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漫画の描き方のコツ備忘録vol.14【ネーム・プロット編】【話作り】⑥初稿やプロットをネームに起こす《ミニネームから完成まで》

こんにちは、漫画描きの晏藝あきです。
今回も、私が先人の知恵や自分の実務から自学したり、整えてきた漫画の描き方のコツを、備忘録として書き留めていきたいと思います。

さて、【ネーム・プロット編】【話作り】の6回目は引き続き、ネームの完成編ネームの組み立てを行う方法です。

前回は、①漫画の絵コンテを切る方法についてご説明いたしました。
今回は②ミニネームを切る方法~最終工程までです。
漫画描きクラスタの皆様、本年最後の記事、よろしくお付き合いくださいませ。


②ミニネームを切る

早速、漫画のミニネーム制作についてです。
(前回のように絵コンテにコマを描き出さず、初稿ネームから直接こちらに行く手順もあります。)

こちらはA4用紙などをにして、縦4段×横8列に小さく区切り、そこに縮小版のネームを描いていくという方法です。

小さいのでセリフを全て入れ込むのは無理ですが、本番ネーム前に用紙1枚で全ページの構成が見渡せて確認が出来ます。

制作イメージとしては、こんな感じです。

赤字がページ数です。
(途中でちょっとミスってますね…恥)
最上段を右から左に進み、見開きでレイアウトを描いていきます。どん詰まりで右下に。

BやA系の用紙を等分に区切れば、完成原稿のページの比率の縮小版にも近くなり便利です。

これには

〈何度も本番ネームを描き直す手間が省ける〉
〈時短になる〉
〈制限ページ内にお話を纏めやすくなる〉
〈全体の物語の構成や、コマの構成が確認できる〉

などのメリットがあります。
前々回にお話をした、構成の客観視にも非常に役に立ちます。

上は私がデジタル制作したテンプレート素材を使用した画像ですが、A4用紙に折り目を付けるだけでも十分、代用可能です。
(※一応今回もクリスタアセッツの、自作テンプレ素材の紹介ページのリンクも付けておきますので、今回初見の方はよろしければ使い方などご参考ください。)



③出来が8割ほどのネームに起こす

もしも初稿やプロットの構成や主幹、描きたいテーマやシーンやあらすじ、ページの割り振りなどまで完全に固まっていれば、
そのまま本番に近いネームの形に起こしていきます。 

また、ミニネームの後に一度こちらの工程を通る場合もありますし、ここを飛ばして④に行く事もあります。

この工程の後にもう一度、10割完成ネームにしますので、ここでは手早く丁寧にかつ、ざっくりと全体の形を決定していきます。

それでは、出来8割ネームのやり方とコツです。

◇〈出来8割ネームのやり方とコツ〉

A4用紙またはB4用紙を、横半分で折って見開きにして、そこにネームを描きます。
用紙一枚で見開き二枚分のネームを配置します。
または、B5サイズのノートを見開き状に使用するなど、ミニネームより大きめに、完成する漫画の雰囲気に近付けて描いていきます。

※個人的には、罫線無しのルーズリーフ用紙や、A4サイズのコピー用紙などの利用がおすすめです。

ばらばらにしやすい用紙であれば、コピーもしやすいですし、綴じられたノートなどは裏表に描いてしまうと本原稿の制作の時に見にくかったり、描き直しや構成の変更も難しいためです。
なるべく読者さんが読む完成サイズに近い用紙を使うと、セリフサイズなども想像しやすくなります。

ただし、雑誌はB5サイズで、コミックは小さくなるなどの場合、雑誌のサイズに合わせて詰めすぎてしまうと、書籍化した際やデジタルスマホサイズにした場合に、非常に読みにくくなりますので注意が必要です。

配置としてのイメージは下の画像のような感じです。
これは実際の作品に使用した、10割完成ネーム…というかほぼ下描きなので、ネームの完成度の参考にはなりませんが、A4コピー用紙などを真ん中で区切ってこういった配置で描きます。
見開き2ページ分ですね。

下のようにきちんと基本枠のガイド線などが入っていれば、
書き終わった後にネームを本原稿のサイズで拡大コピーなどして、基本枠のガイドを見当にし、そのまま下絵ラフとして、トレースし使えますので時短にもなり便利です。

こちらのコツは、
〈ネームの仕上がりを8割(ストーリー自体は確定し、コマの割り方など絵的な面はまだ暫定)ほどで止める事〉です。

ただし、下のような項目はこの段階でしっかりと確定しておきます。

・ストーリーや全体の構成は確定。
・セリフもおおむね確定させる。
・完成ページと同じページ数に。
・そのページに入れる予定のコマは、大体のサイズ感を確定して仮配置。
・コマ内の絵の構図などもおおむね確定して配置。

商業などでネームを他人に見せる時には、この8割段階ではまだ見せない方が無難かなと個人的には思います。
それで「ネームを通して」もらえて、「相手も8割出来だと理解」してくれていて、「本原稿で面白く変わっていても大丈夫」な時は見せて大丈夫ですが、
いくら作成中と事前に話しても、それで完成だと思う編集さんや読み手さんの方が多い印象です。

経験上、悩みすぎてうっかりここで他人に意見を求めると、作品が、がちゃがちゃになる可能性もあります。

見せるのであれば、アドバイスが完全に信頼できるという方に聞くか、意見は聞かせていただくけれど、参考までに自分でとどめられるよ。という鉄メンタルの方に限る!!!という事を、強くオススメいたします。


