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【29】自然のままの姿で生きること『ザリガニの鳴くところ』ディーリア・オーエンズ

翻訳された小説が得意ではない

日本語に違和感があると内容が頭に入ってこなくなる

翻訳ならではの独特のリズムがあると集中できなくなってしまう

名作と呼ばれる翻訳小説も途中で断念した苦い経験もある

勧められて読み始めた本書も序盤はリズムに乗れなかったがそれ以降は一気に読み進めた

舞台は20世紀のアメリカでノースカロライナ州の湿地で死体が発見されるところから始まる

ストーリーは2つの時間軸で進む

1つは事故死か他殺なのか保安官が事件を追うパート

もう1つは幼くして家族に捨てられ一人で生きていくことが強いられた「湿地の少女」の物語

偏見や好奇の目にさらされた少女は、学校に通うこともなく自然の中で生きていく

そんな少女に文字や勉強を教えてくれる人ができるが、その人の進学とともに再び一人で生きていくことになる

やがて冒頭の事件につながっていく

予想外の結末は、意外性を追求したというより、読者に考えさせることを狙ったように感じた

著者は野生動物学者で研究論文がネイチャー詩など専門誌にも多く掲載されているという

そのバックグラウンドが生々しい自然描写に色濃く出ている

また野生や本能というキーワードが物語の結末にも影響を与えているのだが、キーワードの背景に対する学術的な理解・考察が、結末への納得感や真実味を出しているように感じた

タイトルの「ザリガニの鳴くところ」は、「茂みの奥深く、生き物たちが自然のままの姿で生きてる場所」と表現されている

「自分らしく生きる」よりも根源的な「自然のままの姿で生きること」を考える

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