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連載エッセイ「弱い自分」第10回「参っちゃった先輩放送作家」

放送作家事務所に所属していた時にいろんな先輩と出会った。
優しい人もいれば怖い人もいた。そんな中で自分が1番参っちゃった先輩がいた。
その人の自分だけ呼んでいたあだ名はサイボーグだ。
(今回は愚痴が多いので覚悟して読んでほしい)

なんでサイボーグと呼んでいたかというと血も涙もない人間だったから。
サイボーグと出会ったのは自分が所属して2・3ヶ月ぐらいの時。今も放送している某番組に配属になった。基本的にはリサーチで不定期にやってきた。しかしこのリサーチがキツかった。そうなったのは全てサイボーグのせいだ。

リサーチ内容は他の番組とさほど変わらない。
じゃあ何がキツかったというと差し替えの連続だ。数時間かけて見つけたネタをサイボーグはものの数分で差し替え指示する。それも何度も何度も。
しかも差し替えが終わってもすぐにまた別のリサーチが来る。そこでもまた差し替えの連続。
通常1企画のリサーチは大体2週間程度で終わるが、この番組は1企画で1ヶ月ぐらいかかった。
しかも似たようなリサーチ内容のものばかりで相当メンタルがやられる。

とにかくサイボーグはネタを出せ出せと言い続ける人だった。
差し替えが嫌でバックれた時には電話やラインで出せ出せの声を来たこともあった。
さらにオフで出かけていた際に突然電話が来て、今からテレビ局に来いと言われて、「厳しいです」と答えるとまるで取り調べのように詰めかけてきて、結局行く羽目になったことも。

こんなことがあった。
深夜にリサーチの仕事をしていた時に当時入院していた祖父の容態が悪くなり、病院に行かなければならない事態に。
当然リサーチの仕事なんてできるわけなく、そのことをサイボーグに電話で話した。
普通の人間なら代わりの人を探しますと言ってくれるはずだが、サイボーグはこんな返事をした。
「そうですか。では代わりの人を探してください」
この人、本当に人間か?
結局自分が車の中で代わりにリサーチをやってくれる人を電話で探したのであった。

本当に血も涙もない人間で、誰もこの人について行こうとは思わないだろう。
そんな中、この間久しぶりに事務所のHPを見たのだが、サイボーグの紹介欄を見るとなんと奥さんとお子さんとの家族写真だった。
これを見た自分は「へぇ、サイボーグって結婚できるんだ。世の中にはもの好きな人がいるもんだ」と不思議に思いながら見たのであった。

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