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「竹地区の棚田」に映る入道雲が夏を知らせてくれた。【東峰村】

ずっと気になっていた「小石原」。

読み方もままならない小石原(”こいしわら”と読むらしい)に、小石原焼きを目的に訪れた。

道の駅、カフェ、小石原焼伝統産業会館と堪能した後、同じ東峰村にある「竹地区の棚田」を観に行くことにした。

小石原の道の駅から約20分。

棚田と聞くと、小さく細い山道を行かなければならないイメージがあったが、この「竹地区の棚田」の場合、その心配は取り越し苦労だった。

中央線のある道を進んで行き、棚田の直前になると、中央線こそ無くなったが、新しく造られたことが誰の目にもあきらかな濃い色をした道が現れた。

優に車2台は通ることのできる道で、なんの心配もなく、展望台の駐車場にたどり着いた。

看板に書かれた「日本の棚田百景」の文字。この言葉には弱い。

「日本の滝百選」、「日本の渚百選」などの「日本の○○百景」。どれかひとつでもコンプリートしてみたいものだ。

展望台へと登ると、期待通りの景色が目の前に広がる。

曇っていて残念だと思っていたが、晴れ間が見えてきた。棚田に光が当たる。光に照らされ、田んぼの水がキラキラと光る。

見えている景色が期待以上のものへと変わっていく。

鳥の声が聞こえ、やわらかい風が吹く。時間が止まったみたいだ。

田んぼの景色が落ち着くのは小さい頃の記憶と紐づくからだろうか。とくに何かあるわけではないが、なんとなく落ち着く。

時折、雲がかかり、また晴れる。その度に棚田が光る。光が当たると、田んぼの中に、空が、雲が、山が見える。

季節は夏の少し前。

まだ未熟な、小さな入道雲が水面に映る。これから夏になるのだと、これから暑くなるのだと、教えてくれているよう。

石積みの棚田は、まるでお城の石垣。お城の技術を使って造られているのか、それとも棚田の技術を使ってお城が造られているのか。

何の根拠も無いが、どこかで繋がっているのだろうと感じる。

奥の方、急な斜面にはいくつもの棚田が連なり、展望台からは石積みだけが見えている。そこから生き生きとした緑の稲が伸び、絨毯のようにも見える。

この棚田を造ってきた先人たちの努力と情熱、そして技術に驚かされる。

このように先人たちから受け継がれてきた伝統や技術は、日本中に数多くあるのではないだろうか。

令和の時代まで続いてきたものもあれば、当然人知れず無くなってきたものもあるのだろう。

長い長い歴史の中で培われてきたものでも崩れるのは一瞬なのかもしれない。

この景色を、伝統を、歴史を、技術を無くさないようにする為に自分には何ができるのだろうか、と考えながらこの場所を後にした。

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