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外出禁止中のブリュッセル、都市の変化の記録。

わたしの暮らすベルギーのブリュッセルは、コロナ(COVID-19)の影響を強めに受け、人と都市との関わり方が変わってきています。3月17日から外出禁止令がはじまり、いま6週間目が終わる頃、いよいよフェーズアウトを話し合う段階に入ってきました!

帰国する留学生仲間も多い中、わたしはこっちにも家族がいるのと、交換留学ではないので特に帰国要請もないので、じっくりと外出禁止下のブリュッセルで暮らしてます。外出禁止といっても、隣国のフランスやスペイン、イタリアほどに厳格ではなく、散歩やランニング、買い物は好きなときにできて、ある程度行動の自由が保たれてます。今日は、コロナによって生まれた変化を、都市デザインの観点から考察したいと思います。

読むのよりもポッドキャスト派というあなたには、ちょうど先日ポッドキャスト「Good News for Cities」の2話目で同テーマについて話したので、下記のリンクから聞いてやってください :) このポッドキャストは「都市」をもっと面白くするために活動する、とっても素敵で行動派な友人ふたりがはじめました。都市好き、新しいこと好きの皆さんぜひチェックしてください。

人との距離感の変化

この変化はもう一目瞭然。ブリュッセルでは、知り合いの間では挨拶がわりにハグやほっぺたにキスをする。知らない人同士だったら握手。もともと人の距離が近くて、バーやカフェだけでなくスーパーや道端でも知らない人が話しかけてくるのが日常の風景。私がアジア系女子ってこともあって、興味がわいて話しかけてくる人もいると思う。コロナの影響でアジア人差別が増えてると聞くけど、幸い個人的には受けてません。ブリュッセルの人は分別があるのかな?アジア人コミュニティが大きい都市は被害が多いみたい。

普段マスクをする習慣がないこの人たちが、今や積極的にマスクや使い捨ての手袋を装着し、1.5メートルの社会的距離をとりながら暮らしている。コロナが流行りだした頃は、テレビのニュースで「ハグやキスをせず、代わりに肘や靴の先っぽで挨拶をするように」とのお達しが流れるほどだったのに笑。距離が近くて温かいところがブリュッセルの大きな魅力だから、なんとか失われないで欲しい...と思ってたところ、今週初めて行ったスーパーの店員さんに「家でどう過ごしてる?大丈夫?」と聞かれ「まあぼちぼちでんな...やることないよ」的な返事をしたら「じゃあお酒飲んでダンスしな!」とアドバイスをもらうことがありました笑。人懐こい文化はまだ変わっていないようです。

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↑行列をつくるときはこんな感じに隙間をあけてます。

都市との関わり方

さて、私のいま一番の関心事は、いかに都市をサステナブルにデザインできるかです。それを学ぶためにブリュッセルの大学院に通ってます。気候危機や広がる社会経済格差、加速する人口の都市集中に対して、人と都市との関わり方はどんどん変わっていかないといけない、という問題意識があります。これらの問題へのアプローチ方法として、都市デザインはとても可能性があり、緊急性のある面白いフィールドだと思ってます。実際に、今回のコロナを機にローカルな視点が強化されていて、都市デザイン的に面白いことが起こっています。

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↑車がほぼいなくなった道路。街路樹がいい感じ!

移動方法がサステナブルに

地元を徒歩や自転車でまわってみると、こんな建物があったんだとか、この道ってここにつながってたんだ、みたいな発見ありません? 都市デザインでは、街を体験する最善の方法は徒歩と自転車といいます。車や電車での移動はまた別の楽しさがありますが、徒歩や自転車は街の風景をじっくり見ることや、通りすがりの人とのふれあいやお店にふらっと立ち寄れるところが魅力です。また、ガソリンや電気を消費しないため、もっともサステナブルな移動手段です。コロナの前から、ブリュッセルを含めヨーロッパの都市では、サステナブルな移動手段を優先するため、都市デザインの大転換が進んでいるところでした。普段は車やバス、電車、時には飛行機を使ってまでもっと遠くに、早く移動しようとする私たちですが、外出禁止によって行動範囲が徒歩や自転車で行けるところがメインに変わりました。私もそうですが、人混みを避けるために移動方法を自転車に切り替えた人は、結構多くいると思います。

ブリュッセルは、私が以前住んでいた東京に比べたらとても小さく、徒歩や自転車で回りやすい規模の都市です(人口は約100万人)。東京では、練馬区から新宿都心にある職場まで自転車+電車+徒歩の合計45分通勤にかかっていたので、自転車だけで通勤するのはむりだったと思う。しかしヨーロッパの都市の中でブリュッセルは、まだまだ車中心というネガティブ評価を受けています。実際に交通渋滞や騒音、大気汚染が問題になってます。アムステルダムやコペンハーゲン、ロンドンみたいに自転車道の整備が進んでなく、自転車で通るには危険な箇所もまだたくさんあります。私も昨年の暮れ、路面電車のレールに自転車のタイヤがはまってしまい、激しく顔面をぶつけるスタイルで事故りました。後ろの車を運転していた若いカップルが、地面に倒れて動かない私を心配して助け起こし、自宅まで送ってくれたという。ブリュッセルの人はやっぱりすごく優しい。

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↑事故現場:路面電車と車と自転車が同じ空間をシェアしないといけない。線路の溝がとっても危険!

