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pixivノベル大賞2022AutumnイラストD部門の入賞4作を読みました。

とりあえずのイラストD部門!を読み比べ。

 pixivノベル大賞2022Autumnは、四つのイラストのいずれかをテーマに三千字以上の物語をつくるという内容で、各イラスト毎に1〜4作の入賞を出す、とのことでした。
 500作強の応募中で入賞が15作選ばれています。今回はその中で私も応募しましたイラストD部門について入賞作を読み、感想をメモしています。
 イラストD部門は、tono氏が制作されました妖精と蜜蜂とローダンセマムというお花が描かれた、のどかな空気が感じられるイラストで、まさに絵本にぴったりだというのが第一印象です。

「箱庭のマーガレット」華周夏氏著

 イラストを踏襲したふわっとした空気なのに、ヒリヒリとしている大人のためのおとぎ話だった。読ませる会話。鉤括弧の中が長いのにスルスル読めて染み込んでくる。花言葉のタイミングがめちゃくちゃ効いて、泣いた。あえてローダンセマムではない花に重きを置いているように思えるし、余計に不意を突かれた。

「ローダンセマムの花言葉。」雪月海桜氏著

 冬の凍てつく空気は蜜蜂の沈黙も相まって静謐だ。春の訪れの暖かさへとグラデーションのように変わっていき、妖精の胸中も雪解けみたいに解れていく。タイトルの回収が作中では明確には無いけれど、「永遠の愛」「気丈に」どちらもしっくりと腑に落ちる。

「そうして、お姫さまとみつばちは」森村カエ氏著

 おとぎ話が現実の世界に少しずつ重なって舞い降りて来る。冒頭付近の居酒屋の喧騒が、映画を観ているみたいで心地よい。
 鉢屋くんという優柔不断な最低男が出てくるんだが、そう思っていたのにさあ、優しさに昇華されてるのずるいぞ。君のあざとさは、合格だ!

「フェアリーファイト」夏原秋著

 可憐な容姿とは裏腹な大暴れあまのじゃく妖精と、サラリーマン気質の生真面目風な蜜蜂。相性最悪な二匹が引き起こす決闘はやがて不穏な方向へ? しかし小さき者達の世界の小ささを、物静かなローダンセマムが思い出させてくれるのがミソ、であって欲しい。

(盛大な自語りはこちら。「……お前掌編の文字数に匹敵する長さの自作語りやったうえでまだ自作に感想書くんだ?」と自分にツッコミを入れつつ。読み比べをしてみたかったわけで自作も入れておかないとせっかく入賞したのに卑下とか遠慮は要らないでしょうし! 前向き!)

「読み比べ」として、気付いたところ。

同じイラストをお題にしながらこれだけバラエティに富んでいる。
要素を探してみた。

舞台設定

妖精の世界 1作品
人間の世界 1作品
妖精の世界と人間の世界の交錯 2作品

視点(人称ではない)

妖精視点 2作品
人間視点 1作品
天の声 1作品

文字数(概数)

4000字 1作品
5600字 1作品
10000字 2作品

その他

 イラスト内で明確に描かれている、”物言わぬローダンセマム”に関して、どう扱っているのかが気になりました。
「花言葉」「植物の特性」あたりが活用されているように思いました。

同じイラストから異なる物語が生まれる理由

 入賞作が決まったタイミングで、私はこのコンテストは一種の二次創作ではないか? と思いました。そして絵と文字両方のコンテンツが入り乱れるpixivだからこそ、得意な人が多いのかも……などと感じました。(pixivユーザーのボリュームゾーンは間違いなく二次創作畑の方々だと思うのです。)
 とはいえ、一枚絵なのでキャラクターの味付けは自由。そこが原作ありきの二次創作との最大の違いであり、難しさであり、楽しさでもありました。

 いずれにせよ楽しい企画ですね。また参加出来たらよいなと思っています。

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