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よろこぶカルチャーショック。病院の話。

先週末はだるくて、一日うちにいて悶々としていた。熱っぽい、と思う。温度計を持っていないのだけれど、体でなんとなくそうだ、と思った。夜になるとそこそこいい感じになって普通運行に近づくが、このご時世、熱さがりました、といっていきなり登校はできない。行くぞ、検査。と決心し、公立病院のサイトを何ページもめくりながら、じたばたして予約を取った。

フィンランドは何につけても説明が多い、質問が多い、ということに同感してくれる人はいるだろうか。

そういえば公立病院まで行かずとも、歩いて5分くらいのところでも検査できるドライブスルーがあるのだが、私立システムなのかめちゃくちゃ高い。・・・そういえば公立での検査にいくらかかるのか、尋ねるの忘れてた。(という私は外人にしちゃ暢気である、たぶん)

カルチャー「ショック」というが、ショックとはもともと衝撃の意味であって、得に「否定的な」意味はないはずだ。日本で言われるカルチャーショックは、ネガティブな気持ちを含む印象を受ける。確かにびっくりすることはあるが、今まで住んでいたところと「違って」いて、何かいけないのだろうか?

カルチャー「ショック」があるとしても、ここフィンランドにいると、私にとっては、たいてい、「嬉しい衝撃」である。ネガティブショックだったのは、マリメッコ製品を買ったらメイドイン○○だったことくらい。(色あせがあまりにはげしく、驚いたのだ。そりゃあないよ、と少し思った。)病院に関しては今のところ、「えっ!?えー??」と思うこともあるが、いまのところ、うれしいことの方が多い。

病院に電話しても電話に誰も出ないときは留守電だ。「ヨノ」という単語が聞こえる。「順番待ちの列」の意味、つまり電話がかかる順番待ちということである。以前住んでいたところだと、なんどでもかけなおすしかなく「運が良ければ」つながる、という程度。10回かけてもつながらなかったりする。これがフィンランドだと、かけなおさなくても「折り返し電話を希望する場合は1を押してください」という、夢のようなことをおっしゃって下さる。折り返しの電話がすぐ来るとは限らないので待つのにちょっとじりじりしてしまって再度かけなおしてしまったが、無事に電話がかかってきて、話を通すことができた。こちらからかけるときは覚悟ができてからかけるのだが、先方からかかってくると、ビビるのである。

ここでは外人に慣れているのか、受付の方も丁寧な対応をしてくださる、と私は感じている。「?」(えっ?わからん)と思って「ミタ?」(なんでしょうか?)と言い返すと、繰り返してくれる。必要な時には、すぐに英語に切り替えてくださる。予約時間を笹っと言われてまごつき、こちらから確認しなおすときも、何度も付き合ってくださる。そんな会話の合間あいまに挟まるのは「サイレンス」である。しずかーなのだ。

以前住んでいたところでは、やっと電話がつながっても、他の人と話しながらなのか、誰に話しているのか「混線」することもあった。相手が出ても、周囲のおしゃべりが騒々しい。もっとも実際に出向いて受付で予約を取ろうとしても、常に受付の人の顔はあっちこっち向いていて、目の前にいながらも、いったい誰にむかって話しているのかわからない。それがデフォである、と思っていた方が、気を揉まずに済む。

もちろん言葉の問題もある。フィンランドでは、外国籍の方も看護の勉強ができる仕組みがあるようで、積極的に勉強され、職についているように思う。入学した最初は英語であっても、おそらく皆さんフィンランド語を学ばれるのだろう、病院勤めの方は、フィンランド語を操られている。さらに医療関係の方は、おちついて話してくださるのだ。

ちなみに街中の店、特に携帯の店では、「標準語を話さないのがデフォなのだろうか」と思うくらい「話し言葉」が強い。だから負けが多い。「よくわからないので考えます」と帰ることになる。うっかりサインしないために。

前いた国は、標準語が基本で、書き言葉は間違いを除いて同じになるというのが前提。ただ、地方や出身地によって、音がなまる傾向があり、癖のある人は、それなりに強い。正直、「ちゃんと発音してくれませんかわかりませんので」と思うことも、ある。相手は現地の人である。仕事によっては、なまりや適当な単語使いもあるので、ギャグのネタになっている。難しい医学用語を子供向けに優しく言う類のことなので、大人相手には限度があるでしょう、と言われそうなものである。が、これが、あまりにもありそうで、笑えないレベルなのだ。それに標準語の人だってそもそも話を聞いていない。

