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【全5回】フードマーケット未来予想図ー第3回:発表!2021年弁当・惣菜最旬トレンド!

 全5回の連載でお送りしている、『フードマーケット未来予想図』(全4回予定のところ収まりきらず、増回しました…)。第3・4回は『発表!2021年弁当・スイーツ最旬トレンド!』ということで、今年注目のフードマーケット のトレンドや商品をご紹介していきます!トレンド、といっても単に「メディアで話題!」とか「売れてる!」ということではなく、前回記事「SDG'sでメシが食えるか!?食消費トレンドの現在地」を前提とした具体的事例を紹介しています。トレンドの背景にある消費価値観の変化を踏まえてみてみると、トレンドもより深く理解できるのではないかと思っています。

▼というわけで…前回記事もぜひご覧ください!

※なお、本記事では生鮮・惣菜・弁当・スイーツなどの食物販市場を中心として”フードマーケット”と呼称しています。

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・フードマーケット未来予想図ーその3ー発表!2021年弁当・惣菜最旬トレンド!

 2021年注目のフードマーケット トレンドを弁当・惣菜分野とスイーツ分野に分けてご紹介!今回は弁当・惣菜編!具体的な店舗やURLなども記載するので、気になったものはぜひ実際にサイトもチェックしてみてもらいたい!※各商品写真は公式のURLやインスタグラム 掲載のものor筆写撮影のものを記載しています。

■2021年弁当・惣菜注目トレンド

①ベンチマークとしての”ロケ弁” 

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 仕出し、ケータリング、といってもいい。いわゆる事前に注文を受けて販売するスタイルのお弁当。これが今、一般消費者やデパ地下でも注目され始めている。本来、「企業発注のみ」「10個以上から注文可能」などの条件で一般客が購入・認知する機会が少なかった”ロケ弁”だが、SNSを通じた情報拡散やコロナ禍での大量受注の機会減や中食需要の拡大による一般販売の開始など以前より馴染みの近いものになった。

 都内在住の方にぜひお勧めしたいのが『秘密厨房』さんだ。武蔵小山駅から徒歩10分以上のいわゆる”閑静な住宅街”に店舗はある。店舗といっても、レストランなどがあるわけではない。本当に小さな店舗で、営業時間も限られているが、事前にインスタグラムのDMで注文しておけば一個から季節感あふれる美味しいお弁当を食べることができる。ちなみに予約なしでの販売もしているため、地元のワーカーや主婦も「今日まだある?」という感じで顔を覗かせていた。数には限りがあり、だいたい昼頃には売り切れてしまう。実際私が来店した際にも際にも13:00にはすでに当日分は売り切れとなっていた。余談だが、最寄りには林試の森公園があり、晴れていれば緑の中でランチなんてのもオススメ。

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 こうした受注生産のスタイルは、在庫を重ねてお客様を待ち受けるデパ地下での売り方とは大きく異なる。従来、デパ地下では百貨店の外商として企業等への受注を一部店舗が行なっていた程度で、あくまでも一般顧客への受注生産はメインにはなりえなかった。しかし、受注生産では製造数=販売数のためロスリスクはゼロ、営業時間も限定的で人件費を抑えられるなど、フードマーケットの抱えるリスクを最大限軽減した運営が可能である。こうしたメリットや真新しいテナントを入居させる意図から、商業施設でも数量限定や予約販売をメインに行う店舗が数年前から出てきた。スープストック東京などの業態で知られる株式会社スマイルズが展開する、『刷毛じょうゆ海苔弁山登り』は(今でこそいつでも買えるが)GINZASIXの開業当初は売切御免スタイルでより話題となった。昨年開業したCIAL横浜には地元ケータリング店のTANOJIが出店。食品サンプルで作られた弁当だけが置かれた売場は、個人的にはかなりの衝撃であった。最終回で少しご紹介できればと思うが、先日開業した渋谷の東急フードショーでも、仕出し・ケータリング店舗が話題の新店として取り上げられている。売り方としての”ロケ弁”は今後商業施設でもますます広がっていくはずだ。

②最旬弁当の”バランス”

 で、実際”ロケ弁”の何がすごいの?美味しいの?という話だが、ポイントは”バランス”にある。最旬弁当の”バランス”を分析すると、今人々が食に求める価値観が見えてくる。商品開発だけでなく、自宅で料理を作る際にも参考になる。先ほどご紹介した秘密厨房のお弁当を事例に分析してみた。※ちなみに筆者は秘密厨房の関係者でもなんでもなく、単なる弁当惣菜オタクなので、あくまでも勝手な分析であることだけご留意いただければと思う。

・色のバランス

 ロケ弁に限らず弁当の色配置は非常に大事。ご飯に惣菜を直接のせる、のっけ弁でもそれは変わらない。基本は三原色とその配置。少し前(映えが流行った頃)までは生野菜の鮮やかな色合いが好まれたが、現在はナチュラルでやや燻んだモカトーンのカラーが”今っぽい”。

