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【詩】風キリコ

墓を素手で磨く

七月の太陽を含んだ御影石

てっぺんから水を少しずつかける

はねた水滴は
速乾性生地のズボンを濡らす

墓石は人肌のぬくもり

撫でて
ぬめりを落とす

話しかける

謝りながら、照れながら

左右対称の花を整える

一際眩しい赤と黄色の髪飾り

いつしか祖母の横顔をみている

夏の午前の墓参り

こどもの頃は
あんなに怖かった場所なのに

風はみせてくれる

囲んだ木々の

緑の匂いや音や

隙間から覗く青い空や

漏れる光の万華鏡

なんて静かで
落ち着く場所だろう


いつかわたしも
ここに入りたい

だが意思を残さねば
それは叶わない

ちっとも怖くなくなったら

現実のつまらないことばかりに怯えている

旧盆の墓参り

からからと
板キリコが鳴っている




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