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「シリマーの秘密」1-1.パウリーヌ・テルヴォ作、戸田昭子 訳

ロボットチャイルド①

人間は、ゆりかごから墓場まで、誰かの子どもである。この定義に、年齢は無関係だ。といっても子供時代はまた別の話。私はもう、あっさりと、その時代を放置できる。もう、十分に味わった。もし子供時代についてどんな言葉を最初に思いうかべるかと尋ねられたら、AHDISTUS 苦痛、と言うだろう。


私の子供時代は守られておらず、そのため周囲の世界のことがわからなかった。私は今、12歳。もう子供ではないが、充分に大人とも言えない。同級生よりは、倍以上生きてきた気がする。人生には途方もなく学ぶことがある。とりまく世界は、わけがわからない。


私の名前は、シリ。私は友達がほしい。お金がかからない一番いい方法は、書くこと。
「君に文通相手をみつけよう」と父は言う。
父は歴史家で、石器時代を生きている。


でも、いいアイデアだ。文通仲間として、あなたに書こう。私たちはいつか出会って、本当に友達になるかもしれない。


まず、隠さず書いておく。私の社会性は特別で、本から学んだものだ。他の人が自動的にやれることを、私は義務として、苦痛を感じつつ行っている。手本は本とテレビドラマ。私はうまくいく戦略を上達させ、時々にすれ違う人々を、はったりでだましてきた。ただし、一番近いところにいる人との人間関係は、もっと複雑だ。


私は自分の防護壁が崩壊する、人間の典型的な型に従うことを学ぶ。その時私は普通であり、私自身だ。私はロボットチャイルド。自分が敬遠されているのは理解している。ロボットの振る舞いが最大限人間に近いものであれば、人はロボットに対して共感する。もしロボットの行動が人間らしさから遠いものであれば、拒絶反応を起こす。私は、まさしくそんな風に対応する。

殻にとじこもるか、怒りを爆発させるか、あなたはどちらがいいと思う?

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戦略がうまくいかないとき、私にはこのふたつの選択肢がある。
怒りを爆発させる前に、さっと殻の中に閉じこもろうとする。
いずれにしろ、怒りは爆発する。

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訳者より
フィンランドは、今、午後。今日は短めにアップします。日本とは6時間時差があります。できるだけ定期的に週末の午後にアップしたいと思っています。

イラスト Mari Luoma マリ・ルオマ

今日は、これにて。
文章の無断引用は禁止です。

第一章の続きはこちらからどうぞ。ロボットチャイルド② 


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