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フィンランドに住んでみる理由

フィンランドへは、日本ではなく、その前に住んでいたパリからのエントリーです。家族はパリにいます。かつて、パリへコマを進めたのは入りたい学校があったから。でもパリに住みたいと思ったことはないし、あこがれもありませんでした。そもそも「二度と来るものか」と誓ったくらいです。

フィンランドへ住もうと思った時も「憧れ」はありませんでした。何年も旅をしホテル住まいとコンサート参戦を重ねた結果、「もっと知りたい。私の想像したことを確認したい」と思ったのです。

パリは首都であり大都市です。東京に住むこともなかった私がいきなり、パリ住まい。多くの人はパリやフランスへのあこがれがあるようですが、まったくなく、むしろ絶望からの出発。ただ、住み始めてから、アールヌーボーなど、適度に古いものに惹かれることや、経験することが面白いということがわかってきた次第です。パリにもいいところがあるじゃない、というよりは、ここでも「私が」興味を持てることもあるんだな、ということでした。つまり自己中心です。

気軽に女性に声をかける男どもの多いパリでは人との出会いは時にスリリングです。でも慣れてくると「軽いコンタクト」も悪くない、と、自分から話し掛けるようになるなど、人との接し方が少しずつ変わっていきました。ミュージシャンという立場もあったかもしれません。「あれ、どこかで会ったような気がしますけど・・・」と話しかけるのは、一歩間違うとナンパ。全くそんな気はなかったのですが・・・気軽に話しかけられるようになるまでには時間はかかりましたが、結局は「私は大阪のおばちゃんタイプだったようだ」と思います。そして、大都市ならではのかつての日本人の友人に再会する、という不思議なことも可能でした。

フィンランドへはライブを聞きに通い始めました。かつて日本でレッスンを受けるために名古屋から横浜へ日帰りをしていたことがあります。レッスンは一時間ですが、横浜についてからの地下鉄とバスに時間がかかったものです。でも、そういうことが平気でした。フィンランド往復はさすがに日帰りはできませんが・・・フィンランドでのライブツアー追跡は、自力で行ける範囲、つまり、電車で行ける範囲に限られます。ありがたいことに、グーグルマップの使い方も理解でき、国鉄チケットの購入方法もわかってきました。チケット購入、ホテル予約、すべてインターネットでできるのが、素晴らしいと思いました。

フィンランド人と、フランス人もしくはパリジャン、ミュージシャン仲間のコミュニケーションには、なんとなく違いを感じました。フィンランドのコンサートでは30分以上も前から人が集まっておしゃべりしていること。トイレではずらりと長い列ができること。何よりも、女性がおしゃれであること。マリメッコのワンピースがも国民的制服なんだろうか、と思うほど目に入ること。貴重品しか持たずに会場に入(れ)ること。ホールは寒いこと。冬のコートは、当たり前のようにクロークに有料で預ける事。(タンペレホールは、預けないと嫌がられます)静からしいと聞いていたフィンランド人が、コンサート会場ではけっこう盛り上がること、客同士でもにぎやかなこと・・・なんだか、想像していたのと違いました。

コンサートを聞きに行ったグループには、最初からパリから行くことを伝えて置いたら、まさかの返事がありました。あるとき、演奏者が、ファン仲間につながりを作ってくれました。彼自身とグループが雑誌の取材を受け、その際にファンとしてインタビューを受け入れてくれるか、と公演に招待してくれたのです。それまでひとりぼっちでいましたが、ここから風向きが変わったように思います。ファン同士の交流といっても、当時の私の英語はさび付いていました。だから非常に亀速度です。それでもSNSで連絡が取れる程度にはなっていきました。ライブで出会うと、つい私の方から、うれしさのあまりにハグしてしまうこともあります。でも、相手はそこまで勢いよくなく、「これがフィンランドの人のシャイってやつかな」と思いました。あるいは、私の勢いが過ぎるのだな、と思いました。でも、ファンは、ライブ中にはノリノリなのです。そしてライブの外で出会うときは、やっぱり地味、というか静かなのでした。

それでも私は、一緒に席を買ったり、とってもらうことはありません。常に自分で席を買い、マイペースでコンサートへ行きます。他の皆も、特に計画して一緒に行くことはめったにないようです。「ファン仲間に会えるかな」という楽しみと、スリル。ただし、立ち見のライブの場合は、みんな舞台の一番前に陣取っているので、あとから行って混ぜてもらいます。なにせ背が高い人がそこにいると、何も見えないので。

ファン仲間との一人ずつとの交流は、ゆっくりゆっくりやってきました。私は観察者で長い年月を過ごしました。大学でフィンランド文化に触れ、そういう物なのか、と思ったり、そうかなあ?実際はどうなんだろう?と思ったこともあります。日本と共通しそうな文化を見つける一方、同じヨーロッパ所属のフランスとは、言語を含めて、まるで水と油のような気がしました。フィンランドとフランスの「常識」もしくは「習慣」は違いすぎると思いました。正反対に思えるようなこともあります。

日本とフィンランドにも共通していることを見出せますが、人間のありかたとしては、相当違いがあるような気がしています。「それが、いったいどこから来るのか?」本当のフィンランド人達ってどんな風なのか?それを知りたくて住みたくなりました。無意識ながら、常にそこに注目している気がするのです。コンサート会場も楽しいけれど、どこにいても「普段着」が気になるのは、私自身が常にすっぴんだからでしょうか。

受験に至るまでは、いろいろあって、一度はうっかり申し込みを忘れていました。年齢制限がないこの国の受験はそれなりに規定がありますが、申し込めただけでもホッとしました。寒いこともときに暑いことも、夏にはうるさいこともわかっています。旅と住むことは違う、ということもわかっています。しかしまさかコロナに突入するとは。普通に旅行していたのに、飛行機が飛ばないなんて・・・これは、いくら何でも思ってもみませんでした。

(写真はパリで撮影)


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