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柴犬のプールデビュー

もうすぐ夏が来る。
今年もきっとどこにも遠出しない夏だ。

こんな状況なので実家にもなかなか帰れていない。
今年はお墓参りできるだろうか。
姉は定期的に仕事で東京に来ているので会えているけど、両親の顔を2年近く見ていないなんて、人生で初めてのことかもしれない。

そういえば昨年の盆は親からテレビ電話がかかってたので、出てみると、家族の姿ではなく実家の仏壇が画面上に現れた。
そんなに今っぽいことしちゃう?と笑いながらも手を合わせた。
僕は宗教やスピリチュアル的なことにはあまり関心がない方だし、会ったことがない御先祖様の仏壇に手を合わせるという事が昔はあまり理解できていなかった。
でも一緒に暮らしていた祖父母が亡くなってからは、先祖にちゃんと手を合わすことが少なからず自分の健康や安定に繋がっている気がしている。

実家はもちろん、ほとんど何処にも出かけなかった昨年の夏。
唯一と言っていい「夏らしい思い出」がある。
それは犬用のプールに初めて愛犬を連れていったことだ。

予約制で入場制限もされているし、普段連れていっているドッグランもこの時期は暑いので、愛犬にとっても涼しくて楽しめる場所を、と思い連れていく事に。

お出かけが大好きな彼は、車に乗ると遊びに行けるんだと解るようで、いつも嬉しそうに車に飛び乗る。

彼にとってプールは初めてなのでゆっくりと慣らしながら、他のわんちゃんと遊んだりして長く楽しめたらいいなという期待を抱きつつ、
車の中で流したコテコテの夏用プレイリストと、自分自身の些細なお出かけでもあることに朝から心を踊らせながら、都内にあるドッグプール施設へ向かった。

プールに入る前にワクチンの証明書を見せてPASSを貰って、水慣らしと汚れを落とすためにシャワーを浴びせた。
彼は「いつものドッグランと工程が違う」事と、濡れることに若干の不満を見せたが、
柵の向こうではわんちゃん達が走り回ったり泳いだり楽しそうにしていて、それを見て分かりやすくテンションが高揚している。

このドッグプールはビーチのようになっていて手前から浅く、奥に行くほど深い。

最初は浅瀬の方から慣らしていこうかと思いながら、
「お友達と遊んでおいで」とリードを外した瞬間。


彼はプールに落ちた。


「ゆっくり慣らしていく」どころではない。
いきなり全身で水中に飛び込んでしまった。

本当に一瞬の出来事だったのだが事細かに説明すると、
リードを離した瞬間、全力で走り始め他のわんちゃん達も連鎖的にスイッチが入り、彼を全力で追いかけた。
(これはドッグランに入った時とまったく同じ光景だ)

走り出して僅か数秒後、プールサイドの奥でジャンプ。
おそらく彼のイメージでは「そのまま陸に着地し、追いかけっこが続く」はずだった。

がしかし、
彼はそのまま最も深い位置に水しぶきを上げながらプールに落ちた。

あまりに突然でパニックになってるのではないかと心配したが、気が付けば見事な犬かきをしてこっちに向かってくるではないか。
初めて泳ぐはずなのに背筋を伸ばし顔をつけずに上手に泳いでいる。

「ここまでおいで」と両手を広げて待っていたが、
その数メートル手前で足がつくと認識してその場で立ち上がり、彼はただ呆然としていた。

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どうやら驚きと恐怖で腰が抜けてしまい、フリーズし、まったく進まなくなった。

飼い主は基本的にプールに入ることを禁じられているが、
緊急時は入っていいことが許されているので、結局この後飼い主によって浅瀬から救出され、
プールデビューは敷地内に入ってから落ちるまでの5秒と
泳いで浅瀬に来て救出されるまでが3分という短い時間で終えた。

お散歩によく行くわんちゃんは爪が短い分、水に入ると爪がふやけやすいらしく、
せっかく来たので施設の周辺を抱っこしながらお散歩もした。
最後の方は腕が震えるほど重たかったが、満足気な顔をしてキョロキョロと風景を楽しんでいたので良しとしよう。

この日以降、散歩で水溜りを避けるようになる。
「ここはあんなに深くないよ」と話しても、あまり聞いてくれない感がある。

お風呂は渋々入ってくれているけど、シャワーをかけると「もういやだ」と助けを求めてくるようになった。洗ってるだけなんだけどね。
ごめんね。水を苦手にさせてしまったようだ。

君と朝や夕方の海沿いや砂浜を歩くっていう夢もあるんだけどな。
海水が来ない場所でもいいからさ。
また気が向いたら付き合ってよ。

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