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意外と知らないヨーロッパのリーグ考察~ロシア編~

「意外と知らないヨーロッパのリーグ考察」第4弾です。5大リーグ以外のヨーロッパのリーグについて、公開されているレポートを発見できたものについて、まとめていきます。

今回はロシア-Russian Premier Liga-編です。

PWC RussiaからRussian Premier Liga - A comprehensive study of the economics of Russian football season-2019/2020が発表されているので、内容を読み解いていきたいと思います。

レポートはこちらから見れます↓↓↓

レポートの概要

本レポートはPWC Russiaが2018-19シーズンのロシアプレミアリーグ(Russian Premier Liga)の様々な数値についてまとめたものです。ネットで検索してみると毎年分析資料を作成しているようですが、一番最新の物を考察します。

リーグ、クラブの財務数値から、スタジアム等のインフラの分析、観客動員等を網羅的に分析しているため、これを読めばロシアのプロサッカーの大体の規模がよくわかる資料になっています。

Russian Premier Ligaの概要

かつて本田圭佑選手がCSKAモスクワに2010年から2013年まで在籍していたことでも知られているリーグですが、現在は所属する日本人選手はいなくなってしまいました。(Wikipedia参照)

(追記)2020年7月9日にFC東京の橋本選手がロストフへ完全移籍しています。

かつてはソビエト連邦リーグといい、15の連邦構成共和国の強豪チームが名を連ね、FCスパルタク・モスクワ、FCディナモ・モスクワ、PFC CSKAモスクワの首都・モスクワ勢のチームや、FCディナモ・キエフ(ウクライナ)といったチームがヨーロッパのカップ戦などにも進出し、ナショナルチームとともに東欧諸国の雄といわれた。
しかしソ連が1991年に崩壊すると、それぞれの構成共和国のサッカーリーグも独立するようになり、ロシアにも国内サッカーリーグが誕生するようになる。2001年までは国内の最上位リーグを「トップリーグ」「トップディヴィジョン」(下表参照)と称していたが、2002年に現在の「プレミアリーグ」に名称を変更した。
リーグ戦は16チームによるホーム・アンド・アウェーの2回総当り方式で争われている。下位2チームは翌シーズンに1部リーグの上位2チームと自動昇降格し、13位・14位チームは2部リーグ4・3位チームと入れ替え戦を行う。
リーグ戦はヨーロッパで一般的な秋→春制ではなく、春→秋の暦年制(3月ないし4月ごろ開幕~10月ないしは11月ごろ閉幕)で争われていたが、2012年から他のヨーロッパ諸国と同じように秋→春制へと移行した。
また、天然芝が育ちにくい地域もあるため、人工芝を使用したスタジアムを本拠地としたクラブもいくつか存在する。

(Wikipediaより引用)

このYoutube動画にわかりやすく歴代優勝チームがまとめられています。ほとんどを首都モスクワ、もしくはモスクワ周辺のクラブが占めていることが読み取れます。

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外国人枠
ピッチ上にEU圏外の外国人選手は5人までとなっています。
(UEFAレポートP16を参照)

そのためEU圏選手の割合が高いリーグと言えます。16チームで平均27名を選手保持しているうち、EU圏外の外国人選手は平均8.7人です。選手平均年齢も26.7歳で、育成リーグといわれるベルギー(24.6歳)、オランダ(24.4歳)よりも年齢が高くなっています。
(Transfermarkt参照)

UEFAリーグランキング
こちらは2020年7月15日時点で7位となっており、ヨーロッパ内での地位は高いリーグです。(UEFAリーグランキング


Jリーグとの比較から見えてくるもの

今回もロシアのプロリーグの規模感をつかむためにJリーグと比較していきたいと思います。

ロシア   GDP:1.658兆USD 人口:1.445億人
日本    GDP:4.971兆USD 人口:1.265億人
(2018年 Google検索より)

ロシアの名目GDPランキングは2018年時点で、世界第12位。日本は3位。(参照)。人口規模も日本より2,000万人程多くなっており、経済規模、人口規模で見ても今まで比較してきたベルギー、ポルトガル、トルコと比べて最も日本の経済状況に近しい国という事ができます。

Russian Premier Liga
1部チーム数16チーム
2018-2019 総観客数4,036,196人 Ave.16,800人 
2018 クラブ合計総収入: 59.4 B RUB ≒ 891億円 (1 RUB/1.5円)
Jリーグ
1部チーム数18チーム
2019年 総観客数6,349,681人 Ave.20,751人 ※1
2018年 1部リーグ総収入856億円 ※2
(※1参照:J League PUB report 2019)
(※2参照:2018年度J1クラブ決算一覧)

