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白ワインができました

最近は例年になく雪が降りましたね。岡崎市街はちらつく程度な時でも、300mも高いところにある蔵の周りはどさどさ雪が積もっていました。洗濯場として使っている屋上は連日スケートリンクと化しており、そのリンクを越えた先に夜中麹の世話をするための宿直室があるので、状況が悪い日は麹室の前に布団を敷いて難を乗り越えていました。

今回は前回の記事で瓶詰めしていたお酒の貯蔵試験の様子を書いていきます。びっくりしました。

4×3種類の試験醸造

おさらいになりますが、昨年弊社の田んぼで育てた90%以上の精米歩合の夢山水という酒米の使用量を変えた3パターンと、地元のミネアサヒという飯米を使用した1パターンの試験醸造をおこないました。それぞれ年末付近に搾ってお酒になり、瓶詰めしました。前回の記事ではここまで。

〜瓶火入れ作業〜

さらに火入れをするタイミングをずらして、それぞれのパターンにつき3種類用意してみました。従って最終的に12種類のお酒を造ってみました。
(火入れ:お酒にするために頑張って働いてくれた酵母や酵素の活動を停止させるためにお酒の熱を加えること。これをすることで味の大幅な変化を防ぐことができる)

貯蔵試験

〜試験醸造酒の数々〜

火入れをしたお酒は、求める酒質にもよりますが、大体半年間は熟成させてから出荷することが多いです。しかし造ったお酒がどんな味になるのか気になって仕方ない、早く知りたくてうずうずして寝付けない、半年経つ前にお米も作らなければいけない、と困ったことばかりです。そんな時はあったかい所に置いてさっさと熟成してもらいます。今回は30℃で2週間置いておきました(この味が本来の熟成後のものと一緒になることは無いのですが、おおよその傾向は掴むことが出来ると思っています)。

試験醸造酒の出来栄え

12種類のうち2つから、何やら変わった香りがするものがありました。

…白ワイン?

いやほんとにもうビックリしました。まさかお米で造った、ワイン酵母も使っていないお酒からこんな香りが出るとは思いもよりませんでした。嗅いでも白ワイン、呑んでも白ワイン。日本酒の表現力の奥深さを感じました。
ちなみにこのお酒のすごい所はこれだけで終わらなかった点です。この白ワインが感じられる温度帯は30℃ほどだったのですが、温度を上げていくと表情がコロコロ変わる、これまで私が呑んできたどのお酒よりも多面性を持ったお酒でした。
悪い点を挙げるとするなら、低めの温度帯だと90%以上の精米歩合のお米使っているため苦さや渋さが気になってしまうことです。些細なことですが。

皆さんはいつ呑めるのか

ここまで色々な記事を読んで応援していただいた方には申し訳ないのですが、製造量が非常に少ない試験醸造でしたので、今年は販売できるほどの量はごさいません。こんなに上手くいくなんて思っていませんでしたので。…ごめんなさい。
ですのでまた来年造ったものを皆さまに届けれる段階に持っていくよう努めてまいりますので、是非ご期待ください。

ちょっと専門的な考察(関係者向け)

よくよく呑んで自分なりに考察してみたところ、香りの種類と量がとても多いことが多面性に繋がっていると思いました。今回取り入れた手法である生酛と三日麹から乳系と草様の香りが加わり、何より香りの成分が良く出るとされる低温度での強い発酵を可能にしたミネラル供給源としての自社米の役割は大きかったと言えます。また一般的に雑味の大きな原因になると考えられていた低精米のお米を使っていても、アミノ酸値が低めのお酒になりました。醪へのお米からのタンパク質の持ち込み量は間違いなく多いので、おそらくアミノ酸レベルまで分解されずにペプチドとして残った、つまりプロテアーゼ系の酵素が少ない綺麗な麹にすることができたという可能性が考えられます。このおかげで温度を上げると酸と相まって味わいに伸びやかさが生まれたのでしょう。


終わり。


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