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彼女のことは、まだ書けない。

Panasonicさんとnoteで開催された「 #はたらくってなんだろう 」投稿コンテストで、私の書いたnoteを【入賞】に選んでいただきました。


[結果発表の記事]

[入賞した記事]


この記事には、昨年6月にライターのキャリアにピリオドを打ってから、3ヶ月の無職期間を経て、ようやく就業の決まった会社を1ヶ月で辞める、などしたエピソードが書かれています。

どうしてライターを辞めたのかとか、なぜ1ヶ月しか仕事を続けられなかったのかとか、結果どうすることにしたのかとか、コロナ禍で働くことと向き合い続けた私の苦しみを、めちゃめちゃ率直に書きました。

私の文章はたいてい重苦しいものが多いのですが、受賞作も例にもれず、ズッシリと重たい出来栄えになっています。

普通、そんな文章がコンテストで選ばれるはずがありません。やっぱり、コンテストの受賞作は、温かくて未来への希望を感じさせるものでなければ。だって此処は、「やさしさ」や「あかるさ」や「希望」を大切にしている「noteの街」なのですから。

だから、note株式会社の方から「玄川さんの作品が【入賞】に選ばれました」と連絡がきた時は、本当にびっくりしました。いいの? こんなにnoteにふさわしくないのに? 信じられない気持ちと同時にわき上がってきたのは、読んでくださった皆さんへの感謝の念でした。


公開直後から、この記事はたくさんの方に読んでいただいた実感があります。Twitterで多くの方にシェアしていただいたおかげで、普段の私の力では届けられない方々にまで読んでもらうことができました。コメントもたくさんいただきました。ありがたいことに、このnoteを引用して記事を書いてくださった方もおられました。

こういった読者の方々のリアクションがあったからこそ、note編集部の「今日の注目記事」にピックアップされ、さらに多くの方に届き、それが積み重なった結果、「今週のおすすめnote」に掲載される運びになったのだと思います。

現時点でスキの数は1000を超えています。さすがに、これだけの反応があれば、どんなに重苦しくても選ばざるを得ないのかな、なんて、疑い深い私は勘繰ってしまいます。だって、あまりにもnoteにふさわしくない文章なんだもの!笑

だからね、この受賞は私だけの力ではないんだと、ここに書かせてください。読んでくださった皆様が受賞まで押し上げてくれたのです。スキを押してくれた方、コメントをくれた方、シェアしてくれた方、引用して感想をくれた方、皆様のおかげです。

「私の受賞」じゃなくて「みんなの受賞」なので、一緒にこの受賞を喜んでもらえたら、私としても本望です。「俺がこのnoteを受賞させてやったぜ!」くらいに思っていてください。

本当に本当に、ありがとうございました。


受賞したnoteに、ひとつだけ書かなかったことがあります。少しだけ、その話をさせてください。私の大切な友達である「ほーちゃん」のことです。


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ほーちゃんの訃報を聞いたのは、昨年の秋でした。受賞したnoteの時系列と合わせると、ライターを辞めて派遣会社に登録したものの、就業先の決まる気配がなく、気持ちが塞いでいた時分です。


ほーちゃんとは、高校で知り合いました。ほーちゃんは私の部活仲間の友達で、一年生の時は顔見知り程度だったけど、二年生で同じクラスになってからは正真正銘の「友達」になりました。所謂「いつメン」というやつです。

ほーちゃんは、穏やかで柔らかくて優しくて、勉強は少し苦手だったけど、べらぼうに歌の上手い、高校生にしては大人びた外見をした美しい人でした。でも、今思い返すと儚げでミステリアスなところもあって、どこか危うげな女の子でもあったような気がします。

ほーちゃんとはいつも一緒で、いろいろな話をしました。互いの恋愛や夢のことまで共有していました。知りすぎていたせいか、喧嘩をして全く口のきかなかった時期もありました。喧嘩した友達とは大体疎遠になるのですが、ほーちゃんとは疎遠にならなかった。理由はわからないけど、私にとって、ほーちゃんは大切な人だったのだと思います。

ほーちゃんには、私が小説を書いていることを打ち明けていました。私の運営する携帯小説サイトに時折遊びに来てくれて、小説を読んで感想をくれることもありました。ほーちゃんは、今読み返してみるとツッコミどころ満載な恋愛小説を読んで「感動した」と言ってくれて、さらに「あっちゃんの生み出す言葉や物語はとっても素敵だよ」と何度も何度も褒めてくれました。そんなことを言ってくれる、ほーちゃんのほうが何億何千倍も素敵だよ。

