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【ホラー】『みえる』
とあるAさんの体験談
高速道路に女の人が立っていたり
職場の倉庫の同じ場所で作業着のおじさんがずっと立っていて遠回しにこんな人に心当たりありますか?と、特徴を上司に尋ねたら一致する人がいたがその男性は既に事故で亡くなっていたり…
Aさんは昔からいわゆる「みえる」タイプだった。
子供の頃はみえたらすぐに周囲の人に話したが相手にされず、気味悪がられた。
成長するにつれ口に出さなくなったのは、そういうことを言う人は相手にしてほしい寂しい人なのよと耳にしたことが大きい。
かまってほしくて嘘を言ってると思われたくなかったAさんはたとえ「みえて」も話題にあげなかった。
口に出さなくなっただけで「みえて」しまうことはなくならなかった。
多少子供の頃よりかは「みえる」回数は心なしか減っていたらしいが…
「中古だけど買っちゃった」
Aさんの友人が愛車の自慢をしていた。
その車の運転席と助手席の間に青年がぼーっと「みえる」
どうやら後部席に座っているようだった。
友人は一人でやって来たから誰も乗ってはいなかった。
Aさんは友人に「この車いくらで買った?」と尋ねた。
友人は「先輩が販売の仕事してるから○○万円でいいって」
その値段は誰もが驚くほど安かった。
「みえて」いる青年と車の値段の安さにAさんは察しがついたが言わなかった。
どうやら友人は珍しく肩が凝るようになったとその時話していたらしい。
「みえて」なくてもこんなこともあったらしい。
旅行先のホテルで入り口からもう既に「イヤだ」と感じていたAさん。
フロントで手続きをして鍵をもらい一番奥の部屋へ向かった。
きっと宿泊客がいないのだろう。
角部屋へ案内されるくらいなのだから。
部屋へ続く廊下の蛍光灯は消えていたり点いていても点滅していたり、妙に空気は冷たくて重かったらしい。
部屋へ入る前からキャンセルしようか迷いだしていたAさんだったが部屋へ入った瞬間「もうイヤだ!こんなところに一秒でも居たくない!」と咄嗟に直感が働いたそうだ。
キャンセルしても返金出来ないとフロントで言われたがそんなことはどうだっていいと思えるほどとにかく「イヤだ」が勝った。
数年後そのホテルのオーナーは蒸発。行方不明。ホテルも潰れたとその時の旅行仲間が教えてくれたそうだ。
「みえる」より「かんじる」ことが多くなったAさん。
Aさんにだけなんとなく「わかる」ことがあるようで、聞いても教えてくれない。
よほど昔言われた
【かまってほしいだけの嘘つき】
が、ひっかかっているのだろう。
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