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・主菜、副菜の構成バランス
 お弁当には必ずメインとなる主菜(肉や魚料理など)と副菜(野菜のおかず)が組み合わされる。これは昔ながらの幕の内弁当でもコンビニ弁当でも変わらない。しかし、主:副の割合はそれぞれ大きく異なる。豪華にヴォリュームを感じさせたければ主菜を多くする。昨今のトレンドは惣菜の品数が多く、特に副菜を充実させるスタイルである。副菜は単品の素材で季節感を出すこともできるため弁当全体の変化や季節感もつけやすい。惣菜の種類が多いことで、自然と1食10品目以上の食材を食べることができ、栄養のバランスもよくなる。見た目こそ華やかだがよく見ると「人参のナムル」や「ほうれん草のおひたし」など、単品素材のメニューが並んでおり、週末に常備菜として用意しておけば家庭でも再現しやすい要素ではないだろうか?

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・調理方法のバランス
 調理方法にもぜひ注目したい。揚げ物ばかりでは不健康…かといってサラダボウルなどの生野菜ばかりでは味気がない。昨今のトレンドはバランス!メインは油を使わず栄養素を逃さない「茹でる」・「蒸す」。「揚げる」「生」はできるだけ少なくして、「焼く」「和える」などの調理方法で変化を出している。栄養価も高く、それでいて満足感も高い弁当が魅力的だ。

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 以上が最旬トレンド弁当の特徴である。ポイントはとにかく”バランス”。前回記事でも記載した通り、消費者にとってのヘルシーの意識は変革している。野菜を食べていれば良い、揚げ物や炭水化物を控えれば良い、といった単純な意識から、全体のバランスや食への満足感も重視した傾向に変わっていることを押さえておきたい。

③トレンドメニューは”中東”にあり

 前回記事でSNS上での価値が”映え”から”お役立ち情報”にシフトしていると書いたが、これによりトレンドメニューも変化している。コロナ禍でおうち時間が増えたことで、「自宅では作れない!」と思わせる個性的なメニューにトライする人も増えた。特にスパイスなどを使った海外メニューへの関心は非常に高い。中でも新たなトレンドは”中東”料理である。”スパイス”を多用したり、”発酵”食材を積極的に使う点、”ヴィーガン”に対応しやすい点が、昨今の健康意識にも合致している。特に豆類は扱いやすくトレンド感も出る食材のためぜひ取り入れたい。具体的なメニューを紹介する。

・サブジ

 そう、意外と簡単サブジ。要は野菜の炒め煮。よくインドネパール料理店などでカレーの付け合わせについてくるやつ。じゃがいものサブジがメジャーだが、実はなんでもあり。上のレシピにもあるが、ナスやオクラなど日本の夏野菜との相性も良いのでオススメ。

・フムス
 宗教的食習慣や気候から豆類は、中東料理のメイン食材と言っても過言ではない。中でも食べ応えのあるひよこ豆はサラダにしても、煮ても焼いてもどんな料理にも相性がいい。フムスはペースト状にしたもの。

・ファラフェル
 こちらも豆料理。要はコロッケ。いわゆるコロッケに慣れているとややボソボソとした印象もあるが、炒め物や煮物と合わせて食べると美味しい。上記のフムスと合わせるのもいい。(豆ばっかだけど…)

・タブレ
 中東から地中海に広まったタブレ。刻んだ野菜をマリネしたサラダですね。パセリの大量消費にも。クスクスを使うのはフランス風で、本当はブルゴルという食材を使うそうですが、日本では手に入らないのでクスクスや雑穀、もち麦なんかを入れるのもありだと思う。

 他にもトマト煮やキッシュなんかもアレンジの仕方次第で中東風になる。案外手軽なトレンドメニュー、レシピサイトやYOUTUBEなども参考にぜひ自宅でもトライしてみたい。

④肉を食べない時代へ

 SDG'sが注目を集める中で、増加する世界全人口の食料確保にも課題意識が持たれている。特に水不足は深刻で、水を求めて世界大戦が起こると予想する人々もいるくらいだ。中でも家畜はその成長に大量の穀物を必要とするため、かかる水の量は甚大だ。人間全体で1日に必要な水200億リットルに対し、全世界の家畜牛15億頭が必要とする水は1日1,700億リットルとだという。そこで注目されているのが”代用肉””プラントベースミート””昆虫食”といった家畜に頼らないタンパク源の確保だ。欧米諸国では、この代替肉市場がフードテックベンチャーとして非常に注目を集めている。他方、日本では納豆・豆腐・味噌など大豆を原料とした加工食品が古くから生活に根差している。加えて、欧米諸国に比べれば比較的食肉文化が少ない傾向にあり、代替肉市場や商品開発については遅れをとっている印象である。しかし、2018年には大塚食品がゼロミートシリーズ、2020年に入り日本ハムが大豆たんぱくを使用したナチュミートシリーズを販売開始するなどじわじわと国内メーカーでも商品開発が進んでいる。最近では一般的なスーパーでも代用肉コーナーができたり、イオングループのPB商品でも大豆から作ったハンバーグが登場するなど、少しづつだが一般家庭にも広まりつつある。

