2021年田植えまで Part1
醪を最後に上槽したのはたしか4月末。なのにまだ蔵の掃除や片付けが終わっていない今日この頃(去年はゴールデンウィーク過ぎには終わってた気が‥)。田んぼがあるだけでこんなにも違うとはとかいろいろ考えていると、なんと梅雨に入ってしまったようで。早いですねぇ。
過去の話になりますが、今回は前回お伝え出来なかった田植えまでの取り組みの様子なんかを紹介します。長いので二部構成になります。改善点等ご指摘がありましたら是非よろしくお願いします。
育てるお米について
前回の記事で弊社の田んぼは生き物を大切にするよといったことを書きましたが、現時点でお米の品種に関する縛りは特にありません。とはいえ最終的においしいお酒を届けなければ感動もへったくれもありませんので、今年は弊社が得意とする愛知県産の中山間地向けの酒米である夢山水という品種を育てます。現産地よりもここは標高が200~300m低いので、JAの方でもどうなるか、どういう問題が出てくるかわからないそうです。また、有機栽培したお米はお酒にすると溶けやすい傾向があるそうなので、ふくらみ豊かなお酒になるのかなと思っています。とにかく無事にお米の収穫を迎えられるかどうか、内心どきどきしておりますが大切に育てていきたいと思います。
写真は田植え直前の夢山水の苗。2.5葉期まで育っています。今年の育苗は手が回らず農家の方に依頼しました。そのため今年は育苗時にいもち病という稲の病気対策の農薬が使われていることを報告させていただきます。なので今年は良くても減農薬農法という枠組みでの稲作になります。これでも良いと考えた理由としては、圃場では一切農薬を使わなければ、里山の生物への影響はまずないだろうと考えているからです。
土壌分析と施肥
稲作一年目ということで、とにもかくにも田んぼを一から理解することから始めなければと思い、2つの圃場の土壌分析を依頼しました。
なにやら色々な数値が出てきました。どうやら「2.分析値と改良目標値」の中に各分析値が入っていれば水稲栽培では良いとされているみたいです。値を見るとケイ酸やリン酸が少なめであったり、逆に加里がぶっ飛んで多かったりしているようです。一方で稲の有機栽培に関するとある本では、この加里の値でも少なめといっている方もいます。有機と化成農法で肥効率等に違いがあるのは当然でしょうし、農法についても様々なのでしょう。就農1年目の私には情報を取捨選択できるほどの経験や知識がないので、今年はとりあえず上記の「3.肥料名と施用量」に従って基肥(田植え前に撒く肥料)を入れることにしました。ちなみに今年は窒素の分析をしなかったので、基肥の窒素の項目は標準の5.0kg/10aとなっております。お願いすればよかった。
とはいえ田んぼ生態系を重んじる方針の田んぼに撒かれる肥料は有機質肥料に限定されます。農業資材に売られている色々な肥料の成分分析値とにらめっこして肥料配合を考え、お財布事情と相談しながら選びました。今回投入したのは菜種油粕、骨粉、発酵鶏ふんと有機ケイ酸肥料です。鶏ふん以外の肥料は結構いいお値段がしたので、鶏ふんで少々嵩を増やしました。そのため少々加里も入っていますが、そこまで多くないので大丈夫でしょう。
あとこの土壌少々酸性に偏っています。これは長年の化成栽培による影響が蓄積したものかもしれません。稲の養分吸収を良くするために、今年の収穫が終わったら土壌改良に着手したいですね。
田植え二月前~田植え2週間前
ちなみにこの時期はまだまだお酒造りの真っ最中で、土壌中にいる枯草菌やらを蔵に持ち込まないよう気を付けないと麹が醪が大変なことになります。今年は大丈夫でしたのでほっとしておりますが、田んぼとお酒造りが重なる時期は気が気じゃないです。
3月頭に一部畔が低いところがあったので、田んぼ経験者の方に教わりながら畔塗りをしました(手作業で。今どきは機械なんですが)。この作業鍬使いに結構コツがいります。私がやると歪んだりするのですが、経験者の方はそれはもう真っすぐに、そしてつやつやにきっちり形が決まります。写真右側3分の1が私で、残り3分の2が経験者の方です。輝きが違いますね。この作業をきっちりやらないと、どこかしらから漏水して水位を保てなくなります。
3月下旬に肥料を撒き、トラクターで荒起こし(肥料や土壌表面の有機物を混ぜ込む、土を砕いて団粒化するため)と代掻き(均平作業)を行いました。田植えの一月前に行った理由は、使う肥料が有機質のため植物が利用できる形まで微生物に分解してもらうのに時間がかかること、もう一つは抑草対策のためです。有機栽培の最大の敵は水田内にはびこる雑草です。この雑草、放置すると稲が吸収するはずの栄養を取ってしまったり、稲が好きな害虫を呼び込む原因となってしまいます。おそらく雑草を放置したほうが生物多様性に貢献すると思いますが、周囲の他の田んぼに害虫が移動したりするなど迷惑がかかることや、質の良いお酒を造ることができないことは永続的な水田管理ができないことに繋がりかねないので、駆除する方針です。そこでこの雑草を少しでも減らすことを考えて、ここから一月で雑草種子を芽吹かせ、もう一回代掻きすることで芽吹いた雑草を浮かせて駆除しようという方法をとってみました。
結果は気温がまだ低かったせいか芽吹く雑草種子はそれほど多くなかったです。雑草対策にはあまり良い効果が得られなかった一方で、水を張ることでいろいろな生物がやってくるようになりました。
たとえばこちら、マルタニシ。いままで土の中で眠っていたのかな。
こちらはコオイムイ。名前の通り卵を背負って子育て中。背負っているということは、そう雄です。子育ては男の仕事です。
みんな大好きアマガエル。迷彩柄。
今回はここまで。
次回、「油断と対策」につづく…