エリック・バーカー 『残酷すぎる成功法則』

★★★☆☆

 アメリカで人気のブロガーが執筆した本作。監訳は橘玲です。
 何事もエビデンス・ベースで語る点が共通していますね。原題は『Barking up the wrong tree(間違った木に吠える)』。
英語の本のタイトルというのは、そのまま訳しても邦題になりづらいものが多い気がします、実に。

 タイトルに『成功法則』とありますが、いわゆるマニュアル本とは少しちがいます。様々な成功の秘訣を、成功者の単なる経験則ではなく、科学的な根拠に基づいて検証しているという内容です。

 僕は自己啓発本というのをほとんど読んだことがないので(興味があって読んだ本が自己啓発本に属している可能性はありますけど)、一般的にきちんと根拠が示されているものなのかわかりませんが、その点に関して本書はしっかりしています。受け入れる/受け入れないは別にして、提示される理論はある程度理に適っている印象です。
 内容は平易でわかりやすく、細かく区切られているので、空いた時間に少しずつ読みやすい構成になっています。

 成功するためにはどうしたらいいのか?

 これはある種答えの出ない問いです。というのも、なにをもって成功とするのかは各人によって異なるし、実践する人の能力や資質も千差万別だからです。変数(主観)が多すぎて、法則化するのはほとんど不可能でしょう。
 そのような隘路に陥りがちな「成功」というものを、あくまで客観的に捉えようと試みたのが本作です。その試みはある程度成功していると思います。

 ポイントは、成功というものを極めてプラクティカルに分析していることでしょう。フローチャート的といってもいいかもしれません。
 たとえば、好きなことがある/ないという問いを立て、好きなことがある場合には、その分野でどうしたら成功できるかを考える、ない場合には好きなもの(向いているもの)がどうすれば見つかりやすいかと考える。
 そういった具合に、一つひとつ丁寧に問題を解決していくアプローチがなされています(つまり、極めて合理的)。その際の方法論は徹底してエビデンス・ベースドです。

 きちんとした根拠が示されているので、その多くは納得のいく話でした。

 では、本作を読んだ僕が成功者になれるのかというと、それは難しいだろうなと思います。
 というのも、どれだけしっかりとした根拠があろうとも、それを実践するか(できるか)はまた別問題なんですよね。
 たとえば、一万時間かければプロになれるという話をよく耳にしますけど、それが本当だとしても、ある対象に一万時間を費やせるかどうかは別ですよね? そういうことです。

 結局のところ、成功するかしないかは、方法よりも実践するかしないかにかかってるのではないかと思います。
 理に適ったやり方をした方がいいのは当然ですけど、そういった細かなことをものともしない情熱で突き進む方が結果が出る気がします。(科学的に)まちがったやり方をしていたとしても、やりきって成功している人はたくさんいるわけですから。

 そんなわけで、もし確実に成功する法則を一つあげるとしたら、成功するまでやり続けること。それにつきる気がします。
 ほとんど同語反復でしかないですけども。

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