 2021年は日本において、こうした代替タンパク質元年とも言える年になっている。まだまだ黎明期であり、商品として不十分、価格面など市場性に欠けるものも多いが、そうした商品を吟味し楽しむことができる時代に一消費者として関われることは希少な経験だ。個人的にポイントとなる要素が3点あると考えており、これらを克服した商品が新たなスタンダードに進化すると考えている。

・美味しさ
 言わずもがなだが…。読んでいる方の中にも代替肉?美味しくないんじゃない?という方も多いだろう。かくゆう私自身も”豆腐ハンバーグとかまずいし、貧乏くさい…”と思っていたクチである。ただ、厳密にいえば豆腐ハンバーグは代替肉ではない。あくまでも肉の”代用品”という位置づけである。実は日本ハムのナチュミートでは卵・乳が原材料として使用されており、トップバリュの大豆で作ったハンバーグも牛脂が使用されより肉に近い味を再現している。日本ではベジタリアンや宗教上の理由などで動物性食を食べられない人も比較的少ない。もしかしたら、こうした一部に動物由来の原料を使用することで、味や食感を向上させた代替肉が国内では主流になる可能性も十分ありうる。試してみる際にはよく原材料表記を確認して食べてみてもらいたい。

・精肉としての調理体験と栄養価
 熱々の鉄板の上で油をとび散らせながら、ジュ〜と焼けるお肉は見ているだけでも幸福感を与えてくれる。肉の価値はその美味しさや栄養価だけではない。調理過程の香りや音もその大切な魅力の一つである。しかし、この点に関しては正直まだまだ道が遠いという印象である。そもそもハムやハンバーグ、ソーセージなどの状態で販売されており精肉としての販売が少ないというのも理由の一つ。自由に調理することが叶わないのはやはり日常的な食材としては寂しさも感じる。
 唯一、大豆ミートのミンチは、比較的身近に購入できるので興味がある方はぜひ試してもらいたい。実体験としては、ガパオライスのような味やスパイスの強いものや、ミートソースのような油や汁気の多い料理であれば、味付けや油の使い方でかなり肉に近い味を再現できると感じた。(我が家の旦那さんは説明するまで気がついていなかったようだ。)一方で、フライパンに乗せたときに漂う香りは、肉のそれとは全く異なり完全に”豆”である。正直、通常お肉で調理する際よりも多くの調味料を入れてしまったように思う。重ねて注意したいのは、大豆ミートの塩分だ。ローカロリー・コレステロールオフで健康的に思われる大豆ミートだが、塩分に関しては通常のお肉の4倍から8倍の塩分が含まれるという。今後調理工程も含めた味・香りの向上と、栄養価など機能面で向上された代替肉が登場することを楽しみにしたい。

・顧客接点
 代替肉はまだまだ市場流通が少なく、価格が高いのが現状だ。(逆に言えば、大量生産の肉が安すぎるとも言える…)先ほどの大豆ミートミンチも100g程度で400円近いと言われると、家庭では手が伸びにくのが本音だ。そこで注目されるのは、大手チェーンでの商品開発だ。

 国内でも、SDG'sの広まりも受けて、大手チェーンでのコラボ・商品開発は進んでいくだろう。こうしたメニューを通じて代替肉の関心層を増やしていくところから市場開拓も進んでいくのではないかと思う。

 最後に植物性油脂や大豆加工素材を手がける不二製油株式会社の清水社長のコメントを紹介したい。「プラントベースが代用品と言われる時代は終わって、本流になるのだと思います。」

 豆乳がもはや牛乳の代用ではないように、プラントベースミートもそれ自体で肉とは異なる価値を発揮していくのかもしれない。肉・野菜・魚といったカテゴリーに食材が加わると思うと、新たな食の世界が広がるのだと、少しワクワクするような気はしないだろうか?

※代替肉などについて参考
food diversity 『国内外代替肉メーカーの比較まとめ』プラントベースジャパン株式会社 代表取締役 山﨑寛斗,2021
書籍『フードテック革命』,2020


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・次週予告

 以上、2021年フードトレンド弁当・惣菜編でした。新しい動きや技術が出てきている中で、オンタイムそれを享受できるのはとても楽しいですね。来週はスイーツ編をお送りします。

■予告:2021年スイーツトレンド
①ヒントは動画配信?お菓子のサブスク
②店舗を持たない個人店の隆盛
③焼き菓子新時代
④コンセプトは”LESS is more”


『フードマーケット未来予想図』今後の投稿予定 ※金曜17:00頃更新予定

 7/30 第1回:”化石化”したデパ地下型商売 
 8/6  第2回:SDG'sでメシが食えるか!?食消費トレンドの現在地
 8/14 第3回:発表!2021年弁当・惣菜最旬トレンド!
 8/20 第4回:発表!2021年スイーツ最旬トレンド!
 8/27 最終回:東急フードショー渋谷の大勝負!フードマーケット の明日はどっちだ!? 
 ※当初全4回の予定でしたが、急遽全5回に変更しております。

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 e.r.mutt828@gmail.com (湯浅亜木)



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