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名刺を作った

名刺を作った。

新潟から岩手に引っ越すことになり、新潟でこれまでやってきた事が途絶えてしまうのが寂しいなと思った。
全てを持っていくことはできないけれど、でも繋げていくというか、終わらせないみたいなことが必要だった。それが私を大きく支えていた。
新潟で過ごした10年間で、私はたくさんの経験をして、たくさんの人と出会った。そしてそんな仲間たちといろいろ作った。
ZINE、Podcast、イベント、団体、もちろん私一人の力じゃなくて、むしろ周りにいる人たちが頑張ってくれて作られたもの。
それらに、「私もいたよ!」を残したいし、これから出会う岩手の人たちに伝えたい。

伝え方にはいろいろある。出会って、会話の中から伝えて行ったり、SNSを自己紹介のホームにしたり、作品が自己紹介代わりになったり。
私は何にしようかと考えた時、名刺が欲しいと思った。たくさんの人に配るような、ばら撒くことを目的としない。出会った人の中で「この人とはもっと仲良くなりたいな」と思ったり、「この人ならあの話ができそうだな」と思った人に渡すための名刺。こっそり、でも確かに、繋がっていくような名刺。

私にはデザインの技術がなく、自分で作るのは早々に諦めて、これはプロに!ちゃんとプロにお願いしようと思った。

そこで依頼したのは、はくちょう計画の中島遼さん。

はくちょう計画
https://hakuchouplan.com

長岡にデザイン事務所 はくちょう計画を構え、柏崎ではまちづくり法人「特定非営利活動法人aisa」でまちづくりコーディネーターとしても活動している。
柏崎で私がお世話になって、とても仲良くしてもらった人の1人。私と一緒にいろんなものを作ってくれた1人。みんな大好き中島さん。優しい人。

中島さんになら私も気軽に相談できるし、私のあーでもないこーでもないを聞いてもらえると思ったし、何かを依頼するという経験が浅い私でもお願いできるなと思った。何より、中島さんのことを信頼している。

中島さんに連絡をしたら快く引き受けてくれた。ワクワクした。ただ、同時にどんな名刺にしよう????と悩み始める。
名刺に載せたい情報、形、色、全体の雰囲気。

打ち合わせは全部で3回行った。
1回目は私が名刺を作りたい理由や、名刺で何がしたいのか話をした。私がイメージしやすようにと、中島さんがたくさん名刺やショップカードを持ってきてくれた。デザインのイメージでは、お菓子のパッケージを持ってきてくれて、色やイラストの雰囲気の話をした。
その後、中島さんからデザイン案が2つ届いた。
これを見た時私は外出していて、友達と会う前に車の中で見たのだけど、とても素敵で心臓がバクバクした。こりゃ大変だ、大変素敵なものができる・・・と車の中で1人ニヤニヤが止まらない。その後会った友達に「私、今、名刺を作っているんだ・・・ニヤニヤ」と話をした。
2回目の打ち合わせでは、デザイン案2つから1つに決めた。せっかく作るのだから、私では思いつかないものを。仕事用の名刺は別であるから、もっと個人を伝える名刺として個性的なものを。持っている時も、渡す時もワクワクするものを。そんなことを考えながら決めた。中島さんには名刺を渡す時のシミレーションで「あのー、私こんな名刺も持っていまして」「へー!すごいですね」という寸劇にも付き合ってもらった。作って終わりじゃない、渡す時のことまで一緒に考えてくれた。
3回目の打ち合わせでは、仮の印刷をして持ってきてくれた。名刺の形は、よく見る名刺と少し違う。どうやって折ると良い感じに収まるか。中島さんは8つ(あれ9つだっけ)の案を持ってきてくれた。全て実際にやってみて、現物を見せてくれる。「これは折ってから5日くらい経ってて・・・」とか言う。実験だった。

3回の打ち合わせを経て、名刺が完成した。
柏崎で仲良くしてくれた人たちが20人くらい集まる飲み会の2日くらい前に届いたので、その場でみんなに渡した。
気に入ったものを、自信のあるものを人に渡すのは、気持ちがいいことだと思った。
名刺を手渡す瞬間、確かに私たちは手を繋ぎ、相手を受け入れる。相手を知りたいと思い、相手の一部を受け取る。
その行為は、これから小さくなっていくであろう名刺文化を無くしてはいけない理由の1つだ。
データ化され、捨てられていく名刺。端折られていく名刺交換の時間。果たして本当に無駄だろうか。名乗りながら、小さな紙を渡す行為は、なんだか愛おしくないだろうか。
そもそも紙が好きなタチなので、名刺に価値を感じるのだろう。好きな店のショップカードは宝物になるし、可愛いレターセットは何歳になってもときめくし、ポストカードは立派なプレゼントだし、ブックカバーはなんだか捨てられない。紙が部屋に溜まっていく。それが楽しい人間なのだ。

名刺ができた。私のこれまでが詰まった名刺だ。
これから私はこの名刺と共に、いろんな人と出会っていく。
出会った人に、名刺を渡す。私の一部を渡す。私の人生を渡す。
それはまるで、それぞれ持つ人生という本に、私が栞として挟まれるようだ。
あなたの人生に、私の一部を差し込む。栞を差し込む。

これは「私の栞」というプロジェクト名をいただいて、作られた。
2枚分の名刺サイズの紙を、蛇腹に折って完成する。
本に挟むにも、ポッケに入れるにもちょうど良いサイズ。
名刺だろうか?と思うような見た目だけど、名刺です。紛れもなく、名刺。

改めて、中島さんありがとうございました。
とても良いものを作ってもらいました。打ち合わせも良い時間でした。
何かを作ることは、生み出すことは大変なことだと少しはわかっているつもりです。
その私たちが作り出したものを、一つ一つ私たちを支えるものとして守り、さらにそれらに触れた人のこともどうか支えられたらと思います。
作り続けていきましょうね。きっとそれは暗闇を進むような、途方もない穴を掘り続けるような、広大な土地を耕し続けるような行為ですが。
でも私たちは、時々隣を見ながら、みんなで声を掛け合いながら、あなたがつくるものを信じるよと伝え合いながら、やっていけると思うのです。
また、お互い見てきたものを携えて、美味しいコーヒーを飲めれば嬉しいです。

名刺。
これは、過去であり、未来であり、お守りであり、地図であり、光であり、栞だ。

名刺の栞/私の栞プロジェクト
https://hakuchouplan.com/works/shiori



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