フィンランドではそういうことはないし、そもそも医学用語は専門用語なんだから、もう少しわかりやすく説明してください、と言ったら、してもらえると想像する。

フィンランドでは、若い店員さんと話が通じないというこはある。でも、公的なところへ電話をかけるときであれば、きちんと対応してくれてちゃんと言葉の勉強になるのでありがたい。電話の向こうで誰かとおしゃべりしながらいらいらするのが聞こえてくる前の国とは、全く違う。日本も相手によっては怖そうだ。

個人番号の使い方とは

個人番号があれば、病院に電話するとこちらが誰だかすぐわかるのもフィンランドだ。病院で薬を出された時は「薬局に行って」とだけ伝えられた。処方箋も持たされないのかと不思議だった。街中の薬局で個人番号を伝えれば、情報はすべてオンラインにまとめられているので、薬局側が処方箋を探し、薬をくれる。個人的もサイトに登録すれば、自分でも、通院や薬の情報も過去も、わかる。これはもう私には、感激でしかない。楽!さらに診療費も、あとから請求書がメッセージに送られてくるので、自分の銀行の口座から病院の口座へ振り込めばよい。体がつらくて病院へ行くのに、そのあとだらだらと待つ必要がない。

病院ついでにかいておくと、無料であれこれ借しだしていることも非常に素晴らしいと思っている。例えばギプス。例えば、杖。車いすもありだろう。老人達が医療用キャリーみたいなものを押して歩いておられるのを街中でよく見るのだが、これだって、借りられる。(日本の事情は知らないが、前いたところは、杖やらギブスは割引ありとしても、購入が必要があった。)コロナ・アイカの間は、建物の外に箱があり、ノートに名前を書いて、誰にも会わずに借りた道具を返却できるようになっていた。

・・・それにしても、私は一年ほどの滞在で、何度医者にお世話になっていることか。それに、どこにいても、医療関係で言語を学んでいる気がする。単語は覚えないが、読む物がたくさんあるので(薬の説明書だけど)文法の仕組みを学ぶのには役にたつ。…楽しいものではないが。

名前ショック

フィンランドの病院で名前を呼ばれるときはミセスとか、「さん」にあたるものが全く抜きだ。よほどの年配の方ならヘラHerra(ミスター)とかロウヴァRouva(マダム)とかつけられていた気もする。)(あるいはレギュラー患者かもしれない)私はいきなり苗字をよびすてにされた。私の苗字は短い。びっくりした。が、これがここでは普通なのだ。日本語では「さん付け」だから、英語のミス、ミセス、ミスターも普通に覚えてしまうが、これをつけないのがフィンランドの普通なのである。

さらに、英語には誰が相手だろうと第二人称がYouしかないが、フィンランド語には二通りある。それはYouとして普通に使う「シナ」sinäと、相手が複数の場合の「テ」TEである。この「テ」を目上の人にも使うことができる。ヨーロッパ言語によくあるパターンかもしれない。以前いたところでも、目上用のYouがあった。初めて会う人用=知らない人、あまり親しくない人との会話用に使うのがすっかり慣習となっていた。

日本人の感覚だと、お店の人にはTEを使うのがよさげ、という感じだが、フィンランドでは、店員さんに対しても、私は一生懸命「ふつうのユー」たるシナを使おうと努力してきた。相手が医者であっても、先生であっても、シナでよいからだ。

ところが、私は、お医者様から、テで呼ばれた。たしかに私より若いお医者さんだったけど、これがショックっちゃあショックだろうか。年上、目上の人には使うことだものなあ、と思いつつ、年、と言われたような気さえして、どきどきした。年寄り扱いするな、と思う気持ちをネガティブだとしたらネガティブショックだけれど、その気持ちの持ち主は、私自身であるから、あら、マダムってよばれちゃった、という程度に思っておくほうがよさそうだ。そのかわり、知り合いのフィンランド人も店でTEを使われてショックだった、と言ってたことを思い出していた。おそらく首都部ヘルシンキでの出来事かもしれない。外国人と出会い、文化が混ざることのひとつだろうか。

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