最終的な工程

さて、ここからネーム最後の工程④に入ります。④は分岐します。

商業などで描く場合に提出を求められるのは主に、
B、十割完成したネームです。
いち漫画描きとして本音を言えば、
A、本原稿の下描き上でネームを完成する方が
比較的〈のった〉漫画になりやすいので、良いなぁと思うのですが、こちらは主に個人で描く場合に可能な方法です。

それでは説明してまいります。
やり方とコツは共通ですので、まとめて最後に書きます。

④-A(本原稿の下描き上でネームを完成させる)

出来8割~9割ほどでネーム作業を終了し、本番原稿のラフを切りながら、ネームに手を加えつつ完成させていくやり方です。
本原稿の下描き上で、ネームを確定します。

  個人的にはBより迫力があったり、没入感がある漫画になりやすいという印象があります。
また、Bの工程を飛ばすので、場合によっては時短になったりもします。
ただし!悩み過ぎると逆にラフに時間がかかりますので注意です。

④-B(完成する漫画と全く同じネームを描く)

〈動かせない完成ネームを他人に見せなければならない場合のみ〉

ほぼ完成原稿と同じ出来に固まったネームに起こす 。
こちらはネームの用紙上で、完成漫画と100%同じものを、少しラフな絵や説明で書いていく方法です。

セリフや、構図、コマ割り、吹き出しの位置、キャラクターの表情など完全に確定したものを作ります。
商業の場合、この10割ネームを見せないといけない事も多いです。

人に見せる場合には、誰でも読める字で書き、人物が棒人間になる場合は表情や何をしているか説明を入れたり、背景が線だけなどの時も軽く説明を入れごまかし…いえ、何が描いてあるか伝わるように書きます。

これらを行わないと、見た人に意図が伝わらず、完成形と違う意味に取られたり、その説明をしたりという無駄な手間が増え、時間が取られる事がありますのでご注意を。

◇〈完成形ネーム④AB共通〉やり方とコツ

AB共通の完成形ネームの作り方のコツです。仕上がりの善し悪しを決める、下描き前の大事な工程となります。

もう物語は固まっている状態です。
ここで、制作する《その話》が一番、映えるようにネームに起こしていきます。

重要なシーン・表情は目立たせ、その部分を目立たせるために、重要度の低いシーンは読み手の目が止まらないようにさらっと描きます。

読み手が飽きないようにするには、少しでも簡単にでも〈感情に変化の生まれるシーン〉を意図的に、要所要所に配置します。

せっかく考えたお話の大事な部分が、しっかり読み手に伝わるように。
どうしたら伝わりやすいシーンや展開、構図になるのか考えながら、想像しながらベストなものを探って描きます。

大事なのは
〈そのシーンで、絵として、台詞で、雰囲気で、
伝えるべき一番のポイントが何なのか〉

それは、どの構図やコマ割りでセリフで表情で一番伝わるのか、全てのコマを〈物語の中で意味のあるコマ〉にするように努める事です。

そのシーンその時点で読み手さんが、
読みたいもの、見たい角度、聞きたいセリフ、
見たいキャラクターの表情や所作、
見たいシーン。


それらを〈予測〉して、
コマや人物を配置
していきます。

「読み手の読みたいものなんて分からない」、という事は、有り得ません。
確かに、自分以外の読み手の読みたいものは、分からないかもしれませんが、
自分が読者として今描いている漫画を読んだ時、「同じ展開、同じようなセリフでも、もっとこうなら良いなあ、格好良いなあ、ときめくなあ」という部分は必ずあります。

それらを想像しながら描きます。
(勿論、こういうやり方が流行っている・受け入れられやすい。というものに合わせるやり方、商業などではそれを求められる場合はあります。
ただ、それを行うにしてもどのみち、自分がそのやり方の魅力的な部分を学習し理解し、ある程度「好き」になる必要があります。ともかく、)

ここでの、組み立てにおいて非常に重要なコツは、

今、描いている漫画を
〈読み手の気分で読みながら描く〉

を意識する事です。
これは前回ご説明した客観視の延長でもあります。

最後の最後にこのブラッシュアップを行いながらネームを描くようにする事で、確実に完成形のクオリティが上がります。


最後に

さて、ネーム・プロット編の基礎は以上となります。

漫画の制作は奥深く、またまだ沢山のコツ、人によって個別に補完していくと良いようなもの、応用、物語や向ける客層ごとの詳細なやり方は、数え切れないほどあると思います。

正直、ここまででかなりの文字数ではありますが、漫画制作の神髄の一割もご説明出来ていないのでは…?と感じます。

しかし、汎用性が高く、ネーム制作の基礎となる作業としては、私が漫画を描く上で非常に大事と思うやり方を含め纏めて、一通り順を追ってご紹介させていただきましので、漫画制作に悩んだ時、参考にしていただけたら幸いです。

また、この記事で本年は出し納めとさせていただきます。お付き合いいただき、誠にありがとうございました!

来年は年後半での、自身のコミティアへの初参加を目指して制作編集作業を頑張っていきたいと思います。
そのため、描き方記事については今年より頻度を下げつつも、引き続き、漫画の描き方のコツ備忘録【ネーム・プロット編】のマガジンにて、制作に役に立つ知識や、そのやり方の補足記事などをアップしていきたいと思いますので、よろしければぜひ来年以降もぜひお付き合いくださいませ!

皆様のき漫画制作を、心より応援しております!
あなたの作品は、この世に一つの個性、とっても素敵ですよー!!

それでは、良いお年をお過ごしくださいませ!

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