競技によりスポンサー企業の業種に違いがあるかを調べてみた(後編)
少し時間がかかりましたが、コロナによる自粛期間中から続けていた『スポンサーシップ』に関するリサーチが終わりましたので、後編をお届けします。前編ではスポーツビジネスの基礎的な部分から話しをスタートおりますので、スポーツビジネスに関しての情報が少ない方は是非そちらから読み始めて頂けるとわかり易いかと思っております。
今回はプロスポーツチーム48クラブ(プロ野球、J1、B1)のホームスタジアム・アリーナの広告看板に関してのリサーチになります。競技やクラブによって業種の違いや看板数の違いがあるのかという事が気になり、社内の他のメンバーと共に始めたリサーチとなります。独自調査になりますので、スポンサー数や業種の選択が正確でない部分もあるかと考えておりますが、一つの指標としてご認識頂き、関係者が今後の議論をしてく為の種になっていけばと願い記事を作成しました。
1.リーグ別のスポンサー業種別件数
<1クラブあたりのスタジアム・アリーナ平均広告看板数>
【プロ野球】 154.3件
【J.LEAGUE】 83.4件
【B.LEAGUE】 63.4件
こちらの数はスタジアム・アリーナのキャパシティにも比例しているかと思いますが、総数としてはこのような結果となりました。業種については次の項目で詳細を見ていきます。
2.スポンサー業種別件数
上記を見ていただくとわかるように、「プロ野球」は建設業・製造業において他リーグの約2倍となっています。この結果については「プロ野球」の規模感が大きく関わってくると考えており、ここで規模感と表現しているのは「動員数」と「親会社」です。製造業 604件のうち168件(27.8%)は食料品製造業です。スポーツにおいて食料品のプロモーションを考える場合はより消費者にアプローチできる(動員数の高い)スポーツを選びますし、親会社が食料品製造業という球団がいくつかあることもこの要因と捉えています。
一方で、情報通信業は「J.LEAGUE」と「B.LEAGUE」が「プロ野球」の約2倍の件数になっています。これは両リーグのパートナーである「DAZN」「ソフトバンク」「朝日新聞社」などの広告が全クラブにある影響があると考えています。また、両リーグは各地域の放送局・メディアの広告看板も多々見受けられ、それぞれのホームタウンで地域に根差した活動を続けていることがこの結果に繋がっていると感じています。
3.スポンサー業種別割合
スポンサーの業種を割合で見るとそこまで大きな差はありません。先ほど記載した通り、「プロ野球」は製造業の割合が高く、「J.LEAGUE」「B.LEAGUE」は情報通信業の割合が高いというのはありますが、他業種に関しては大きな偏りは無いと感じています。
4.スタジアム・アリーナの管理形態
リサーチをしていて気になったのが、各スタジアム・アリーナの広告看板数の違いです。各リーグの最大値と最小値は下記の通りですが、この数値には管理形態が大きく影響していると考え、管理形態をまとめてみました。こちらの情報もクラブとの関係性が明確に記載されていないスタジアム・アリーナもありますので、多少の誤差はあるかと想定しておりますので、その前提でご確認頂ければ幸いです。
<各リーグの広告看板数 最大値・最小値>
【プロ野球】 最大値:233件(福岡PayPayドーム)
最小値:55件(明治神宮球場)
【J.LEAGUE】 最大値:127件(Shonan BMW スタジアム平塚)
最小値:42件(味の素スタジアム)
【B.LEAGUE】 最大値:124件(富山市総合体育館)
最小値:24件(ハンナリーズアリーナ)
※目視で確認できないレベルの掲出物は含んでいません
5.管理形態別スポンサー広告看板件数
上記の数字の通り、管理形態がスポンサー広告看板へ与える影響は結果に表れています。クラブがスタジアム・アリーナを所有・管理していなくても媒体・商材開発を行うことはできますが、より効果的な媒体・商材を開発するためには施設・地域の協力は必須となります。そういった事を考えても、前編で記載したように各球団・クラブが施設を所有したり指定管理制度に名乗りを上げるのは当然の流れになります。
既に、沖縄・千葉などでのアリーナ建設が発表されていますが、野球・サッカーのスタジアムよりコンパクトで、多目的に利用できるアリーナ建設が着々と動いています。その波にアリーナスポーツのクラブがどう乗れるかが今後のクラブ収益を左右する大きなポイントになると考えています。
6.まとめ
リーグスポンサーは全クラブで広告看板が掲出される影響により多少の偏りはあるが、「競技によるスポンサー企業の業種」に大きな違いは無いという結論に至りました。また、広告看板数は球団・クラブにより大きな違いがあり、それはスタジアム・アリーナの管理者や形態によって大きな違いが見られます。プロスポーツビジネスにおいては定説ですが、クラブと施設の一体経営をどう実現させていけるかがスタジアム・アリーナの広告看板を増やす最大のポイントだと今回のリサーチ結果から感じています。
また、同時に各球団・クラブのユニフォームスポンサーについてもリサーチしており、そちらは競技による違いが多くあったので、その記事もそのうち公開させて頂きます。
最後まで読んで頂きましてありがとうございました。
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