Keith Gessen 『How did we come to know you?』

★★★★☆

 ロシア生まれアメリカ育ちのジャーナリスト、小説家、翻訳家であるキース・ゲッセンの短篇です。ニューヨーカー2018年4月16日号掲載。

 6歳のときに両親と兄と共にアメリカに移り住んだ主人公。30歳を過ぎた現在では、ニューヨークでロシア文学を研究しているのですが、就職も研究もうまくいっていません。そんな折、10歳違いの兄から連絡が入り、モスクワにいる90歳のおばあちゃんの面倒をみてほしいと頼まれます。初めは乗り気ではなかったのですが、ニューヨークにいても何の展望もないため、モスクワに帰ることにします。

 特に大きな事件があるわけではなく(祖母が転んでケガをするけれど大事には至らない)、アメリカとロシアでの生活の違いを実感したり、祖母とのなんだかちぐはぐなやりとりをしつつ、淡々と日々が過ぎていきます。そんな様子が平易な英語で書かれていて、非常に読みやすいです。

 どうということのない話なのですが、読み終えると、じんわりときます。おばあちゃんのキャラクターがなかなかよいんですよね。つかみどころがなく、ネガティヴなところがあるのですが憎めない人です。
 おばあさんといえば、カポーティの短篇『感謝祭の客』、『クリスマスの思い出』のミス・スックを思い出します。カラフルなおばあさんが出てくると、どうやら僕はやられてしまうようです。

 ちなみにタイトルを直訳すると、「私たちはどのようにしてあなた(たち)を知るようになったのか?」ですが、weとyouが誰を指すのかで捉え方が変わりますね。僕としては、特定の人物を指すというよりは、主人公たちの世代(we)が祖母たちの世代(you)を知る、というような気がします。またknowは知るというよりは知り合うというか距離が近づくといった感じでしょうか。最後のシーンがそのことを象徴していると思います。

 このままではタイトルになりにくいので、意訳したタイトルをつけた方がよいでしょうね。僕なら「再会」とか「帰郷」とかするでしょうか……ううむ、もっといいものがありそうです。

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