見出し画像

【コラム】通販番組は上質なドラマ

ネットショッピングはいまや生活の一部となった。
「ポチる」という言葉も通じて当然の市民権を得ている。
便利な世の中になったものである。
だが、インターネットも普及していなかった時代から存在していたテレビショッピング。
ネットショッピングの襲来で通販番組は衰退し風前の灯火と化すかと思いきや、むしろ燃え盛っている。

生き残りをかけたテレビショッピング戦国時代の幕開け。
あれやこれや趣向を凝らしたどり着いた各番組の特色はたくましいセールス魂をみせた。

そして今回私が注目したいのは商品紹介の背景に流れる再現ドラマである。

とある小型装着型集音器が紹介されている5分ほどのインフォマーシャルにて。
その補聴器
ではなくあくまで集音器
の特徴はベージュ色で超小型で耳にかけても目立ちにくく軽量で負担も少なく電池ではなく充電式。
しかも一年間の電気代は約三円!らしい。
音量の段階も調節できるので便利である。
(一応言っておきますが私はその会社の回し者でもなんでもありません)

と、まぁ紹介されている商品の概要はこんな感じである。
気になったのは説明の背景に流れるドラマ仕立ての映像なのである。

登場人物は四人。
シニアの夫婦と思われる男女。
あとそのシニア夫婦の子供世代の男女である。

気になったのはその関係性である。
若者の女性はどうやら娘役と思われる。
シニアの男性とソファで横に並び座っている娘と思われる女性はテレビの音量を上げすぎた父親からリモコンをイラっとしながら奪い音量を下げるのだ。
これはお嫁さんにしては少し遠慮がなさすぎる。(もう!お義父さんったら!のニュアンスより何段階か上な感じ)
それにソファに座る距離も近い。
よって、そこでは娘なのだと認識する。

問題は娘と仲睦まじく談笑し一緒にランニングで汗を流す娘と同年代の男性である。
仲睦まじくというよりアイコンタクトすらイチャイチャデレデレを通り越した信頼感がにじみ出ているように感じた。
この演出は恋人、もしくは夫だろうと推測するのが妥当である。

眠れないのだろうな…娘と思われる女性は夜中、テレビの音量を小さくして深夜に真っ暗なリビングでテレビを見ようとするのだ。
寝ている家族を起こさぬように音量を下げて。
でも集音器があるから大丈夫。
若くても使えちゃうんですよ、の宣伝にもなる。
なので、耳が遠くなったからという理由以外でもご購入いただけるんですよーって、宣伝。なるほど、眼鏡(老眼鏡)と拡大鏡の違いみたいなものか。抵抗感は薄らぐ。

話を戻すと深夜にリビングでこっそりテレビを見る娘はもちろんこの家に住んでいるわけだ。
二階が寝室か?
夫はそこで眠っているのか?
こっそりおりてきたのか?
う~ん、妄想は広がる…
婿入りした夫なのだろうか。
夫ではなく息子だとしたらこの兄妹の関係性は怪しすぎるのだ。

この背景に流れるドラマには音声がない。
セリフも声が聞こえないので読唇術を使うしかない。
口パクの再現ドラマの広がるオリジナルのシナリオで商品に集中できない。

あぁ、夫婦なの?仲のよすぎる兄妹なの?
そうこうしていると大御所の俳優さんが愛用者として現れる。

この通販番組はとどめにはいったのだ。

なんといっても看板がしっかりしているとお客は安心する。
大御所(本当に超有名俳優、しかもお二方)が太鼓判を押している。
そして値段発表。お電話はこちらまで。
である。

ネットショップとはまた別の次元に通販番組は存在している。
どんなに便利な世の中になろうとも通販番組はなくならない。
朝、昼、深夜とちょうど空いた時間を狙って毎日何かしらの商品が紹介されている。
そこに、ドラマがあること。
どんな関係性でどんな生活の営みが繰り広げられているのか。
それを楽しむ視聴者は少なくはないはずだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?