にいたお友達とタクシーに乗り込み、病院へ移動していった。一件落着。

* * * * *

タクシー探しに同行してくださった女性がいなかったら、私はどうしていただろう。タクシーに乗って現場まで案内することを考えただろうか? 場所だけ告げて「行ってください」とお願いするだけだったかもしれない。

ああこういうとき、私は本当に何もできない。正解がわからない。
混み合う地下鉄のホームで白杖の方を見かける時も、いつもそう思う。どうやって声を掛けるのが一番いいのだろう。
学校で教えて欲しかった。学びの場が欲しい。どこかに行けば、教えてもらえるのだろうか。

これから大高齢化社会が到来するし、外国人の移住もどんどん増えて生活面で頼る場面も出てくるだろう。自然災害は語るまでもなく、すでに起きている現実だ。
社会はどんどん変わっていく。
そこで遭遇するであろう予測不可能な出来事に、「難解問題で正答が出せる」技術は、果たして役立つのだろうか。

「あなたが登校中、自転車で走行していたおばあさんが転倒しました。あなたはどういう行動に出ますか?」

ぜひ、受験問題にこういった1問をぶち込んで欲しい。

数年後の日本が、変わると思うなあ。

〈余談〉
事情を聞いたタクシーの運転手さん、
「なるほど…『人助け』、ってわけですね…」
と感心したようなそぶりを見せたので、「タクシー代をまけてくれるのかな♡」と期待しましたが、そうは問屋が卸しませんでした。
スマホしか持っていなかった人間が、スミマセン。


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