大学に進学した私ですが、学年トップの成績を収めていたにも関わらず第一志望に落っこちてしまい、当時の担任に「がっかりした」と言われたことがあります。卒業式でほーちゃんにそのことを話したら、「ぶん殴らないと気が済まない」とめちゃめちゃ怒ってくれました。止めました。ほーちゃんは、とても優しい人なのです。


高校を卒業してからも、ほーちゃんとは連絡を取り合っていましたが――と、言っても数年に一度あるかないか、なので、取り合っていたとは言えないかもしれません。ほーちゃんは、このnoteもたまに読みに来てくれていたようでした。だから、ほーちゃんは私の近況を知っているけれど、私はほーちゃんのことをあまり知っていなかったのだと思います。

報せによると、連絡を取っていなかったわずか数年の間に、彼女はを患い、それがもう、どうにもならなくなっていたそうでした。あまりにも突然のことで、あれから数ヶ月経った今でも信じられません。皮肉なもので、ほーちゃんが生きていた頃よりも、今のほうがほーちゃんのことばかり考えています。


ほーちゃんの訃報から数日後、ようやく就業先が決まり、3ヶ月ぶりに社会復帰を果たしました。でも、――仕事が忙しく文章を書く時間がなくなり、私の心身が疲弊していったことは、受賞したnoteに書いた通りです。

「書けないなら死んでもいいな」と思ったその時、私の脳裏にはほーちゃんの姿がよぎりました。

ああ、なんてことを考えているんだろう。あんなに生きたかったほーちゃんが生きられなかった人生を、私は生きてるのに。よく「死にたい」なんてそんなこと言えるよな。口が裂けても絶対に言っちゃいけないことだ。情けない。こんな姿、ほーちゃんに見せられないよ。

仕事の帰り道、人通りのまばらになった商店街を抜け、細い小道に入って一人になると、ぼろぼろと涙がこぼれ落ちてきました。これから先、絶対に自分からは「死」を選ばない。生きるための選択をする。そうしなきゃ、ほーちゃんに合わせる顔がない。

「退職させてください」と派遣会社の担当さんにメールを送ったのは、その翌朝のことでした。


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おかげさまで、受賞したnoteにも書いた「新しい就業先」で、今も働いています。私が創作活動をしていることもみんな知っているし、両立できるように業務を振ってくれていて、ありがたい環境で仕事をさせてもらっていると心から感じています。

おまけに会社の人もとても優しくて、全然たいした仕事をしていないのに「いつもありがとう」と声をかけてくださいます。こんなに思いやりのある人と一緒に働いたことはありません。

だから、会社にも貢献したいし、文章でも活躍することで、もっと会社の人を喜ばせたいとも思っています。入賞をいただいたあのnoteを書けたのも、そもそも「書く時間」があったからです。入賞できたのは、読んでくださった皆様のおけげですが、会社の皆さんのおかげでもあります。

私の書くことへの思いを、尊重してくださって本当にありがとうございました。



ほーちゃんとの思い出は、いつかちゃんとnoteに書いておきたいと思っています。楽しくて、心温まる思い出がたくさんあったはずなのに、ほーちゃんのことを考えると、まだ泣いてしまう。今回濁し濁しで書いてしまったので、あまり心に入ってこなかった方も多いと思うのですが、詳細に書こうとすればするほど泣いてしまって、やっぱりまだ書けませんでした。こんなに中途半端なnoteを公開するのが初めてなので、ちょっと動揺しています。受賞したnoteにも彼女のことを書かなかったのは、書けなかったからです。


私が、「死」を選ばず、退職することに決められたのは、そして今、こうしてほそぼそと文章を書く道に進めたのは、他の誰でもない、ほーちゃんのおかげです。

だから、この賞は、ほーちゃんに捧げたいと思っています。賞をとれたのは皆さんのおかげですが、どうかほーちゃんに捧げさせてください。

ほーちゃんに捧げるならもうちょっといい賞がよかったんだけど笑、それでも喜んでくれるんじゃないかと思っています。私の文章を読んで泣いてくれちゃうくらい、怒って先生を殴りに行こうとするくらい、優しい人だから。


ほーちゃんが好きだといってくれた「私の文章」を、彼女の優しいまなざしを感じながら、これからも強い意志をもって書き続けていこうと思います。これからも、その過程を見守っていただけたら幸いです。

『たとえ「普通の」生き方ができなかったとしても。』を読んでくださったすべての皆様、そしていつも私を応援してくださる全ての皆様にお礼を申し上げ、受賞のご報告とさせていただきます。
心から、ありがとうございました。

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