外出禁止の影響で交通量が減り、渋滞は平均より20%減大気汚染も例年より下がっています。確かに、空気が前より澄んでる気がする。私が住んでいる地域は都市の真ん中あたり(ルイーズ地区)で、普段は車の騒音や警察のサイレンで朝起きることもしばしば。すごい残念な目覚ましです。最近は、庭の木にいる鳥たちの声がはっきりと聞こえるようになったんです。街歩きや自転車での移動も、ずっと安全になりました。ヨーロッパには今もアフターコロナも、経済への大打撃が待ち受けていますが、この貴重な体験をきっかけに、皆が徒歩や自転車の良さに気づいて、前みたいに車の渋滞でおおわれた街ではなくて、サステナブルな移動手段が発達した都市デザインに変わっていくといいなと思ってます。

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↑鳥たちが集まってくる中庭の木々。もっと緑のバランス増やしたい。

地域に根ざしているということ

外出禁止とともに、生活に必要不可欠なサービス(食料スーパー、薬局、郵便、銀行)以外の店舗(カフェ、レストラン、洋服店など)は営業停止になり、テークアウトのみ許可されてます。私はカフェめぐりが趣味なので、外出禁止でできないのがとってもストレス。テークアウトでも、美味しいコーヒーとおやつを味わえるのは、自分にとって大きな癒しです。これはブリュッセルだけに限らないと思うけど、お気に入りのカフェやレストランが潰れないよう応援しようというムーブメントが起きてます。近所のカフェに買いに行って、インスタグラムで「Support your local store」と投稿してる人が多くいます。私も自宅からいちばん近いカフェBuddy Buddyで、コーヒーやクッキーを買って応援しています。このカフェのオーナーたちはめっちゃクールな若者で、お客さんの名前も覚えてくれる距離の近いお店。どうやら、ブリュッセルでは個人経営のカフェ同士のつながりが強いよう。インスタグラム上でこのお店が土日テークアウトはじめたよ、とお互いのストーリーをシェアしあったり、コラボ商品を開発したりと、とても健全な生態系が育まれています。コロナ危機で、さらにつながりが強くなったのかな。

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↑コラボ商品のヴィーガンピーナツチョコドーナッツ :) 今まで食べたドーナッツの中でいちばん美味しかった。尊敬の域。

これと対照的なのが、バーガーキングやマクドナルドなど、大きなチェーン店に対してはこういう動きがみられないこと。もともとブリュッセルにはチェーン店は多くない。スタバが数軒あるけど、東京みたいに行列にはならず、個人経営のカフェが好まれるよう。私もそうで、個人店の一軒一軒メニューが違うところ、異なる空気感、流れる時間、インテリアデザイン、その全ての個性を味わいながら、お店の人とだんだんとお近づきになるプロセスが大好きです。つまりは多様性が大事にされているカフェ文化なのかと思います。危機に人々を動かすのは、お店が地元に根ざしてるかどうか、お店とその周りの生態系の質が影響するのかもしれません。

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↑テイクアウトのカプチーノ(ミルクはオーツ麦でヴィーガン仕様!)。感染予防でマイボトル使えなくなって使い捨て増えてるの、悩ましい...

都市のエネルギー消費を減らすシンプルな方法

最後になりますが、実は、世界全体の電気消費の半分以上、温室効果ガス排出の70%が都市に集中してたりします。外出禁止で移動が激減して、多くの仕事が自宅勤務に切り替わったことで、エネルギーの消費量が下がりました。ベルギーでは外出禁止後、平均で16%、ピーク時には25%も電気の消費が減少したそう。大きな投資をしなくても、自宅勤務を取り入れること、サステナブルな手段で移動すること、ローカルに生活すること、これらシンプルな方法で、エネルギーの消費を減らせることが実証されました。

そもそも、ヨーロッパの都市ではサステナブルなエネルギーへの転換が進められていて、建物の効率を高めて消費の必要性自体を減らすことや、普段捨てているエネルギー源(冷蔵施設やデータセンターから出る熱)を回収して暖房として使う仕組みの開発などが進められています。英語ではSustainable Energy Transitionと称されてます。都市デザインがどのようにエネルギー転換に貢献できるかが、私の修論テーマです。これについてはまた今後書きたいと思います。

アフターコロナでも、以前の生活に100%戻るのではなくて、良い変化は続けたい。皆さんが気づいた変化、続いたらいいと思うポジティブなことは何ですか?

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↑4月下旬のブリュッセルではこの素敵なお花が満開です。



私の発信が、何かの役に立てたら嬉しいな。「心の声に耳を傾け、自然体で生きていく。」よりナチュラルで自分らしい暮らしに興味のある方に、今後も日々発見したことを共有していきたいと思います!