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考えるためにまず作る、プロトタイプのプロトタイプ

武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科 クリエイティブリーダシップコース クリエイティブリーダシップ特論の授業の第5回(5月10日)レポートをまとめました。

今回は、softdevice社の代表取締役 八田晃さんにご講演いただきました。

softdevice社の特徴

ヒューマンインタフェース = 人のふるまいのデザインと位置付ける事でソフトウェアとハードウェア、サービスとプロダクトの区別なく一体的に提案できることが強みです。また、この分野の黎明期から培った経験と独自の手法によって、ヴィジョン策定時や要件定義前の段階での先行デザイン、プロトタイピングを得意とされています。

softdevice社のデザインプロセスでの最大の特徴は「Sketch」です。検討のかなり早い段階からスケッチを描くようにラフなプロトタイピングをおこないブラッシュアップを重ねます。常にユーザーが得る体験に近いかたちでプロセスを進めることで提案のクオリティを大きく引き上げます。その検討の幅を広げ、また共有するための場として、LAB.を併設しています。

おもな活動

会社のMission:Predicting the Future by Making
アラン・ケイの言葉「未来を予測する最善の方法は、それを発明することだ」をもとに作られたMissionです。スケッチによるラフなプロトタイピングや検討段階での早い段階で物を作ることを通じてプロダクト作りを推進していかれています。

プロダクトのデザイン事務所としてスタートされ、iモードのデザインから、最近は黒もの・白物家電のデザイン、車・医療機器のデザインまで幅広く手掛けていらっしゃいます。

Hardware Sketch
最低限の機能を実装したものを見た目無視で作り、とにかく動くものをすぐに作ってプロトタイピングのプロトタイピングを行います。

Projection Modeling
プロジェクターで投影しながら施策品を体感できるようにします。部屋の一角、車などの空間にプロジェクターで映像を投影してプロダクト完成イメージを再現します。疑似空間でプロトタイプができるようになります。

Lab@ソフトデザイン
プロトタイプのための環境としてラボを作られました。3Dプリンターでの試作を行うのみでなく、プロジェクターを使ったProjection Modelingの環境を整え、プロトタイプがしやすい環境を構築しています。

Labを使う体験的な開発を大切にしていたが、強制的にオンライン環境に
体験的なプロトタイピングを強みとしていたが、昨今の状況下で直接クライアントが来る事が難しくなったため、プロトタイピングをなるべく「体感」していただくためにライブ配信用の機材を準備しました。
副次的な効果として、この事がきっかけでライブハウスのライブ配信をお手伝いするようにもなられました。

事例:パナソニックの未来の家
夢や想いをのせた「未来の家」の体感型の展示です。プロジェクタを利用し、映像の内容に合わせたイラストがテレビの周囲の壁にリアルタイムに描かれていく様子を投影されました。

プロトタイピングのプロトタイピング

softdevice社ではプロトタイピングのプロトタイピング、つまり最低限の機能を実装したものをとにかくすぐに作る事でプロダクトづくりを進めていきます。

紙ベースで捉えても実際に作ったイメージが分かりにくいプロダクトが多いので、上流の段階からモノをつくり始めるアプローチを取り始めたそうです。
ただし思い付きでプロトタイプを作ると、ラフに作れる反面捨てるアイデアも多くなり、紙のみで検討するよりも時間もかかります。このスピードやタイミングが経験が求められる部分となります。

アイデアの絞り方

アイデアの絞り方について、賛成意見も反対意見も両方出ているものを残しているという点が印象的です。今世の中に出ているサービスが多数決で決まっているわけではなく、誰かの強い意思によって決まった棘のあるものもあるといった背景をふまえたものです。ただし、だめなものはすぐに分かる感覚があるとの事で、これは紙で作るよりも実際に物を作ってみる事で分かるそうです。

感じたこと

武蔵美の授業の演習における、とりあえず作ってみるアプローチとの共通点を感じた。このアプローチについては最初は違和感があったが、実際にちょっと早いくらいの感覚でも作り始めた方が、早い段階で懸念や改善策が見えてきて早く解像度が上がり、具体での検討がしやすくなる。また「捨てるアイデア」もすぐに見えてくる。

作る分の時間はかかるので、捨てる判断のスピードや作り始めるタイミングの精度を上げていく事で、よりプロトタイプを通じてより理想に近いアイデアをスパイラルアップさせていけると感じた。



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