ここからもわかる通り、総収入はほぼ同等で、観客動員はJリーグが4,000人平均ほど上回っています。また、両国とも移籍金収益は含んだ数値となっています。

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ロシアのクラブ収益の内訳を見てみると、最も大きい割合を占めるのがスポンサー収益で47.4%、Jリーグは同数値が44.8%であるので、最も大きな収益源が同じです。放映権収益はロシアで4.0%なのに対し、Jリーグは17.0%(Jリーグ配分金割合)であり、ロシアではUEFAの国際大会収益がJリーグにはない収益源になっていることで、ここで生じる差額を埋めていると読み取ることができます。それ以外の収益割合は両国とも同程度の割合です。

これらの数値を見ていくと、国の経済、人口規模から、リーグにおける財務規模や観客動員に至るまで、よく似たリーグであるとみることができます。

レポートから読めるリーグの特徴

1.メインスポンサーの業界地図
面白い情報だと思ったのは、メインスポンサー企業の所属する業界をグラフ化したものです。下記は2019-20シーズンの集計です。

1位 エネルギー 5社
2位 ベッティング 3社
3位 工業系会社 2社
4位 交通インフラ 1社
5位 投資会社 1社
6位 銀行 1社
7位 慈善団体 1社

エネルギーの会社が5社もメインスポンサーについている所にロシア経済における産業構造が見えてくるように思います。

2.デジタルメディアの活用状況

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デジタルメディアの活用状況について、レポート内で触れられています。最も多くのフォロワーを獲得しているのがZenitで全ツール合計で400万人。SNSツールの利用状況も出おり、主要SNSツール(Twitter、Instagram、YouTube、Facebook)はどのクラブも利用しています。Vkontakteはロシアを中心に普及しているSNSサービスのようです(wikipedia)。

ウェブ記事でこんなものがあります(参照FootballZoneWeb)。Jリーグ1位のセレッソ大阪で122万人がTwitter,Instagram,Facebookの合計フォロワー数(2019年時点)なので、デジタルツールの普及という所では正確な比較は難しいものの、ロシアの方が進んでいるとみることができるかもしれません。

ロシアではリーグ規定で各クラブに必ず「試合運営スペシャリスト」並びに「マーケティングスペシャリスト」を雇用することが義務づけられているとレポート内に記載されています(P9)。これにより、スタジアム・クラブサービス、ファンエンゲージメントの質の向上を各クラブに促してリーグとしての魅力を高めようとしている点は非常に面白いと思います。

3.スタジアム状況

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ロシアワールドカップの恩恵で多くのスタジアムが2010年以降に改修・建設されています。また3万人以上収容のスタジアムが10スタジアムもありますが、平均観客者数16,800人であることを考えると空席が目立つスタジアムになっている可能性があります。人工芝のピッチが2つあることも興味深いですが、これはロシアの寒冷な気候が影響しているものと思われます。スタジアムのオーナーシップについてみると、クラブ所有は4スタジアムあり、自治体以外所有が4スタジアムあるので約半分は自治体からの所有ではないスタジアムとなっています。

ロシアリーグ考察まとめ

いままで考察してきた3か国(ベルギー、ポルトガル、トルコ)のどの国よりもJリーグの状況に近しいリーグであると言えるようなリーグでした。

クラブ収益構造もスポンサー売上が全体の50%近くを占め、移籍金収益が主要収益ではないという所はヨーロッパ圏内のリーグとしては珍しいリーグのようにも感じましたが、経済規模や他の西欧諸国への対抗心から自国リーグを5大リーグの従属リーグにしないプライドと読み取ることもできるかもしれません。

インフラ面ではロシアワールドカップによるスタジアムの改修・建設が進み最新のスタジアムが大半になっているようですが、一方で収容人数に見合った集客はできていない印象です。これは2002年日韓ワールドカップ時に、日本で起きたスタジアム建設ラッシュと、その後のスタジアム状況と同じものを見ているようで、ロシアリーグとJリーグますます似ています。。。

現在、日本人選手の所属は橋本選手だけですが、外国人枠の関係で日本人選手の移籍が活性化するかはなかなか疑問です。

歴史的にソ連の崩壊後にできたリーグであるので、まだまだ日が浅いですが、プレミアの名を冠したこのリーグが今後どのように発展していくのか、日本との類似点が多くあるため、個人的には今回の考察を通じて興味がわきました。

今後も動向をチェックしていきたいと思います。

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